追憶

文字数 299文字

いつか見た影が
ぼんやりとそこに浮かび
気が付けば歩いていた道路は
奇妙な曲がり方をしていた
夏の木々の葉が風に揺れ
満ち足りた湖の水は
遠くで広がっていった
揺らめいて消える残滓が
追憶を引き起こして
それ自体が歪んでいくのが見えた
日々は過ぎていき
草は辺りに響いて
ビルの隙間を拭っていく
遠い日に落ちていった出来事は
霧散を繰り返していった
蘇る静かな風景が
風と共に辺りを包み込む
そこには誰の姿もない
どうせ消滅してしまうのだから
何もない花畑に立ち止まることにした
季節は移り変わる
空気の振動の熱は
まだ続いていた
なくしたものはきっと空の
植物の中にあるのかもしれない
人々が通り過ぎていき
雨が辺りを霧で覆った
まだそれは進んでいく

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