プロローグ

文字数 624文字


 どういうことだろう。
 見知らぬ白い天井。
 自分の足でここに来た訳では無いことは明白だった。
 自分の身に起こったことを回想してみた──

 この日は雲一つ無い、晴天だった。
 せっかくだから散歩に出ようと外に出かけた。
「ねぇ、知ってる?最近、騒がれてる物騒な事件!」
「知ってるー!怖いよねぇ!事件の統一性がないんでしょ?」
 散歩の途中で、今話題の事件について女子高生たちが話しているのを聞いた。
 そう、この町には恐怖を貶めている殺人事件が多発している。事件に統一性がなく、何に対しても気を張らなくてはならない。
 誘拐、刺殺、放火、轢き殺し…彼のすることはさまざまだ。
「彼」と説明したが犯人の性別が男であるうえに、事件に彼が関わっている事実も、名前が桐生卓人であることも判明していた。
 どこから洩れた情報なのかは分かっていない。
 自身で自分だと分かる印を残していくのかも知れない。
「だめ…早く帰ろ…」
 考えてるうちに怖くなり寒気がした。
 早足に家への道を歩く。
 耳から流れる音楽プレイヤーの曲は場違いなような気がしてくる。
 だけど、静かな住宅地の合間を歩くには安心材料として効果的だった。
 人通りが少なく、民家が多く立ち並ぶ道を一人で歩いていた。
 今思えば、これがいけなかったんだろう。
 気がつけば、視界が逆さになっていた。

 …え?
 何、これ…。
 逆さの視界の端で青い車と青年が笑ってるのが見えた。私、車に轢かれたんだと分かったのを最後に意識が途絶えた──


ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み