第22話:金沢の夜と薫子が横浜で住居探し

文字数 1,731文字

「それは、残念な事でしたねと言い、目に涙を浮かべた」
「映画でも見ているような気がして現実だと、なかなか受け入れられなかった」
「その時は、目の前が真っ暗になり、落ち込んだ」
「でも、息子も娘もいるので、立ち直るしかなかった」

「また、亡き妻が、これからも幸せな人生と送って言われた事を思い出した」
「それで何とか、立ち直って生活を続けたと話すと、偉いわ、本当にすごい、強い、それでこそ、柔道の猛者、清水君よと言い、薫子は、笑顔になった」
「あなたも伴侶を亡くしたのと言い寂しいわねとしみじみと薫子がつぶやいた」

「再び、昔の青春を気持ちだけでも謳歌しましょうよと静かに告げた」
「それを聞き、清水が、その方が良いのかなと戸惑った」
「今まで、一生懸命働き、つれあいの面倒みたり、仕事を手伝ったりしたのだから、残り少ない人生、楽しむ権利はあるじゃないと薫子が笑顔で言った」

「清水が、薫子に、じゃー横浜に帰ろうと語った」
「でも、友人と呼べる人は、清水さんしかいないのよと不安げに言った」
「少し考え、帰れば、昔の旧友にも会えるし良いかもと言い笑顔になった」
「その決断を聞いて、できるだけ俺も協力するよと清水が言い握手をした」

「突然、わざわざ、女友達に、無理、言って、1時間もかけて八王子郊外の清水君のいる高専祭に行ったのは、あなたが大好きだったからなのよと語った」
「あの時、なんで、自分の心に素直に行動して、清水君の胸に飛び込まなかったのか、後悔する日も多かったのよと言い涙ぐんだ」

「時計をふと見ると23時、遅いからタクシーを呼んで上げると清水が話した」
 店の人に言い、フロントからタクシーを呼んでもらった。
「薫子を見送る時、彼女が、後で読んでと封筒を渡した」
「清水は、横浜で、また、会おうと言い薫子を抱きしめて別れた」

「薫子の目から涙がこぼれ落ち。清水を振り切るようにタクシーが乗った」
「清水は、後ろを振り返らず、ホテルに入っていった」
「清水は、その晩も、なかなか寝付けず、ウイスキーを飲んだ」
「帰り際、薫子が言った事が気になって、しかたなかった」

「高専を卒業する頃は、不景気で良い就職口がなく困った」
「そのため薫子のことなど全く眼中になかったのも事実だ」
「人生って、意外に残酷なものだと、思い返した」
「でも、よく考えてみると中学卒業する時、清水は、2人の娘に興味を持っていた」

「1人は、地元の農家の娘、照子、もう1人が薫子だった」
「照子は、美人と言うよりも、小柄で可愛い感じの娘で多くの男にもてた」
「そのため清水は、ライバルの男が多くて気後れして、遠くから照子を眺めていただけで、デートや食事に誘ったこともなかった」

「その点、北欧系の外人ぽい痩せて背が高く赤毛の薫子は、個性的な美人であったが、まるで、モデルさんを見るように、周りの男は、眺めるだけだった」
「そんな薫子を気にかけて、声をかけたのは、清水だけだった」
「だから周りの友人達も、清水と薫子はできてると中学3年の時、よくからかわれた」

 それを思い出した。
「それを感じていた薫子は、清水と話す時が多く、だれも薫子にアプローチするものはいなかった」
「女の子達も男友達からも、将来、薫子と清水は、結婚するわよといわれた」
「しかし、彼女が横浜を離れると薫子の事は、いつの間にか忘れてしまった」

 翌日、清水は、ホテルの精算をして横浜に帰った。新幹線に乗り日本海を眺めてると、ふと、昨晩、別れ際に、薫子が手渡してくれた手紙を思い出し、封筒を空け、読み始めた。
「手紙には、昔と同じで、美しいペン字で、楽しいひとときを本当にありがとう」
「清水君の包容力、優しさは、昔とちっとも変わらなくて、うれしかった」

「こんなに、長い時が経っても、私の住む、金沢に清水君を呼んで、再開させてくれた神様に感謝します」
「清水君も、私も偶然、最近、伴侶を亡くすなんて神様も粋な計らいをするものね」 
「亭主が亡くなり私の周りに本当の友達が1人もいなくなって落ち込んでいた」

「そんな時、清水君が、私の所をたずねてくるなんて、まるで、奇跡だわ」
「あなたを見て、私は、人生の暗闇から、救い出された気がした」
「ちょっとオーバーかも知れないが生きる勇気がわいてきたのよ」
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