第1話 これは現実?
文字数 2,068文字
憧れていた女の子にフラれた。
それはもう、高校入学時からずっと想い続けていた同じクラスの女の子に。
理由はとくにない。
「自由 くんとは、そういう事考えられないから」
と、告白と同時刻にフラれた。
その日の午後、返却されたテストの点も最悪だった。
勉強していたつもりでも、ヤマは外れるし、凡ミスの連発で赤点だった。
そして、放課後には先輩に「ボーとしてるな!」とドヤされて。
先輩だったら「どうしたんだ、前園らしくないじゃないか」とか言って、ちょっとは気遣って欲しかった。というのは、俺の身勝手な願いだろうか。
そんなこんなで疲労困憊で俺は家にかえった。
俺は前園自由 。自由と書いて「みゆ」と読む。
でも、初対面で普通に「みゆ」と読めるヤツはめったにいない。
ああ、明日も学校に行かなくちゃいけないんだよな。
夕食も風呂も済ませてベッドへ横になって、明日のことを考える。
憂鬱だ。フラれたばっかだし。
そう思っていると、悪友の紘 からラインが入った。
「みゆ、今日は告白おつかれ。気落ちすんなよ。女は星の数ほどいる」
にっこりと顔マーク付きのメッセージが表示される。
ああ、親友っていいよな。いや、悪友か。どっちでも、こういうときに力になってくれる。
こころの力だ。人の情って大事だよな。
俺はサンキューと返事を書いて、部屋の電気を消した。
明日はフラれたことが噂になってそう。
学校へ行きたくないな、と思いながら俺は就寝した。
「KS10125」
「登録しました」
「では、ライア、KS10125はまかせた」
「はい。お任せ下さい」
俺の枕元で誰かが話をしている。
ああ、あれか。枕辺にたつという現象か。ならば、ここにいるのは幽霊か?
大人の女性の声と、きっと俺と同じくらいの歳の女の子の声がして。
「では、起きてください、KS10125。あなたはこの国に入国を許可された数少ない選ばれた民なのですよ」
……なんだそれは。この国? 数少ない選ばれた民?
どこのゲーム世界の話だ。そうか、夢か。そうかそうか。
と、思っていたら、頬を思いっきり平手で張られた。
「いってえええーー!!」
「KS10125、起きて下さい。私はあなたをこの国に馴染ませるようにマザーに言われているんです」
涙目になって目を開けると、そこには桃色の波打つ髪を持った、バラ色の頬をした美少女が仁王立ちで立っていて。
そして、俺は自室のベッドで寝ていたのだった。
服は青い寝間着のまま。
起き上がってベッドに腰かけた状態で俺は美少女を睨みつける。
「何するんだ!」
「お起こししたまでです」
「もっと優しく起こしてくれたっていいだろう! というか、それが普通だよな! いきなり平手とか普通ないよな!」
「なにをもって普通というか分かりかねますが、起きてくれたので良しとします」
にこりとほほ笑まれたけど、いくら美少女でも……って可愛いからまあ、許す。
「KS10125。それがあなたに与えられたこの国でのシリアルナンバーです。あ、これしていてくださいね」
そう言って少女は腕時計のようなものを目の前にかかげ、俺の左手に巻き付けた。
腕時計のようなものは、ヘビのようにするりと俺の手に巻き付いて、液晶画面にハートマークが点滅したものが表示される。下の方に小さな穴があいていて、その下にKS10125とナンバリングがされている。
「それは、あなたの心拍数です。あなたが生きているという証拠にもなります」
「な、なんだよ、これ。外せよ。それに俺の部屋に勝手に入ってんじゃねえよ」
「厳密にはここは以前のあなたの部屋ではありません。そして、それはもう、外れません。外すことができるか、ためしてみても良いですよ」
いきなり現れた美少女に腕時計もどきを装着され、俺は焦ってそれを取ろうとした。
なにより、生きている証拠、というところが不気味だ。
生きていることを管理されているような――
俺はその腕時計もどきをとろうと必死になったけど、けっきょく美少女の言う通り、それを外すことはできなかった。
手枷をはめられたような感覚。
薄気味の悪さを感じながらも、俺はこの状況を説明してくれそうな美少女の名前を聞いた。
「君の名前はなんていうんだ」
「わたしはライアです」
「そうか。俺は前園 自由(みゆ)。十七歳だ」
「そうですか。私と同じくらいですね」
ライアはにこりとさきほどのように笑顔になって、俺に笑いかけた。
なんか、容姿がすごく俺好みなタイプ……。笑いかけられると俺も幸せな気分になってしまう。
取り敢えず、俺はライアに今の状況を聞くことにした。
この国ってなんなのか。
どうしてライアが俺の部屋にいるのか。
シリアルナンバーとはなんなのか。
それにライアは笑顔で応えてくれた。
それはもう、高校入学時からずっと想い続けていた同じクラスの女の子に。
理由はとくにない。
「
と、告白と同時刻にフラれた。
その日の午後、返却されたテストの点も最悪だった。
勉強していたつもりでも、ヤマは外れるし、凡ミスの連発で赤点だった。
そして、放課後には先輩に「ボーとしてるな!」とドヤされて。
先輩だったら「どうしたんだ、前園らしくないじゃないか」とか言って、ちょっとは気遣って欲しかった。というのは、俺の身勝手な願いだろうか。
そんなこんなで疲労困憊で俺は家にかえった。
俺は前園
でも、初対面で普通に「みゆ」と読めるヤツはめったにいない。
ああ、明日も学校に行かなくちゃいけないんだよな。
夕食も風呂も済ませてベッドへ横になって、明日のことを考える。
憂鬱だ。フラれたばっかだし。
そう思っていると、悪友の
「みゆ、今日は告白おつかれ。気落ちすんなよ。女は星の数ほどいる」
にっこりと顔マーク付きのメッセージが表示される。
ああ、親友っていいよな。いや、悪友か。どっちでも、こういうときに力になってくれる。
こころの力だ。人の情って大事だよな。
俺はサンキューと返事を書いて、部屋の電気を消した。
明日はフラれたことが噂になってそう。
学校へ行きたくないな、と思いながら俺は就寝した。
「KS10125」
「登録しました」
「では、ライア、KS10125はまかせた」
「はい。お任せ下さい」
俺の枕元で誰かが話をしている。
ああ、あれか。枕辺にたつという現象か。ならば、ここにいるのは幽霊か?
大人の女性の声と、きっと俺と同じくらいの歳の女の子の声がして。
「では、起きてください、KS10125。あなたはこの国に入国を許可された数少ない選ばれた民なのですよ」
……なんだそれは。この国? 数少ない選ばれた民?
どこのゲーム世界の話だ。そうか、夢か。そうかそうか。
と、思っていたら、頬を思いっきり平手で張られた。
「いってえええーー!!」
「KS10125、起きて下さい。私はあなたをこの国に馴染ませるようにマザーに言われているんです」
涙目になって目を開けると、そこには桃色の波打つ髪を持った、バラ色の頬をした美少女が仁王立ちで立っていて。
そして、俺は自室のベッドで寝ていたのだった。
服は青い寝間着のまま。
起き上がってベッドに腰かけた状態で俺は美少女を睨みつける。
「何するんだ!」
「お起こししたまでです」
「もっと優しく起こしてくれたっていいだろう! というか、それが普通だよな! いきなり平手とか普通ないよな!」
「なにをもって普通というか分かりかねますが、起きてくれたので良しとします」
にこりとほほ笑まれたけど、いくら美少女でも……って可愛いからまあ、許す。
「KS10125。それがあなたに与えられたこの国でのシリアルナンバーです。あ、これしていてくださいね」
そう言って少女は腕時計のようなものを目の前にかかげ、俺の左手に巻き付けた。
腕時計のようなものは、ヘビのようにするりと俺の手に巻き付いて、液晶画面にハートマークが点滅したものが表示される。下の方に小さな穴があいていて、その下にKS10125とナンバリングがされている。
「それは、あなたの心拍数です。あなたが生きているという証拠にもなります」
「な、なんだよ、これ。外せよ。それに俺の部屋に勝手に入ってんじゃねえよ」
「厳密にはここは以前のあなたの部屋ではありません。そして、それはもう、外れません。外すことができるか、ためしてみても良いですよ」
いきなり現れた美少女に腕時計もどきを装着され、俺は焦ってそれを取ろうとした。
なにより、生きている証拠、というところが不気味だ。
生きていることを管理されているような――
俺はその腕時計もどきをとろうと必死になったけど、けっきょく美少女の言う通り、それを外すことはできなかった。
手枷をはめられたような感覚。
薄気味の悪さを感じながらも、俺はこの状況を説明してくれそうな美少女の名前を聞いた。
「君の名前はなんていうんだ」
「わたしはライアです」
「そうか。俺は前園 自由(みゆ)。十七歳だ」
「そうですか。私と同じくらいですね」
ライアはにこりとさきほどのように笑顔になって、俺に笑いかけた。
なんか、容姿がすごく俺好みなタイプ……。笑いかけられると俺も幸せな気分になってしまう。
取り敢えず、俺はライアに今の状況を聞くことにした。
この国ってなんなのか。
どうしてライアが俺の部屋にいるのか。
シリアルナンバーとはなんなのか。
それにライアは笑顔で応えてくれた。