ダイエット効果

文字数 2,650文字


 世の中にはいろいろなダイエット方法があります。
 それも、新しい理論(ダイエット)が産まれて、試されて、また新しい理論(ダイエット)が産まれる。私たちが行ったダイエットは、それらの物とは違いました。意図してダイエットをしようとしたわけではありません。

 一緒に仕事をしていたメンバーの全員が、10キロ以上の減量に成功しています。
 100キロ超えの人間から、60キロ位しかなかった人(女性を除く)まで様々ですが、全員がダイエットに成功しています。

 その驚異的なダイエット方法は・・・・。



 精神的に追い詰められた状態で仕事を続ける事でした。
 納品まで3ヶ月。通常なら余裕のある職場です。実際に、仕事は余裕がありました。

 ただ、場所が山奥に作られている周りにまだ施設が建設されていない病院だったのです。

 感のいい人ならわかると思います。
 山奥に作られる病院は、私が知る限り二種類です。

 この病院も二種類のどちらかです。
 そして、周りに何もない事や、建設中の病院ではありますが、旧システムが稼働しているので、病院業務には支障はありません。そのために、病院は稼働しているのです。建設中なのは、入院患者のための施設ではなく、患者の付き添いやお見舞いに来た人向けの施設なのです。

 そして一番大事な事は、この病院が最寄りの交通機関から2時間程度歩かなければ到着できない事なのです。車で20分以上の移動が必要です。駐車場の数も少ない事から、病院のスタッフも麓で駐車場を借りて、車に乗り合って来るほどです。
 システム屋向けの駐車場なんて用意してくれるはずがありません。

 そこで、システム屋が取った方法は・・・。
 病院に寝泊まりするという事です。当初、その話を聞いた時には施設側が拒否すると思っていたのですが、問題なく許諾されてメンバー23名全員の宿泊が承認されました。これがダイエット(悪夢)の始まりです。

 病院です。
 それも、お見舞いに来た人が泊まっていける施設を用意している最中ですが、宿泊施設があります。
 食堂はありません。風呂も大浴場があります。寝られる場所が有るだけです。
 そして、洗濯機もありますので、洗濯も可能です。

 無いのは、食事をする場所だけです。
 病院ですので、入院患者の食事を提供する場所がありますが、あくまで入院患者用です。

 システム屋は、何か行うにしても最後の最後になります。
 売店もありますが、23人全員の胃袋を満たすほどの物量ではありません。

 システム屋が外部で缶詰状態になるような場合は、カップ麺などの保存が効く物を大量に買いこんでおいて、消費していくのですが、病院側から止めて欲しいというお願い(命令)が出てできませんでした。

 そのために、23名は交渉の末・・・。病院食の試食という名目で食事の確保に成功したのです。

 しかし、病院食です。
 栄養士が付いています。好きな物が食べられるわけではありません。名目とは言え”試食”なのです。

 簡単に言えば、しっかり管理された食事を3食摂取するのです。それも決まった時間に・・・。

 食事の問題は解決されました。
 しかし、ここにはもう一つ問題があります。

 感のいい人ならお気づきでしょう。
 システム屋の作業する場所は、地下になる事が多いのです。この病院も地下にコンピュータルームが設置されていて、その中での作業になっています。AS400が基礎システムで動いていて、DB連携用にWindowsNT4.0サーバが数台動いています。
 あと、23台の端末と補助端末があり、他にも複合機が数台あり、旧システムに繋がる端末まであります。

 冷蔵庫とはよく言った物です。
 それだけの端末が常時動いています。暑くなってしまうのを、クーラーで強制的に冷やすのです。
 エアコンの設定温度は、”エコなにそれ?おいしい物?”と言わんばかりの12度設定なのです。4月切り替えに向けての作業なので、この時は1月・・・。一般的なオフィスでは暖房に設定しているはずがここでは冷房設定で丁度良かったのです。

 話が横にそれました。
 病院で地下にある施設を思い浮かべてください。主に置かれる施設は2つです。

 その施設の横で作業を行っているのです。頻繁に使われるような場所ではなかったので、良かったのですがそれでも、時折運び込まれては、泣き叫ぶ声やすすり泣く声が聞こえてきます。
 SAN値(精神力)がゴリゴリ削られていきます。

 作業は順調です。18時間ほど毎日作業をしていれば間に合う計算になる位で落ち着いています。

 4時間の仮眠と食事と風呂で2時間・・・。それ以外は、仕事をしています。

 この状態で、3ヶ月過ごしたのです。食事は十分とはいえないが取れている。寝ることもできる。
 しかし、監禁生活です。ストレスは溜まっていきます。しかし、ストレス発散などできるはずもなく、黙々と仕事を続けるしかありません。

 そこで考え出された、ストレス発散方法は、階段の上り下りでした、案外やってみると解るのですが、いろんな所の筋肉を使うのか、疲れます。そのおかげで、仮眠時間が少なくても、身体のリフレッシュは難しいのですが、頭のリフレッシュができます。

 風呂の時間だけは皆が心の底からリフレッシュできる時間だったのです。

 管理された食事。
 軽めだけど毎日の運動。
 短い睡眠時間。
 SAN値を削られるストレスマックスな環境。

 これだけ合わされば、ダイエットが容易できる事がわかりました。
 一番ダイエットできたのは、100キロ超から55キロまで痩せた男性です。
 この男性は既婚者でお子さんも居たのですが、3ヶ月間ほぼ家に帰らなかった。帰っても、夜に帰って次の日の朝には家を出る生活でした。その為に、いきなり50キロ近く痩せてしまって、別人のようになってしまったのです。
 奥さんは喜んでいたようですが、小さかったお子さんが”知らない人が居る”と言って泣き出してしまったようです。こんな些細な喜劇がアチラコチラで発生した業務でしたが、皆が、結構健康的にダイエットできたのは間違いありません。

 良かったと言えば良かったのかもしれません。

 ただ、もう2度とあんな仕事(生活)はしたくない。その時のメンバーの一致した見解です。

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