第23話 サーター卿
文字数 1,551文字
その髪とひげは炎そのものであり、身体は君の何倍も大きかった。その目は復讐と野望に燃え、その手には炎の聖剣が握られていた。
彼は君を見ると声をあげて笑った。
「ふはははは!そうか、そうか!ノーンのやつ、ついにヴァルキリーを使って儂に挑戦しにきよったか!宿命の水晶玉をマスターすれば、テュールをも倒せると思ったんだが、その前にお前を殺す必要があるみたいだな。実に、実に愉快だ。さあ、来い、妹よ!お前を倒した後にテュールとの最終対局をしようじゃないか」
彼が笑うだけで地面が震えた。君の足がすくむ。
サーター卿はそう言い終わるやいなや、君めがけて剣を振るった。
君は、固まった体を無理やり動かして後ろにジャンプした。間髪を入れずに次の攻撃、ギリギリで躱す。炎の刃が君の髪をかすり、毛先が少し切れる。
先程から逃げるのに精一杯で、攻撃が一回もできていない。相手は巨人、体力で適わないのは明らかだった。捨て身で切り込むか?いや、リスクが大きすぎる。
息が上がってくる。ひたいに汗がにじむ。なにか、逆転する方法はないのか。
「ちょこまかと逃げよって。勝敗は明らかだろう!」
ぶん!剣が君の真横を通る。危なかった!避けるのがあと少しでも遅かったら当たっていた。
サーター卿の後ろから、何人もの火の巨人達が現れた。君の心が絶望で沈む。こんなにたくさん相手にできるわけがない!
「ママ殿、この巨人どもは我に任せよ!」
ナルフはそう言って翼を大きく広げ、飛び上がった。
「火の巨人ども、我が主に少しでも触れてみろ!氷漬けにしてくれるわ」
ナルフはそう言うと、自分の横に二人、氷の悪魔を召喚した。巨人たちは彼を見て、恐れをなしてしっぽを巻いて逃げてゆく。
「逃さぬ。行け」
ナルフの合図で氷の悪魔たちは口から氷を吐いた。巨人たちは為す術もなく凍ってゆく。
ナルフは残りの巨人たちの前に、骨の悪魔を召喚した。巨人たちは3人で抵抗するも、氷の悪魔と骨の悪魔に挟まれてあっけなく倒れた。
何人かの巨人は君に向かって走って行った。ナルフは手をそれの方向に向けると、手に魔力を溜めた。
「フォースボルト」
彼の手から放たれた魔力と光が巨人たちを包み込む。
ナルフは巨人たちが骨まで消えたのを確認すると、ゆっくりと床に着地して、膝をついた。
「直ぐに、助太刀いたすぞ、ママ、殿…」
---------------------------------------------------
君はナルフの言葉を聞いてサーター卿に向き直る。彼を信じて巨人は任せよう。
サーター卿はもう一度剣を振った。その時、卿の背中に矢が4本刺さった。
卿はそれを気にもとめずに剣を振り続ける。
「こんな小細工、儂には効かん」
サーター卿はそう言って笑った。
「どうかな?」
どこからともなくレオの声がする。よく見ると、卿の隠れ家の屋根の上に立って矢を番 えている彼が見えた。
卿は一度訝しげな顔をしたが、あまり気にしていないようだった。彼は君に攻撃を続ける。
少しすると、サーター卿の様子が一変した。彼は咳き込み、口から血を吐いた。
「…毒か、この小童!」
サーター卿は顔を真っ赤にして怒鳴った。そしてもう一度君めがけて剣を振った。
相手が攻撃を出した瞬間、少しだが敵に隙ができる。そこを君は突いた。懐に入り込み、剣を卿の腹めがけて突き刺し、すぐに引く。ずしゃ、という音がして、サーター卿の腹から血が吹き出す。
サーター卿は、まさか攻撃を食らうとは思っていなかったようで、混乱したように傷口を見ていた。まだこれからだ。君は深呼吸をする。
その時だった。卿がニヤリと怪しげに笑った。
君の身体に悪寒が走る。なんだ?何を企んでいる?
レオがもう一度矢を放った。その矢はこのままだと卿の剣を握る右腕に丁度当たるはずだった。
その矢は、空を切った。
彼は君を見ると声をあげて笑った。
「ふはははは!そうか、そうか!ノーンのやつ、ついにヴァルキリーを使って儂に挑戦しにきよったか!宿命の水晶玉をマスターすれば、テュールをも倒せると思ったんだが、その前にお前を殺す必要があるみたいだな。実に、実に愉快だ。さあ、来い、妹よ!お前を倒した後にテュールとの最終対局をしようじゃないか」
彼が笑うだけで地面が震えた。君の足がすくむ。
サーター卿はそう言い終わるやいなや、君めがけて剣を振るった。
君は、固まった体を無理やり動かして後ろにジャンプした。間髪を入れずに次の攻撃、ギリギリで躱す。炎の刃が君の髪をかすり、毛先が少し切れる。
先程から逃げるのに精一杯で、攻撃が一回もできていない。相手は巨人、体力で適わないのは明らかだった。捨て身で切り込むか?いや、リスクが大きすぎる。
息が上がってくる。ひたいに汗がにじむ。なにか、逆転する方法はないのか。
「ちょこまかと逃げよって。勝敗は明らかだろう!」
ぶん!剣が君の真横を通る。危なかった!避けるのがあと少しでも遅かったら当たっていた。
サーター卿の後ろから、何人もの火の巨人達が現れた。君の心が絶望で沈む。こんなにたくさん相手にできるわけがない!
「ママ殿、この巨人どもは我に任せよ!」
ナルフはそう言って翼を大きく広げ、飛び上がった。
「火の巨人ども、我が主に少しでも触れてみろ!氷漬けにしてくれるわ」
ナルフはそう言うと、自分の横に二人、氷の悪魔を召喚した。巨人たちは彼を見て、恐れをなしてしっぽを巻いて逃げてゆく。
「逃さぬ。行け」
ナルフの合図で氷の悪魔たちは口から氷を吐いた。巨人たちは為す術もなく凍ってゆく。
ナルフは残りの巨人たちの前に、骨の悪魔を召喚した。巨人たちは3人で抵抗するも、氷の悪魔と骨の悪魔に挟まれてあっけなく倒れた。
何人かの巨人は君に向かって走って行った。ナルフは手をそれの方向に向けると、手に魔力を溜めた。
「フォースボルト」
彼の手から放たれた魔力と光が巨人たちを包み込む。
ナルフは巨人たちが骨まで消えたのを確認すると、ゆっくりと床に着地して、膝をついた。
「直ぐに、助太刀いたすぞ、ママ、殿…」
---------------------------------------------------
君はナルフの言葉を聞いてサーター卿に向き直る。彼を信じて巨人は任せよう。
サーター卿はもう一度剣を振った。その時、卿の背中に矢が4本刺さった。
卿はそれを気にもとめずに剣を振り続ける。
「こんな小細工、儂には効かん」
サーター卿はそう言って笑った。
「どうかな?」
どこからともなくレオの声がする。よく見ると、卿の隠れ家の屋根の上に立って矢を
卿は一度訝しげな顔をしたが、あまり気にしていないようだった。彼は君に攻撃を続ける。
少しすると、サーター卿の様子が一変した。彼は咳き込み、口から血を吐いた。
「…毒か、この小童!」
サーター卿は顔を真っ赤にして怒鳴った。そしてもう一度君めがけて剣を振った。
相手が攻撃を出した瞬間、少しだが敵に隙ができる。そこを君は突いた。懐に入り込み、剣を卿の腹めがけて突き刺し、すぐに引く。ずしゃ、という音がして、サーター卿の腹から血が吹き出す。
サーター卿は、まさか攻撃を食らうとは思っていなかったようで、混乱したように傷口を見ていた。まだこれからだ。君は深呼吸をする。
その時だった。卿がニヤリと怪しげに笑った。
君の身体に悪寒が走る。なんだ?何を企んでいる?
レオがもう一度矢を放った。その矢はこのままだと卿の剣を握る右腕に丁度当たるはずだった。
その矢は、空を切った。