事件の発端、、、その前に。

エピソード文字数 1,187文字

昨日の夜。
俺は夕方には帰宅しようと所属している鎌倉署を出ようとしていた。

明日は休みなため、休日前日の定時上がりは単純に嬉しい。
深夜零時過ぎに帰宅となると、翌日は起きたら昼過ぎで、日々溜まった家事やら何やらをしたら、休みが終わってしまうこともしょっちゅうだからな。

残業する同僚に後ろめたさを感じつつ、にこやかに署を出ようとしていた。

階段を降り、2階と1階の間の踊り場で、同僚二人とすれ違う。
「おう、俊輔。今日はあがりか?」
そのうちの一人である、『上野』に声をかけられる。
ちなみに、基本的には署内では下の名前で呼ばれることが多い。

もちろん、顔見知りでない場合は、原則として名前と所属だ。
俺の場合は『伊藤巡査長』となるのだが。

「そうなんだよ。お先でーす!」
足を止めることなく、ちょっとおどけつつも、なるべく簡素に答えると、そのまま通り過ぎようとした。
何やらニヤつく顔が嫌な予感をさせたからだ。

案の定、再び声をかけられる。
「残念だなぁ。これから超絶美少女の新人が初日の挨拶に来るらしいぜ。」
「しかも、急遽、歓迎会兼、合コン。」
横にいたもう一人の同僚である『大塚』もニヤニヤしながら言う。
スポーツマンタイプのさわやかな上野に対し、大塚はやや粘着質な肥満体系だ。
合コン好きだが、成功した話は聞いたことがない。

なんだよ、それ。
俺、聞いてねぇし。

と、いうか、、、。
だから今日は残業なく定時で帰る俺に何も言わないのか!
普段なら
「明日は休みだろ!今日くらい残業してけ」
とか、
「どうせ休みの日なんかやることねぇんだろ? 明日休みでも出て来いよ」
とか言われるのに。

そういうことかよ。
「謎は全て解けた!」

確かに、翌日休みのやつが合コンに参加するということの意味するところは大きい。
せっかく仲良くなっても、明日は仕事だったりすると、早めに上がらなきゃいけないし、何よりアルコールが入れられない。
お笑い担当である俺は、1番モテるとはいわないが、かなり上位になれるのだ。
自分でいうのもなんだが、要注意人物だ。
なんせ、ジャンル的に競合がいないからだ。

俺は高校を卒業し、お笑い芸人養成所を出た。
そのまま芸能事務所に所属して、芸人になったが、イロイロあって警察組織に身をおいている。
かなり異色なキャリアだが、その芸のおかげで、対人コミュニケーション能力だけは高いし、人の機微に敏感だと思う。
ようは、合コンは最大限威力を発揮できる場所なのだ。

「く、はかったな。」
事態認識した俺は嘲笑いながら、
「坊やだからさ」
とすかさず同僚の大塚からのツッコミがはいる。

俺は部屋を出るときににこやかに
「お疲れ様~」
と送り出してくれた同僚を恨めしく思いはじめた。

これが、『内緒で合コンされ、はぶられた事件』だ。
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