19 一枚の絵葉書
文字数 8,578文字
「う、動いてないだろ」彼女の吐息を首筋に感じたグリューが、たまらず全身に鳥肌を立てます。
「ほら、じっとしてったら」青年の耳の後ろの髪をつまみ上げ、少女はちょきちょきと
「くすぐったいんだよ……」
「ひゅ~ひゅ~」
二人の前で大きな鏡を一緒になって支えているミシスとノエリィが、口々に
「やめろ!」青年が少女たちを睨みつけます。
昨晩、特務小隊の船は新型レジュイサンスの砲撃とクラリッサの顕術で敵を退けた直後、全速力でその場を離れました。そして今後の身の振り方などは一切考慮に入れず、ただ確実に船を隠すことだけを目的として、ビスマス地方南西部の山岳の奥地へと至りました。
その一帯には、生きた葉をつける樹木の一本も、色のついた花の一輪も、バケツ一杯ぶんの水源さえも、どこにもまったく見あたりません。地形そのものが、まるで神さまが大きな手で雑に引っ掻きまわしたかのように荒れ放題で、船体を傾けずに着陸できる地点が見つかっただけでも奇跡と言えました。
補給隊と協力してこの場所を見つけたのでしたが、彼らはちょうど夜が明けるのと同時に、西の果ての王都へと帰還していきました。
見送りのために甲板へ出た特務小隊一行のなかに、今まさに朝焼けの空へ消えていく船を指揮していたクラリッサの姿もありました。
「気をつけて帰るのよ~」少女は遠ざかる機影に向けて手を振りました。
「帰るのよ~。じゃないだろ!」その隣でグリューが声を荒げます。「なんでおまえが残るんだよ! 立場的に、おまえは王都にいなきゃだめだろうが!」
「あら、そうでもないわよ」クラリッサは品良くほほえみます。「だってあのレーヴェンイェルム将軍に、国王親衛隊やリヴォン兄さんたちだっているんだし。それにあたしは、もともとここに残るつもりだったんだもの」
「はぁ!? 将軍はそんなこと一言も……」
「うふふ。うっかりしてたのかもね」
「ああ、うっかりね。ってそんなわけあるか!」
「そ・れ・に!」思わせぶりに身を翻して、少女は特務小隊の面々を見渡しました。「正直なところ、研究者と民間人だけの急ごしらえ部隊には、この任務って少々荷が重すぎるのでなくって?」
「むっ。言ってくれるじゃないか、クラリッサ」マノンがわざとらしく唇を尖らせます。
「あのな。こう見えておれも師匠も、ちゃんと軍学の基礎くらい……」
彼の胸に手を触れて、クラリッサはにこりとします。
「それも、わかってる。なにもあなたたちが頼りないって言うんじゃないわ。ただ、やっぱり餅は餅屋っていうじゃない。それに、あたしがいたら百人力でしょ」
「まだ信じられないです」ミシスが畏敬の念を込めてクラリッサを見つめます。「まさか、飛んでくる岩を受けとめるなんて……」
「心臓が止まるかと思いました」ノエリィが両手で胸を押さえます。「ううん、一秒か二秒くらい、ほんとに止まってたかも」
「実際、あたしもけっこうひやっとしたわ」クラリッサは軽やかに手を振ります。「あの石ころがもっと大きくて、もっと速かったら、あたしの顕術でも間に合わなかったかもね」
一歩前へ進み出たマノンが、太陽を背にしてまっすぐ立ちました。
「改めて礼を言うよ、クラリッサ。補給や整備だけでなく、あれほどの窮地を救ってくれて」
その言葉に隊の全員が同調します。
「そして、きみが僕らの一員になってくれるのは、願ってもない話だ。どうか、これからよろしく頼むよ」マノンが手を差し出します。
「ええ。任せてちょうだいな」
クラリッサはマノンの顔を見あげ、その手をしっかりと握ります。そしてそれとおなじ挨拶を、他の隊員たちとも丁寧に交わしていきます。
腰の引けているグリューの手を無理やりつかんで握りしめてから、クラリッサはふいに寂しげに地平線を一瞥して、小さくため息をつきました。
「しっかし残念ねぇ。できたら大砲つきの船に乗り換えたかったんだけど」
「あはは……」
ミシスとノエリィが顔を見あわせて苦笑したその時、しばらく前からグリューの頭の上でうつ伏せになって眠っていたレスコーリアが、顔いっぱいに朝陽を浴びて目を覚ましました。ごしごしと目もとをこすり、大きなあくびを一つすると、彼女は眼下に立つクラリッサの姿にぎょっと目をむきました。
「なんであんたがいるのよ、じゃじゃ馬娘!」
「あたしも今日からみんなの仲間になったのよ」クラリッサが不敵な笑みを浮かべます。「仲良くやっていこうじゃないの。じゃじゃ馬小娘」
「だれが小娘よ!」
「まあまあ……」マノンが割って入ります。「喧嘩はよしなさい。お腹が減るよ」
「もう減ってるわ」クラリッサとレスコーリアが声を揃えました。
「だってさ、助手くん」くるりと振り返って、マノンが呼びかけます。「きみの出番だよ」
「はいはい」青年は肩をすくめました。「そんじゃ、とりあえず朝飯にしますか」
そうして始まった食事の席で、青年の伸び放題の髪がパンやスープにかかる様子を顔をしかめて眺めていたクラリッサが、食事が終わったら散髪をすると彼に宣告したのでした。
一目散に逃げだしたグリューでしたが、クラリッサの味方についたミシスとノエリィに挟み撃ちにされ、しまいには三人がかりで羽交い絞めにされる格好になって、甲板上にしつらえた椅子に無理やり押し込められてしまいました。
「まだ終わんないのかよ」首から下をレインコートで包まれてじっとしている青年が、じれったそうにぼやきます。
「もう少しだから辛抱して」まるで子どもにするように、クラリッサが彼の頭をぽんぽんと叩きます。
「お似合いだね、二人は」ノエリィがにやりと笑いました。
すかさず青年がそちらを睨みますが、少女はさっと鏡の裏に顔を引っ込めます。逆の
「覚えてろよ、二人とも……」
そこで操舵室の扉が開き、肩にレスコーリアを載せたマノンがコーヒーカップを片手に出てきました。今日の彼女はゆったりとした黒いワンピースを身に着け、色の濃い遮光眼鏡をかけています。青空美容室に到着すると、姿勢よく立ち止まって吐息をつきます。
「相変わらず緊張感ないね、我が特務小隊の諸君は。まったく、大した切り替えの早さだよ」
「あら、それってむしろ美質でなくって?」そばに置いたテーブルの上で別の鋏に持ち替えながら、クラリッサが言います。
「まあね。そこ、もうちょっとばっさり切ったら?」
「師匠は余計なこと言わんでいいですから」
鋏の動きと髪の毛先に視点を固定したまま、クラリッサがたずねます。
「で、これからどうしましょう。隊長殿」
「このままずっとこんなところにいたら、僕らの身が持たないのはたしかだね」荒涼とした景色を一望し、マノンは首をすくめます。「それに、じっとしてるだけじゃ、なに一つ物事を前進させることもできやしない」
「つまり、なにか考えがあると?」
「……うむ」
マノンは深く息をつくと、中身を飲み干してカップをテーブルに置きました。そして脚を肩幅に開き、静かに口を開きます。
「それを話す前に、ここでいったん状況を整理しておこう。まず第一に、僕ら特務小隊に課せられた最重要の使命は、もちろん〈リディア〉の秘匿と守護だ。もしこの未曾有の力を宿したカセドラの存在が外部に露見したり、他の誰かの手に渡るようなことにでもなったら、世界の均衡はますます崩れることになる。王都に万全の受入態勢が確立されるその日まで、なにがなんでもあの巨兵を守り抜かなくちゃならない」
「あの」ノエリィが鏡の横に顔を出します。「リディアみたいなカセドラが存在することを世間に知られちゃいけないっていうのは、わかります。でもカセドラって、最初に乗った人以外には動かせなくなるんですよね。だったら、ミシス以外の誰にもリディアを動かすことができないんだったら、もしも誰かの手に渡るようなことになったとしても、すぐに兵器として利用されることにはならないんじゃ……」
「もっともな指摘だな」グリューがうなずきます。「だがあのカセドラの場合、躯体の構造材の
「なるほど……」
(なぜそんなものを造ったの)ミシスは一人胸中でつぶやきました。(世界がおかしくなってしまうほどの力を、誰からも望まれていない存在を、どうしてわざわざこの世に生み出してしまったの。そんなものを王国軍が造ろうと計画さえしなければ、わたしたち、今頃は……)
そこまで考えが及んだ瞬間、ミシスは人知れず強く首を振りました。
マノンさんも、グリューも、あくまで上の命令に従って行動する、
そう、これほど優秀な頭脳とまっすぐな正義感を持つ二人だって、いろんな矛盾や葛藤を抱えて生きていくことを宿命づけられた、ごく当たり前の人の子なんだ……。
「話を戻すと」マノンが腕組みをして続けます。「僕はね、こんな状況にあっても、どうにか世界が平和を取り戻すための力添えをしていきたいって考えてる」
「それが結局、あたしたちが逃げ隠れしないですむようになる最善の道だからね」マノンの肩の上でレスコーリアがうなずきます。
「でも、いったいどうやって……」ミシスが眉根を寄せます。
「単純な理屈で言えば、世界をこんなふうにした張本人たちと和解するか、あるいは根こそぎ排除するか」言いながらマノンは指を二つ鳴らします。
「現実的にはどっちも厳しいって、わかってて言ってるのよね」鋏を動かす手は止めずに、クラリッサが問いただします。
「きっとゼーバルト将軍は、なにがあっても王国に歩み寄りはしないだろうね」マノンはうなずきます。「それに、彼らを完全に打ち負かすっていうのも、これまたとっても難しい」
「たとえ王国軍が束になってかかっても、ですか?」ノエリィがたずねます。
「新生コランダム軍の拠点である〈星灰宮〉には、かなり大規模な軍事基地が構築されているわ」クラリッサが説明します。「さらにそれに加えて、どうやらコランダム領内の各基地や軍事工場の内部にも、相当な数の兵と軍備が
「まったく、大した執念だよ」マノンはかぶりを振ります。「それだけの武力を打破するとなったら、きっと騎士団総出の大規模な戦闘になる。まずまちがいなく、コランダムに賛同しているはずの
「それでもまさか落城なんてことにはならないと思うけど、どうしたって深刻な被害が出るのは確実ね」クラリッサが言います。
「ならどうすればいいんですか」ノエリィがしょんぼりと肩を落とします。「まるで、笑い方を知らないどうしで睨めっこしてるみたい」
「ふふふ。ほんとね」クラリッサがうんうんとうなずきます。
「こういう時、おまえならどう見るんだよ」前を向いたままグリューが背後に向かってたずねます。
「今は動かないかな」さらりと少女はこたえます。
「だろうね」マノンが肩をすくめます。「現状は、向こうもこちらも
「どうせそのうちなにかしらの変化が出てくるわ」青年の肩に積もった髪を払いながら、クラリッサが言います。「というか、きっとそれはもう始まってる。為政者たちの思惑が及ばない場所から、新しい波がどんどん広がりだしてる」
「……それってもしかして」ノエリィがちらりとミシスの横顔を見やります。
「〈緑のフーガ〉……」ミシスもノエリィと目を合わせて、ぽつりとその名を口にします。「じゃあやっぱり、このあいだレーヴェンイェルム将軍もおっしゃってたように、コランダム軍は自分たちを信奉するあの人たちと手を結ぶことになるんでしょうか」
「うん。きっとね」クラリッサは簡潔にうなずきます。
「しかしあの連中の実際の規模って、まだちゃんと把握できてないんだよな。それに暴動や襲撃みたいなあからさまな違法行為は一度もやっちゃいないわけだし、言っちまえば今のところはただの市民団体みたいなもんだろ」
「甘い甘い。甘々の甘えん坊ね、グリューったら」クラリッサが青年の耳もとでささやきます。
「あまあま……」青年は再び全身に鳥肌を浮かべます。
「人間なんて、その気になれば牙なんていくらでも隠し持てるのよ」
「むう。じゃあ連中はすでに武装しているとでも?」
「あたしはそう考えてる」少女は平然とこたえます。「といっても、戦車とかカセドラみたいな大掛かりな武装の話じゃないわよ。だけどこれからあの人たちが順当に力をつけていったら、いつかはそんなものにまで手が届く日が来ちゃうかもね」
「……なら、まだ手が打てそうなうちに徹底的に火元を潰しとくってのも、ありなのかもな」一瞬目つきを鋭くして、青年がつぶやきます。
「でもたしか特定の指導者とか本拠地とか、そういうのを定めずに活動してる人たちなんでしたよね」ノエリィが案じます。
「そう。よく勉強してるわね」クラリッサが微笑します。「その上あの人たち、いったい誰が最初に始めたのか、組織の実態がいったいどうなってるのか、わからないことがまだまだたくさんあるの」
「じゃあ結局、マノンさんがおっしゃるところの、世界平和のためにわたしたちにできることっていうのは……」ミシスがゆっくりと首をかしげます。
顔にかかる髪をさらりと手で払い、マノンは涼しげな笑みを浮かべます。
「うん。僕らにできることは、とくにないね」
「え~?」全員が声を揃えます。
「僕らには、ね」指揮者のように両手を揺り動かして一同を鎮めながら、マノンはふいにミシスの瞳を見据えます。「でも、きみにはあるんだ。ミシス」
「えっ。わたし、ですか?」少女は自分の顔を指差します。
「うん。きみには、リディアの顕術の能力を正しく使いこなせるように、訓練を積んでもらう」
「なっ」思わずグリューが振り返ります。「……本気ですか、師匠」
青年以上に動揺したノエリィが、言葉もなくその身をこわばらせます。そのため鏡はわずかに傾き、太陽を映して一瞬真っ白に輝きます。
「いいかい」マノンが決然と告げます。「平和の実現のために僕らができるいちばんの貢献は、これもやはり与えられた使命とおなじく、リディアを守り抜くことに他ならないんだ。そして、これから先どんなことが待ち受けているにしても、僕らが最も頼りにするのは、つまり最後の切り札となるのは、皮肉なことに、リディアそのものが持っている神秘の力なんだ。そしてそれは、きみの力でもある。ミシス」
誰もが口をつぐみ、じっと一人の少女を見つめました。砂埃をまとった熱い風が吹きつけて、まるで覚悟を催促するかのように低く唸りながら、少女のまわりで渦を巻きました。
「だからもしもの時のために、きみにはいつでもリディアの力を正しく使いこなせるよう、躯体に搭乗しての顕術訓練に取り組んでもらいたいんだ」マノンが改めて提言します。
「ミシス本人の体には、発顕因子が少ないんだったわね」王都で目を通した報告書の内容を思いだしながら、クラリッサが指摘します。「そんな人間が、つまり生身の体で顕術を使ったことのない人間が、あのどんな潜在能力が秘められているかもわからない躯体に乗って、その力を扱うとなると……」
「なぁに! ミシスならきっと大丈夫さ」ぱっとマノンが笑顔を見せます。「なにしろ、今やその道の第一人者もいてくれてることだし」
ふいに頼もしげな視線を向けられたクラリッサは、やんわりと肩をすくめます。
「でもさ、マノン。そんないかにも場所を取りそうな訓練、いったいどこでやるのよ」レスコーリアが渋い顔をします。「まさかあの狭っ苦しい格納庫のなかでやろうってんじゃないわよね」
「うん。至極まっとうな懸念だね。でも僕にもそんな場所に当てはない」マノンがあっさりと認めます。「そこで、だ。ここでようやく、僕の考えを発表したいと思うんだけど……」
全員が自分に注目して耳を澄ませるのを待って、マノンはみずからの秘策を披露しはじめました。
「実はね、ある人物に知恵を借りたいと思ってるんだ」
「ある人物?」ミシスとノエリィが一緒にくり返します。
「いったい誰のこと?」クラリッサが露骨に眉をひそめます。「リディアの内情を知ってる人間なんでしょうね?」
マノンは微妙に首を傾け、グリューに声をかけました。
「ねぇ助手くん。きみはベーム博士のことを覚えてるかい」
「……ベーム? えっと、それは、たしか……」青年は目を伏せて思案し、やがてはっと顔を上げます。「それってもしかして、あのドノヴァン・ベーム博士のことですか? でもあの人はたしか、もうずいぶん昔に学会を去って……」
そこでマノンは、懐から一枚の絵葉書を取り出しました。色鮮やかな鳥や花で溢れる南国の楽園が描かれたそれには、うねるような太い筆致でなにやら文章が書きつけてあります。
「これは今から半年ほど前に、ベーム博士から僕宛てに送られてきた手紙だ」そっと両目を細めて、マノンはそこに書かれた言葉を読み上げます。「『親愛なるお嬢――きみが長年挑戦し続けてきた光学迷彩の実験が成功したと風の噂で聞いた。近くで一緒に祝えないのが残念だが、きみならいつか必ずやり遂げると私は信じていたよ。おめでとう、ディーダラス博士!』」
「へえ……師匠とお知りあいだったんですね。――っていうか、まさか」
「ベーム博士はね」マノンは胸を反らせて、底抜けの青空を見あげます。「僕がこれまで出逢ってきた人たちのなかで、誰よりもこの世界を熟知しておられる方だ。
静かな、しかしひたむきな熱意を宿した彼女の語気に密かに圧倒されながら、青年はおそるおそるたずねます。
「……それで、そのベーム博士は、今どちらに?」
一同の目の前で、マノンはぺらりと葉書を裏返してみせました。差出人の住所こそ書いてありませんが、郵便社が宛先住所の上に押印した判を顔を近づけて確認するなり、全員一斉にあっと声を上げました。
「パズール!」グリューが目を見開きます。
「そう」マノンが得意げにうなずきます。「パズールの郵便社がこの手紙を受領したってことは、ベーム博士は今もまだこのビスマス地方に住んでおられる可能性が高い」
「ちょっと待ってちょっと待って」クラリッサが慌てて手を挙げます。「もちろんあたしも名前を耳にしたことはあるわ。王都の科学者のなかでも歴代最大級の異端児として名高い、ドノヴァン・ベーム博士。中央を離れて久しい彼が、リディアのことを知ってるはずがないわよね」
「うん。知らないと思う」けろりとマノンがこたえます。
「しかも、どこにいるのかも正確にはわからないんでしょ?」
「うん。知らない」
「呆れた!」クラリッサが大仰に首を振ります。「まさかあなたともあろう人が、そんな適当な思いつきみたいな案を……」
「ただの思いつきなんかじゃないんだよ」絵葉書を大事そうに懐へ収めて、マノンはまっすぐに前を向きます。「実を言うとね、もうずっと前から、頭のどこかで考えてきたことなんだ。うまくいくかどうかわからないけど、どうか、みんなには信じてほしい」
「……信じるって、なにを」クラリッサが一同の意思を代弁します。
遮光眼鏡を外してにっこりと笑うと、マノンは言いました。「僕がベーム博士を心から信頼してるってことを」
(ログインが必要です)