第3話(5)

エピソード文字数 2,840文字

「さあ昼ご飯ぜよ! 高知の名物を食べるぜよっ!」

 あのあと記念館をたっぷり楽しみ、その後先述した博物館や脱藩の際に通った道、そしてやっぱり拝んで欲しかったので竜王岬を訪れた俺らは、午後3時過ぎにとある料理店にお邪魔。少し遅めの昼食を摂ろうとしております。

「ここは高知産のモノだけを使う店で、俺のおススメなんだ。期待できますよ」
「にゅむむ、そーなんだっ。たのしみだよーっ」

 にゅむん。ゆーせー君も、ここでお食事をするのは数年ぶり。とっても楽しみなんだにゅむ。

「従兄くん、一押しのお店。期待せずにはいられないわ」
「そうやねっ。料理先生が待ち遠しいぜよ!」
「皆様、そろそろ料理さんがいらっしゃる頃でございます。あと少しで――お、噂をすればなんとやらだね」

 制服を纏ったお姉さん2人によって、注文した料理が運ばれてきた。

「お待たせいたしました。カツオのタタキ定食でございます」

 俺の隣にいるシズナ、対面にいるレミアとフュルの前に、お膳に載った豪華なセットが置かれる。
 御三方のは、カツオさんを藁で丁寧に焼いたタタキを中心としたメニュー。カツオのタタキはご存知、高知の大名物でございます。

「お待たせいたしました。特製親子丼でございます」

 タタキの中は、生のため――俺は生魚を食えないため、どんぶりモノ。しかーしこれの鶏肉と卵は『土佐ジロー』という高知の地鶏で、バッチリ地産地消だ(肉は脂肪分が少なく旨味が凝縮されており、卵はとても濃厚でプリンやアイスにしても絶品。肉も卵もかなりレベルが高いので、こちらも是非味わってみてくださいませ)。

「にゅむ…………そーいえば、ゆーせー君ごめんね。あたしたちだけ、高いの頼んじゃってる」
「俺がそれを勧めたんだから、いいんだよ。食べれる人には、そいつを食べて欲しいからね」

 高知県といえば、やっぱりカツオの藁焼きタタキ。父さんは『高知で食べるタタキは違う』と言っていたから、本場で味わって頂きたいのである。

「師匠、感謝感謝ぜよ! 心して食いますきっ」
「ありがとうね、従兄くん。いただきます」

 三人は、キュウリ、タマネギ、シソ、ネギが載ったタタキに特製ゆずポン酢をかけ、パクリ。さーて、お味はどうかな?

「「「!」」」

 三人は、目を見開く。
 ははっ。かなり、美味いみたいですな。

「カツオさんがとっても新鮮で、なんか違うよーっ! ゆーせー君家の近くのスーパーさんのも新鮮だけど、なにか違ってるっ」
「それに、このポン酢……。ゆずの香りが強いのに、食材を殺してないわ……!」
「シャキシャキの野菜先生っ、活きのいい魚先生っ、味わい豊かなタレ先生の三重奏! 高知はすさまじいぜよ!!

 レミア達は瞳を輝かせ、ヒョイパクヒョイパク。少しも箸を休ませようとはせず、あっという間にタタキ&柚子入りプチちらし寿司&茄子の味噌汁&トマトのシャーベットを完食してしまった。
 流石は、食べ物が美味しい県・高知。本日も恐ろしい強さをお持ちだ。

「…………俺も、ご馳走様っと。みんなのお口に合ってよかったです」
「ゆーせー君、素敵なお食事ありがとーっ! これも旅の思い出になったよー!」
「大袈裟ではなく、魚とゆずの認識が変わったわ。圧倒されました」
「ワシ、ますます高知が好きになったきね! 坂本先生桂浜先生、タタキ先生などなど万歳ぜよ!」

 三人は形は違えど一喜し、幸せそうな表情を作る。
 しかーし。まだ、食事部門の幸せタイムは終わらないのです。

「皆さん、夕食もお楽しみに。絶対に度肝を抜かれるんで、覚悟しといてくださいね?」
「にゅむむんっ。覚悟しておくよーっ」
「ワシも、右に同じ! 晩御飯先生を覚悟しちょくぜよっ!」
「それは私もなのだけれど、従兄くん。夜は、にっくき従妹――ケホン。従妹さんのお宅で、食べるのよね?」
「……そうだよ」

 今のシズナは、素。怒らせるためではなく素で敵意を剥き出しにしたので、『要注意だな』と思いながら返事をした。

「従兄くんの伯父様は、農家をやっているのよね? なにか、特殊な野菜でも作っているの?」
「アレは…………普通だけど、特殊だね。まっ、その時になればわかりますよ」

 俺はそう返してお茶を飲み、店内にある時計をチラ見する。なおホントにどうでもいい情報なのですが、母さんはこの行為を『チラ時計(どけい)』と呼びます。

「空港からタクシーに乗り、そのあと汽車に乗れば…………ぼちぼち、最寄りの駅に着く頃だな。フュル、店を出たらワープをヨロです」
「心得たぜよ。到着地点は、三角の屋根がある……。えーと……」
「『大杉駅(おおすぎえき)』だよ」

 長岡郡(ながおかぐん)大豊町(おおとよちょう)にある、杉材で作った三角屋根が特徴の駅。それが大杉駅です。

「そうっ、大杉駅先生! ここでえいがよね?」
「そう。そこで間違いありません」

 父さんの実家も大豊町という山間部にあって、伯父さんファミリーはそこで農家をやっている。
 ちなみに大豊は自然が豊かで空気も美味しいし、樹齢3000年以上の杉など見どころアリまくり。都会の暮らしに飽きたという方が結構いらっしゃり大満足されているので、田舎を満喫したいという方は是非どうぞです。

「……と、いう事は。私は、駅の周辺を『遠見』すればいいのね」

 故郷をアピールしているとシズナも確認をして、「ところで従兄くん」と話しかけてきた。んんん? なんだにゅむ?

「魔法を使えば、目的地に直接行けるわよ? 家の付近にワープしないのは、なんでなの?」
「ゆーせー君のおじーちゃんさんたちのお家は、駅さんからけっこー距離があるんだよねー? どーしてそこにするのー?」
「駅で、父さんの幼馴染のタクシーに乗るからだよ。その人はいつも俺に会うのを楽しみにしてくれてるんで、利用しないわけにはいかないんだ」

 優星は、また太ったがやないかえ(太るは成長するの意)? 今度乗せる時はどうなっちゅうがやろうにゃぁ。
 なんて言われたら、キャンセルはできませんよ。

「ま、こういう事情があるんで大杉駅でお願いします。一息ついたらゴーしましょう」
「御意ぜよ! ワシはこれから更に、土佐を楽しむぜよーっ!」
「にゅむむっ。おじーちゃんさんたちのお家、どんなのかなー?」
「私は、従妹さんに興味があるわね。うふふふふふふ」

 シズナは窓の外を眺め、薄ら笑いを浮かべる。狂気を孕んだ顔で、とても危険な薄笑いを浮かべる。

「…………こいつ、あぶない。魔法使い魔王は、家に置いてきたらよかったかもなぁ…………」

 俺は、人知れず独語。ニセ従妹同行を悔やみつつ、サービスで出された碁石茶(ごいしちゃ)(大豊町で生産される、幻の発酵茶です。身体にとても良く、県内外で大人気なんですよ)を飲み干したのだった。
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登場人物紹介

色紙優星 16歳の少年


高知県生まれの主人公。

リリウという神様の聞き間違えで魔王使いになってしまい、おまけに『究極奥義』と呼ばれる力を何個も持ってしまった高校生。優しく他人想いなのだが、彼はとあるセンスが全くないのであった……。

黒真レミア 16歳の少女


魔王、でありながら伝説の勇者の能力を持つ。冷徹でクールな容姿と声音を持つ美少女だが、性格はほわほわでお子ちゃま。『にゅむ』という独特な言葉を多用し、時にはにゅむのみで会話を行おうとする。例「にゅむーむ。にゅむ。にゅむりん」。

なお愛用の武器である聖剣は魔王の天敵であるため、使うと痺れる。

金堂フュル 16歳の少女


伝説の勇者、でありながら伝説の魔法使いの能力を持つ。元気一杯の猫っぽい女の子で、高知県の英雄・坂本竜馬の大ファン。そのせいで『ぜよ』と中途半端に覚えた土佐弁を使い、主人公のことは『師匠』、仲間のことは名前のあとに『先生』とつけて呼ぶ(例えばレミアの場合はレミア先生)。

なかなかにおバカな女の子。

虹橋シズナ 17歳の少女


伝説の魔法使い、でありながら魔王の能力を持つ。大和撫子然とした容姿を持つ美少女であり、主人公の義理の従妹。

重度の怒られ好き。

とにかく変で厄介で面倒くさい人。

茶操ユニ 18歳の少女


伝説のドールマスター、でありながら伝説のプリーストの能力を持つ。キグルミ族という一族の人間で、閉園したテーマパークのキャラクター・二足歩行ウサギの着ぐるみを着ている。口癖は、ミョン。

実はお笑いにうるさく、親戚は某有名人。

プリースト神 年齢不明


茶操ユニが持つプリーストの杖に宿る、プリーストの神様。

実は……。

橙式エイリ 14歳の少女


伝説のモンスターテイマー、でありながら伝説の召喚士の能力を持つ。所謂スケバン然とした容姿と声を持つが、グループ最年少の中学生でみんなの妹的存在。でもレミアやフュルよりずっとまともで、ヤツらの方が妹的存在な気がする。

野菜が大好きで、とても詳しい。

タンザ・クー 年齢不明


橙式エイリの召喚獣で、俳句世界(はいくわーるど)の王女。

タンザが姓で、クーが名。

二万年後に、地球の傍に誕生する世界からやって来た。


色紙育月 16歳の少女


高知県大豊町在住の、優星の従妹。中学卒業と同時に本格的にピーマンの生産を始め、今ではテレビの取材を受けるほどになっている。


薄幸の美少女然とした容姿と、従兄想いの優しい性格が自慢の従妹です! by色紙優星

謎の声 年齢不明


優星にだけ聞こえる、不思議な声。

なぜか正体を明かそうとしない。

リリウ 神様


願いを聞き間違えて、優星を魔王使いにしてしまった神様。

神様の世界で流行しているゲームに夢中で、神様のお仕事はほとんどしない。

とってもダメな、神様(?)な神様。

麗平活美 16歳の少女


ストロベリーブロンドのドリルヘアーが特徴の、優星のクラスメイト。

お嬢様然とした容姿で気品があるように見えるが、非常に活発。実は……。

空霧雲海 16歳の少年


頼れる兄貴系の容姿と性格を持つ優星の同級生であり、悪友であり、重度のオタク。

作中に登場する名曲(迷曲)を作った人。

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