「父」というもの

文字数 985文字

僕にとって、父はいつも難しい存在だった。

父に愛された記憶が、残念ながら無いんだよね。

そうなんだ…。

厳しいお父さんだったの?

うん。僕にはかなり厳しかった。

でも、厳しい以上に、どう関わったらいいかわからないくらい、気難しい父だった。

厳しさも、愛情の形だったりはしない?

でも、うーちゃんにはそう感じられなかったのか。

関わり方が分からなかったってこと?

そうだなぁ、、

いま思えば、父なりの愛情だったんだろうね。

僕は見捨てられたわけではなかったから。

でも、子どもながらに、その厳しさをどう受け止めていいか分からなかったし、なにより理不尽に感じられる時は、否定することでしか自分を守れなかったよ。

否定するって、喧嘩したりしたってこと?
喧嘩できる余地なんて無かったよ(笑)

それくらい、力でねじ伏せてくる感じの人だったから。

だから僕は、表面上は負けて、内心で父を見下していた。

「この人は理性的な人ではない。だからこんな理不尽なことをするんだ。僕の方がずっと大人だ」

そう思って、自分の自尊心を守っていた。

そうなんだね、、

自分のお父さんを、そんなふうに思うって、なんだか子どもにとっては可哀想な気がするよ…。

そうかもね。

本当はそれも、子どもの頃の僕には辛いことだったのかも。

母に対しても理不尽な父を見ながら、心の中でやっぱり父を否定して、

僕が母を守らなきゃって思ってた。

自分の父親を否定して、自分が家庭で父親のような存在にならなければって、背伸びしていたんだと思う。

そっかぁ、、

うーちゃんが、昔から大人っぽくて、

みんなのお兄さん的な存在だったのは、

そういう理由からだったのか、と、

なんだか変に納得しちゃった。

そっか、、そうかもね。

だから、なんか、父ってよく分からないんだよね。

今でも、父親的な人と対峙すると、なんだか構えてしまうし、

自分が将来、どんな父親になったらいいのかも、よくわからない。

父というものが、よくわからないんだよね。

うーちゃんの優しさは、とっても素敵だと思うよ。

でもきっと、厳しさがわからないんじゃないかなって思った。

厳しくすることを、どこかで恐れている、

それは、お父さんの厳しさがあったからなんだね。

そうかもしれない。

厳しさ、か。

うん。少なくとも、相手が理不尽だと感じるような厳しさは、いらないと思っているよ。

でも実際は、難しいんだろうね。

僕も、父親になったらわかるのかな。

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登場人物紹介

名前:うきよ

一見なにも不自由なく生きてきたようで

幼い頃から言い知れぬ孤独を感じていた

それでも普通のどこにでもいそうな青年。

筆者本人の心の声。

名前:いさお

うきよの数少ない友人であり理解者。

聴き役であり、一緒に考えるだけでなく

一緒に悩み生きてくれる存在。

名前:かなで

うきよの姉のような存在であり

初恋の人でもあり、常に心の支え。

いまはお互いに「大切な人」という

関係の中で安心している。

名前:うきよ(子ども時代)

時おり登場するうきよの子ども時代の心。

時に問いかけ時に応える、心の声であり

今もうきよの中で生きつづけている

素直で正直な心のあらわれ。

名前:かつお

鰹ではなくカツオでもなくかつお。

よくわからない。

でも魚だということは確か。でも喋る。

ちなみにうきよは魚好き。

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