セミの詩

文字数 304文字

まるでシャボン玉のように
鳴くたびに弾ける羽先の光
流れに身を任せて空に向かう
喜びを噛みしめた力強い歓声

それは森の先端から
深い海の底まで
花火のように
打ち上がっていく

お前たちの住んでいる故郷は
今も光が届かない
誰も見たことがない
あたたかい土に囲まれて 

知らない間に
夏の花が咲いて
さようならの言葉に
音階を割り当てていく
      
      黄昏の音
      別れの音
      悲しい音
      思い出の音

遠くから見える
公園の小さな光の中に
昼間見た小さな影が
まだ隠れているのかもしれない

帰ろう
来年の夏が来る前に
手の届きそうな
巨大な入道雲がぼくたちをさらう前に

帰ろう
来年の夏も
網を片手に
またお前たちを迎えに行くから
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