「父」というもの
文字数 985文字
いま思えば、父なりの愛情だったんだろうね。
僕は見捨てられたわけではなかったから。
でも、子どもながらに、その厳しさをどう受け止めていいか分からなかったし、なにより理不尽に感じられる時は、否定することでしか自分を守れなかったよ。
それくらい、力でねじ伏せてくる感じの人だったから。
だから僕は、表面上は負けて、内心で父を見下していた。
「この人は理性的な人ではない。だからこんな理不尽なことをするんだ。僕の方がずっと大人だ」
そう思って、自分の自尊心を守っていた。
本当はそれも、子どもの頃の僕には辛いことだったのかも。
母に対しても理不尽な父を見ながら、心の中でやっぱり父を否定して、
僕が母を守らなきゃって思ってた。
自分の父親を否定して、自分が家庭で父親のような存在にならなければって、背伸びしていたんだと思う。
だから、なんか、父ってよく分からないんだよね。
今でも、父親的な人と対峙すると、なんだか構えてしまうし、
自分が将来、どんな父親になったらいいのかも、よくわからない。
父というものが、よくわからないんだよね。