第18話

文字数 441文字

 初めて仕事を休んでから、五日が経った。会社には体調が悪いと一言伝え、そのまま休み続けている。困るなんて電話越しに言われても、私だって困るのだ。電話が掛かってきたって、私は出ないことにした。

「もう知らない」

 そうだ、私はもう仕事に行きたくなんかないのだ。仕事なんてしたくないのだ。やっと本心に気が付いた。

 一日だけ、勇気を出して休んだが、その後はもう、なんだってよくなってしまった。一度できたことは、いくらでも、二度できるのだ。もう、心は自分と向き合って、真実を見つけたのだ。

「たまにはちゃんと自炊をするか」

 私は家でとにかく休んだ。横になって今まで減っていったエネルギーを蓄えたのだ。今日は、家の事をしたくなって、のんびりと掃除や料理をし始める。

「働きながら家事なんて大変だな」

「お父さんも大変だったのかな」

「そういえば、私何もできていなかったな」

「こんなに大変だったんだ」

 ぽつりぽつりと呟きながら、私の頭の中で、謝るお父さんの顔を浮かべては、悔しくなった。

「ごめん、ごめんね」
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み