第44話 アマゾネス・ウーマンズ・パートナー社の船出 :2023年5月

文字数 1,260文字

(アマゾネス・ウーマンズ・パートナー社の立ち上げに、南山洋子は苦労する)

2023年5月。東京。アマゾネス・ウーマンズ・パートナー社オフィス。

洋子は、アマゾネス・ウーマンズ・パートナー社への出向を受け入れた。とはいえ、組織設計から、人材募集の全てを任せられた。つまり、スタートには洋子以外は誰もいない。企業の全設計を任せられたことになる。G社の提案は、『2週間以内に、アマゾネス・ウーマンズ・パートナー社の企画書をつくること、企画書ができれば、G社で説明会を行って、アマゾネス・ウーマンズ・パートナー社に出向する人を募集してもよい』と言うものだった。
もちろん、G社も腹案は持っている。しかし、ベンチャーは、雇われ社長では、務まらない。ベンチャーは、常に、大きなリスクテイクをしないといけない。それには、白紙委任がベストなのである。

洋子は、考えた。
「どうすればいいのか。どうすれば、船を作ることが出来るか」

アマゾネス・ウーマンズ・パートナー社のオフィスはがらんとしていて、机ひとつ、パソコンがひとつだけある。
「ともかく、大船原に乗り出すには船を作らなければ、始まらない。どんな船を作ればいいのか、皆目見当がつかない。G社のリクエストは、言い換えれば、『2週間で、船の設計図を作って持ってこい。まともな、設計図であれば、スポンサーになるし、船乗りの募集に協力してやっても良い。しかし、皆が納得出来る設計図でなければ、説明会を行っても人は集まらないし、スポンサーもつかない。その時は、面倒はみない』というものだ」
南山は、途方に暮れた。ともかく、考え抜くしかないのだ。
G社のこの要求は、厳しいが、決して不合理ではない。普通の人は、G社にいながら、アマゾネス・ウーマンズ・パートナー社の船の設計図を書けば良いと思うかもしれない。しかし、それでは、良い設計図は書けない。
阿里巴巴(アリババ)グループの馬雲(ジャック・マー)会長は、早稲田大学の講演で、『僕のように勉強ができないクズは、どこの会社にも入れない。だから自分で起業するしかなかった』といっている。
つまり、人間の脳は、追い込まれないとエンジンがかからない。これは、認知科学の認める真実なのだ。
「笹川CEOは、『アマゾネス・ウーマンズ・パートナー社は、いまのところ、実体のない訳のわからない会社だ。喜んで働く人は誰もいないかも知れない。人材募集すらままならないかもしれない。人が、集まらなければ、そこで、座礁してしまう』と言っていたが、このままでは、船を作ること事すらできない。出航以前だ。
ミッションは、はっきりしている。ジェンダー・ギャップをなくすことだ。方法は、わからない。これは、インド航路と同じだ。航路はまだ、誰にもわからない。航路を気にしたら進めない。出来ることは仲間を募って、船を作って、少しでも先に進むことだ。恐らく、それ以外のことを考えたら、恐ろしくなって、一歩も先に進めないだろう。ともかく、全てを船の設計図に集中しなければだめだ」洋子はこう、考え直した。


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