「記念日」 こむらさき

文字数 799文字

「ねえ…愁平、今日は何の日?」

「なんかあったっけ?サッカー?」

「そんなことじゃなくて」

「なんだよ」

「知らない!今日が何の日かわかったら来て」


 少し明るめのセミロングの髪を揺らした目の前の少女は、頬を膨らませてそういうと俺に背を向けて立ち去っていく。

 隣のクラスとの選択授業で隣の席になったことがきっかけで仲良くなった彼女、智美とは、ちょうど一ヶ月前に告白されて付き合うことになった。

 見た目はかわいいし、おっぱいも大きい彼女が出来た俺はそれなりに楽しい高校生活を送っていた。

 それなのに今日、いきなり彼女は俺に謎のクイズを出して怒って去っていってしまった。


 全然検討がつかない。

 考えてみても何も浮かばない。かと言ってあの怒り方は多分雑なことをいうとだめなやつだ。


 仕方ない。ここは文明の利器の力を借りることにしようと、俺はスマホを手にとって青い鳥がシンボルマークのSNSを開いた。

 特に何のヒントになりそうなものもない。これはGoogleで調べるしか無いか…。


 そう思っているうちに貴重な休み時間は終わり、授業が始まる。


「えー、今日は夏至と言ってですね…一年で一番昼間が長い日になります」


 先生がそういった瞬間、俺の中でもやもやしていた疑問がぱあっと晴れていった。そうか…さっき調べて出た「がん支え合いの日」は多分彼女が求めてる答えじゃないと思ってたけど、これだ。

 俺は授業が終わるなり、席を勢いよく立ち、ちょうど同じタイミングで授業が終わった彼女のクラスに駆け込む。

 智美は駆け込んで自分の目の前に立つ俺の姿を見て嬉しそうな顔で「何の日かわかった?」と聞いてくる。

 

「やっとわかったよ。夏至」


「もう本当に信じられない!最低」


「は?なんでだよ?」


 付き合ってからちょうど一ヶ月目のその日、俺の恋は彼女の出すクイズに不正解だったからという理由で終わりを告げた。

 正解は何だったのか未だにわからない。

2018/06/21 13:47

violetsnake206

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