酒依存

文字数 1,088文字

ある国では酔っ払い運転が事故の一番の原因であった。この国の大人たちは殆ど誰もかれもがお酒を毎日飲んで嫌なことを忘れ、しかしストレスの為にある日突然に事故を起こしてしまうのだった。この事に頭を悩ませていた政治家たちや役人のトップ達がどうしたものかと思っているとある一人が提案した。「庶民がお酒を飲むのは嫌なことを忘れたいからだ。だから嫌なことをなくしてやればいいのだ。」その意見には当然質問がなされた。「嫌なことを無くすってどうやるんです?」「仕事を楽しく思うようにする電波をばら撒くのだ。」役人たちはざわついた。「どうやってそんな電波を流すんです?」との問いに対し、「私の知り合いにこの手の科学者がいる。私が彼に頼んで作ってもらおう。」と答えた。「あなたに今言ったような機械を作ってもらいたい。ただし極秘事項のため、完成した後にはデータと資料を抹消してもらう。」
博士はこころよく引き受け、研究員達と共に電波を流す装置を作った。研究員の中に酒好きの者たちがいた。彼らはこの機械が完成したら祝杯をあげようという博士の言葉に我慢ができず、ついこっそりと酒を飲んでしまった。あと一口、あと一口と飲み続けついに酔っ払ってしまった。これがいけなかった。彼らは酔っ払っていたのでコードの配線を無茶苦茶につなげてしまったのだ。さて、そんなことを博士はつゆ知らず、完成した機械を役人達のところに持っていった。「この機械から発信される電波を公共の電波と一緒に流してください。そうすればこの電波を受けた人はたちまち仕事が好きになり、辛いと思わなくなります。皆さんは電波の影響を受けないように、このヘルメットを被っていてください。私はもっともっと仕事をしたいので被りませんがね。」博士の話を聞いた役人達は大喜びで電波を発信した。するとどうだろう。国民達はまるで生気を失ったかのようにあたりをフラフラ徘徊したり、その場に座り込むようになったではないか。側にいた博士も同様だった。急いでヘルメットを被っていた研究員を呼んで機械を調べてもらった。返事はこうだった。「どうやら何かの間違いでこのコードの配線担当者達が間違えたようです。彼らは機械完成のパーティを開き泥酔するまで飲んでいたのでヘルメットを被っておりませんでした。申し訳ございませんが開発資料もありませんし、私たちの手に負えません。」
その日から政治家や役人のトップ達の生活は一変した。機械の修理を研究員に頼み、直るまでの間、自分達だけで国を支えないといけないのである。昼夜ぶっ通しで働き続け、嫌な現実を忘れるために毎日酒をあおるようになった。
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