夢の外へ:和匡と瑞希

文字数 619文字

 目を覚ますと、ベージュのシーツが目に入る。瑞希(みずき)は寝返りを打って周囲を確認した。
 隣で寝ていた和匡(かずまさ)はすでに起床しているのか、姿が見えない。
 ホワイトリネン生地のシャツとグレー染めガーゼのロングパンツを着て、ベッドから降りると寝室からリビングへ移動する。
 和匡はネイビーのカウチソファで(くつろ)ぎながら、コーヒーを飲んでいた。瑞希はソファへ歩を運びながら、声をかける。
「おはようございます、朝食いただいてもいいですか?」
 和匡はソファから腰をあげると、キッチンに向かう。
「おはよう、ハムエッグとトースト用意してあるよ。紅茶も淹れておくから、先に食べててね」
 和匡から盛り付けられた皿を受け取ると、ダイニングチェアに腰をかけて、「いただきます」と手を揃えた。
 キツネ色に焼かれたトーストを一口齧(かじ)る。フォークとナイフに持ち替えて、ハムエッグを少しずつ切り分ける。黄身が割れてトロリと(こぼ)れた。
「おまたせ、紅茶が入ったよ」
 テーブルに紅茶の入ったマグカップが置かれる。茶葉の(かぐわ)しい香りが辺りを(ただよ)った。
「ありがとうございます、いただきますね」
 カップを傾けて一口飲むと苦味が広がる。目覚ましにはちょうど良い濃さだった。
「ご飯食べたら、着替えて家まで送るね」
 和匡はそう言って、キッチンへ戻ると食器を洗う。
 瑞希はそれを眺めながら、トーストを再び齧った。(終)
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み