第9話
文字数 598文字
あれからいろいろなことがあったが、今年、私のサボテンラジオ園は、開園五十年を迎えた。初期からいるサボテンたちは、かなりの大きさに成長した。「母さん」金鯱はどっしりとみんなを見守り、その隣に「父さん」弁慶が静かに寄り添っている。
最近、弁慶に初めて「腕」が生えてきた。サボテンの成長はとてもゆっくりなのだ。人間の方が急ぎすぎているとも言える。
レトロ趣味というのか、このごろ入園者が増えている。五十年前にここでサボテンラジオを聴いていた老人と、冷たい飲み物を手にした若者が、一緒に放送を聴いている。佇むサボテンから流れる、理解できない言葉、地上にはない音楽を。
チューニング係は息子がやってくれている。私は、大きな傘をさしかけた縁台で、五歳の孫に将棋を教えながら、のんびりと放送を楽しむ日々だ。
「ねえおじいちゃん」孫がたどたどしく話しかけた。「サボテンのラジオって、どこから放送してるの?」
「ほ?」
思いがけない質問に、声が裏返ってしまった。
そんなこと、五十年このかた考えたこともなかった。私は、子どもならではの鋭い気づきに感心し、盤から目を上げてサボテンのほうを見やった。
宇宙に向けて、ゆっくり伸び続けるサボテンたち。
私は孫に目を戻し、とてもだいじなことを教えるように言った。
「それは、きみたちが答えを見つけることだよ」
まったく、大人というのは無責任なものだ。
最近、弁慶に初めて「腕」が生えてきた。サボテンの成長はとてもゆっくりなのだ。人間の方が急ぎすぎているとも言える。
レトロ趣味というのか、このごろ入園者が増えている。五十年前にここでサボテンラジオを聴いていた老人と、冷たい飲み物を手にした若者が、一緒に放送を聴いている。佇むサボテンから流れる、理解できない言葉、地上にはない音楽を。
チューニング係は息子がやってくれている。私は、大きな傘をさしかけた縁台で、五歳の孫に将棋を教えながら、のんびりと放送を楽しむ日々だ。
「ねえおじいちゃん」孫がたどたどしく話しかけた。「サボテンのラジオって、どこから放送してるの?」
「ほ?」
思いがけない質問に、声が裏返ってしまった。
そんなこと、五十年このかた考えたこともなかった。私は、子どもならではの鋭い気づきに感心し、盤から目を上げてサボテンのほうを見やった。
宇宙に向けて、ゆっくり伸び続けるサボテンたち。
私は孫に目を戻し、とてもだいじなことを教えるように言った。
「それは、きみたちが答えを見つけることだよ」
まったく、大人というのは無責任なものだ。