第1話(7)

エピソード文字数 3,260文字

 ~四時限目・英語W~

「お前ら、夏休みの授業はダルイだろ? そこで四時間目は、英語のゲームで遊ぶとしようではないか!」

 ノリは軽いが、担当したクラスの成績は良くなる新進気鋭の教師! 岸村晴信(きしむらはれのぶ)先生が、ニンマリ笑った。

『おおっ、岸村センセー超ナイス! わかってるぅ~!』
『やっぱ学生の味方だわっ。流石は岸センだぜ!』

 すぐさま、あちこちから歓声があがる。
 ああ、ホント流石だな。ケイトさんへのラブレターを宿題にした英語教師とは、大違いだぜ。

『センセセンセっ、なにするの? どんなゲームをするんですかっ?』
「ふふん。ズバリ、景品争奪単語大会だ!」

 先生は、ビシィッと片膝立ちになる。
 うん。その行動の意味は分からんが、ゲーム名は分かりました。

「ルールは簡単。まずは全員起立して、ノートに英単語を一つ書きたまえ」
『『『はい。分かりました』』』

 俺達は指示に従い、立ち上がって思案する。
 英語の、単語か。そうだな……………………育月のトコにお邪魔してたから、MOONにしておこう。

「皆の衆。決定したか?」
『『『はーい。できました』』』
「うむ、よろしい。では説明を続けるぞ」

 はい。お願いします。

「これから先生が、アルファベットを1つずつ言っていく。そして口にしたアルファベットが先頭に付いていた子は、脱落。そうやっていって、最後の1人になった生徒には……」
『『『生徒、には?』』』
「なんとっ。これを進呈する!」

 どんっ!! 先生は教壇に、鳴子を1セット置いた。

「実は昨日まで、あの『よさこい祭り』を観に行ってたんだ。高知県のお土産といったら、これ一択でしょっ!」

 という台詞を、ユズの焼き菓子を買ってきた俺が聞く。
 なぜだか、何も悪いことはしていないのにだ。居心地が悪いです。

「さあさあ皆の衆っ、こいつを懸けて勝負! 最初のアルファベットは、Aだ!」
『うああっ! ドボンキタ!』
『わたしもアウトっ! 悔しい……っ』

 40人中、6人が脱落。鳴子、意外に好評だ。

「残り、34人か。第2弾は、Fだっ!」
『ぐああっ!』
『ぐぅっ。ちき、しょう……!』

 3人、脱落。生き残っている生徒は、31人となった。

「よーし第3弾、ついでに第4第5弾もいくぞ! D、K、Pだぁっっ!」
『くっそー! 当たっちまったっ』
『ゆ、ユウ。オレの仇を、とって、くれ…………がくり』

 三連続により、11人が脱落。臭い芝居をしたのは勿論、我が悪友です。

「残りは、20人か。今度もラッシュをかけて、B、V、C、I、T、U、Yだ!」
『な、なるこぉ……!』
『欲しかった、のに……。ユウ……今のオレでは、無理、だっ、た…………ふぐっ』

 ここで、8人脱落。無論、我が悪友はカウントされていません。
 ややこしいから混ざるなよバカ。

「生存者は12名で、予想以上に残ってるな。……段々、言うのメンドクサクなってきたなぁ」
「先生今なんて言った!? アンタが提案したゲームでしょ!?

 俺は速攻で身を乗り出したよ。アナタ興味失うの早過ぎっ。

「……だって、先生だけ蚊帳の外なんだもん。ドキドキできないの、思いのほか苦痛」
「じゃあ後で、岸村先生もプレイヤーとしてやりましょう。ちゃんとお楽しみを用意したんで、最後までやってください」
「おお、そういうことならやろうじゃないかっ。E、Q、W、Z、Xはアウトだ!!
『がぁーっ! あと一歩だったのに……!』
『む、無念……』

 5人の生徒が、該当。12ひく5で、残りは7人となった。

「この人数っ。セブンナイツを思い出しますわ……!」

 よかったね。おめでとうラミラミ。

「ついに、7人か……。ここからはまた、1つずつ発表するとしよう」

 ゴクリ
 生存者達が、息を呑む。
 ボクは鳴子を持ってて欲しくないんだけど、調子を合わせておきました。独りだけ冷めてると、周りも冷めてしまいますからね。

「…………ここからは、ジワジワ減っていくだろうな……。いくぞっ、L!」
「「「「「やられたー!」」」」」

 俺とラミラミ以外、アウト。先生の予想は大外れで、すっぱーんと減ってしまいましたです。

「す、すごいぞ……っ。麗平とユウ、似た者同士が残った……!!

 俺を混ぜるな雲海! こっちの『劇的な変化』は、まるで違うんだよ!

「似た、者……? もしや色紙クンも、騎士ですの?」
「違います。雲海はお口にチャックで、先生はコールをお願いします」
「よしきたっ。J、G、H、N、O!」

 シーン
 ラミラミは、座らない。彼女はこれ以外を選んでいるのか。

『『『残されたアルファベットは、3つ。先生、次は……?』』』
「次は、だな………………。Sだ!」

 シーン
 ここでも、ラミラミは座らない。

『『『残りは、RとM。二つ目は、なんですか……?』』』
「2つ目は…………………………。M、ではなくRだ!!

 シーン
 状況に変化なし。つまり彼女も、Mの単語を選択していた。

「お、ユウと麗平が最後までいったか。センセ、こういう時はどうする?」
「そうだな、単語が長い方が勝ちにしよう。それぞれノートを掲げ、皆に見えるように一周回ってくれ」
「はい」「ラジャーですわ」

 俺達2人は、揃って回転する。
 こちらはMOONなので、あちらが5文字以上だと負け。ラミラミは、何を書いているんだ……?


 MUUN


 麗平活美さんのノートには、そんな文字があった。
 ……………………。こ、これ、さ。あれのことだよね?

「ミラクル発生で、ウチらは同じ単語を選んでいましたのねっ。だけど色紙クン、スペルをミスってますわよ?」
「ミスってるのはアンタだ! それは、UではなくOが入るんだよっ!」
「はっはっは、冗談はよしてくださいな。それだと、モーンになってしまいますわよ」

 シーン
 先程とは性質が異なる静けさが、1年C組を支配する。
 高校1年生で、これはないでしょう……。この子、よく合格できたな……。

「間違いを認めなくないってのは、わかりますわ。けど間違いなど、どんなヤツにだってあります。恥ずかしいことじゃないんですわよ?」
「ぉ、おぉ、そだね。そうだ。…………先生、俺の負けです」

 彼女は優しい目で素晴らしい発言をされており、訂正できる雰囲気じゃない。もう今だけ、月はMUUNでいいよ。

「そ、そうだな、お前の負けだな色紙。こ、これにより勝者は麗平活美となり、キミに鳴子を贈呈する」
「岸村センセイ、サンクスですわっ。ウチは前々から、よさこい踊りに関心があったんですのよ!」

 聖人(?)ラミラミさんは鳴子を両手で持ち、欣喜雀躍。「よっちょれですわ! よっちょれですわ!」と踊りだした。

「よっちょれ高知! よっちょれ土佐! カワウソ黒潮よっちょれよっちょれ!」
「…………色紙。麗平、楽しそうだな」
「はい先生。楽しそうですね」

 多分、知ってる単語を並べた自作のよさこい。それをまるで、小さな子供のように嬉々として行っている。

「カツオでよっちょれ! ウツボでよっちょれ! 漫画王国だと聞きましたわよよっちょれ~!」
「…………俺、ゲームをやって良かったよ。だが、なんだかドッと疲れたな」
「はい先生。なんだか疲れましたね」

 別に頭を働かせたワケでも、労働をしたワケでもない。なのに、それ以上に疲労感があるんだ。

「土佐弁よっちょれ! 一本釣りでよっちょれよっちょれ! 『ゆるキャラぐらん○り』で1位よっちょれよっちょれ!」
「…………色紙。チャイムが鳴るまで、ぼんやりしようか」
「はい先生。そうしましょう」


 学校生活の想い出 先生と一緒に二十数分、教室で独りよさこい踊りを見物した。
 よっちょれよっちょれ。
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登場人物紹介

色紙優星 16歳の少年


高知県生まれの主人公。

リリウという神様の聞き間違えで魔王使いになってしまい、おまけに『究極奥義』と呼ばれる力を何個も持ってしまった高校生。優しく他人想いなのだが、彼はとあるセンスが全くないのであった……。

黒真レミア 16歳の少女


魔王、でありながら伝説の勇者の能力を持つ。冷徹でクールな容姿と声音を持つ美少女だが、性格はほわほわでお子ちゃま。『にゅむ』という独特な言葉を多用し、時にはにゅむのみで会話を行おうとする。例「にゅむーむ。にゅむ。にゅむりん」。

なお愛用の武器である聖剣は魔王の天敵であるため、使うと痺れる。

金堂フュル 16歳の少女


伝説の勇者、でありながら伝説の魔法使いの能力を持つ。元気一杯の猫っぽい女の子で、高知県の英雄・坂本竜馬の大ファン。そのせいで『ぜよ』と中途半端に覚えた土佐弁を使い、主人公のことは『師匠』、仲間のことは名前のあとに『先生』とつけて呼ぶ(例えばレミアの場合はレミア先生)。

なかなかにおバカな女の子。

虹橋シズナ 17歳の少女


伝説の魔法使い、でありながら魔王の能力を持つ。大和撫子然とした容姿を持つ美少女であり、主人公の義理の従妹。

重度の怒られ好き。

とにかく変で厄介で面倒くさい人。

茶操ユニ 18歳の少女


伝説のドールマスター、でありながら伝説のプリーストの能力を持つ。キグルミ族という一族の人間で、閉園したテーマパークのキャラクター・二足歩行ウサギの着ぐるみを着ている。口癖は、ミョン。

実はお笑いにうるさく、親戚は某有名人。

プリースト神 年齢不明


茶操ユニが持つプリーストの杖に宿る、プリーストの神様。

実は……。

橙式エイリ 14歳の少女


伝説のモンスターテイマー、でありながら伝説の召喚士の能力を持つ。所謂スケバン然とした容姿と声を持つが、グループ最年少の中学生でみんなの妹的存在。でもレミアやフュルよりずっとまともで、ヤツらの方が妹的存在な気がする。

野菜が大好きで、とても詳しい。

タンザ・クー 年齢不明


橙式エイリの召喚獣で、俳句世界(はいくわーるど)の王女。

タンザが姓で、クーが名。

二万年後に、地球の傍に誕生する世界からやって来た。


色紙育月 16歳の少女


高知県大豊町在住の、優星の従妹。中学卒業と同時に本格的にピーマンの生産を始め、今ではテレビの取材を受けるほどになっている。


薄幸の美少女然とした容姿と、従兄想いの優しい性格が自慢の従妹です! by色紙優星

謎の声 年齢不明


優星にだけ聞こえる、不思議な声。

なぜか正体を明かそうとしない。

リリウ 神様


願いを聞き間違えて、優星を魔王使いにしてしまった神様。

神様の世界で流行しているゲームに夢中で、神様のお仕事はほとんどしない。

とってもダメな、神様(?)な神様。

麗平活美 16歳の少女


ストロベリーブロンドのドリルヘアーが特徴の、優星のクラスメイト。

お嬢様然とした容姿で気品があるように見えるが、非常に活発。実は……。

空霧雲海 16歳の少年


頼れる兄貴系の容姿と性格を持つ優星の同級生であり、悪友であり、重度のオタク。

作中に登場する名曲(迷曲)を作った人。

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