ピアスホールは縮む

文字数 974文字

そんなのあたりまえ、と言われてしまうかもしれないけれど、身をもって実感したので言いたい。
ピアスホールは縮む。

マスクで耳が痛くなったとき、耳たぶを折ったり揉んだりする。マスクにひっかかって引っ張られると痛い思いをする。
そんな理由から、ピアスを付ける頻度が減っていた。ここ数ヶ月はまったくと言っていいほど付けなかった。
だから、いざ付けたい、と思ったらピアスはすんなりと入ってくれなかった。

長引くマスク生活、消毒多用生活に、マスクをするからって楽しみを減らすようなことはしないようにしよう。そう思って、避けていたアクセサリー類も付けたいときには付けようと思ったのに。
穴をあけてから安定させても、ときに腫れ、調子を崩すことのあるピアスホール。人体はやはり刺激や異物の侵入を阻止し、自己回復自己治癒をおこなうものなのだと、実感する。
完全にふさがってはいないものの、穴の大きさは極度に小さくなってしまった。ピアスは挿せてもつっかえてしまって出てきてくれない。
これではまたしばらく安定をはかる必要がある。その日はかわいいピアスを付けるのはあきらめて、私はピアスホール固定の準備をした。

つくりの大雑把なピアスを挿すと痛いので、ポールの先が丸いものをみつくろう。
アレルギーのことを考えるのならば純チタン製がいいのだろうけれど、つけっぱなしにしたときの引っ掛かりや取れにくさを考慮して、サージカルステンレス製の装飾のないピアスを装着することにした。
耳たぶを優しくじっくり揉んで柔らかくしてから、消毒し、ゆっくりゆっくりピアスを挿す。
幸い痛いと感じることはなく、大きめの違和感を覚えただけで、皮を突き破るような音を聞くこともなかった。少々時間をかけてピアスを挿すことができた。
これからしばらく、ファーストピアスよろしく、耳たぶに気を使いながらの生活をする。

そういえば、ピアスの穴をあけると運命が変わる。初めて穴をあけた十代のころ、そんな話を聞いた。
縮んでしまった穴を拡張するときにも運命は変わるだろうか? どうだろう?
そんな考えが頭をよぎった。きっと今日からまたいっそう良くなる。そう思いたいので、運命は変わったのだと思うことにする。
いろいろ窮屈で、ピアスホールとおなじく、私も縮こまっていた気がする。今日からはもっとでっかく。
違和感の残る耳たぶに、そんな願いを込めた。

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