第6話(8)

エピソード文字数 2,179文字

「……キミらは御先祖様が忍んでて、持ってる力を自在に隠せるよね? それの上級編で思いっきり隠して、英雄扱いされなくなるようにはできないの?」
「それは、可能よ。ただしそうすると英雄の力は完全に消えてしまい、普通の人間に戻って爆弾を壊せなくなるわ」

 上辺だけ隠す、という作戦は実行不可能。そう簡単にはいかないか。

「これがバッテンなら、破壊は無理だ。となると、退避になるな」

 全住民と共にワープし、他の惑星に避難する。残念だが、ここを捨てるしかない。

「あ、でも……。全住民ワープも×だな……」
「そうぜよ。中には転移ができん先生だっておるし、ワシの転移魔法は魔法陣の中にいる先生しか移動できんがよね」

 唯一複数人用である彼女の魔法陣は、半径2メートルもない(初代はバカでなぜか大きさが固定されており、絶対に拡大も縮小もできなくなっている)。コレの定員は10人程度で、300秒以内に全員を避難させるのは無理だ。

「にゅむむ、どっちもブブーになっちゃったねー……。どーしよー……」
「んー………………っっっっ! そうだっ、シールドを張る魔法があったじゃん!」

 あれを爆弾から10・1メートルの上下左右に展開すれば、無効化されず周囲に被害は及ばない。これイイよ!

「俺ってやるぅっ! フュルやってくださ――」
「言い忘れてたけど、この爆弾の『爆発』も英雄の力を無効化するのー! 爆風が当たるとシールドは消え、そのまま世界は滅びるんだよーひぎぃ!?

 急にピマ彦が復活しやがったので、今度は全力で股間を蹴り上げ意識を刈り取った。
 ホントマジで、『のうのう』ウザい。無事生還できたら、『遠見』でアジトを見つけて壊滅させてやる。

「んんん……。それもいかんとなると、万事休すぜよ……。師匠、参ったにゃぁ……」
「防御、避難、攻撃ができない。大ピンチだね」

 この三つは行動の起源たるモノなので、これらをやれないなら何もできない。どう、しようか……?

「唯一可能な、英雄の力と武器を使わずに攻撃する。これを活かすしかないでしょうね」

 黙考していたら、シズナが口を動かした。

「従兄くん。これしかないわ」
「うん…………それは、そうなんだけども……。その攻撃は、『攻撃できない』とほぼ同義だ。活かせるかな……?」

 肉体のみの力でパンチ等をするとなると、最も威力があるのは俺。しかし相手は究極奥義クラスしか通用しない爆弾で、どうこうできる代物ではないぞ。

「にゅむむぅ……。つよーい武器さんがあったら、何とかなるかもなのにねー……」
「一応、畑の隅っこに鎌先生があるぜよ。けどあれに、大した切れ味はないがよね」

 農作業用、だもんなぁ。あれでは丸太すら切れない。

「『振る』ではなく『投げる』をしたら、勢いで破壊力が増すんだけども。それだと多分、光速の何百倍もの速さでぶつけないといけないんだよなぁ」
「光速先生の、数百倍ぜよ。それは、英雄の力があっても不可能やにゃぁ」

 本気の彼女達でも、そんな異常な速度は出せない。きっと全次元を探しても、そのような者は存在しないはずだ。

「仮に同じ場所に何度も当てられるなら、ダメージが蓄積してどうにかできるかもしれないわ。ただ英雄の力は、コントロールを補正してはくれないのよね」
「ピッタリ同じ場所ってのは、厳しいにゃぁ。約十メートル先生では無理ぜよ」
「にゅむむー……。にゅむぅ……」
「ソレは俺ならどうにかやれるんだけど、優星は逆にスピードが足りない。いくら連続して当てられても、100キロ前後じゃ意味なしで――ああっ!!

 そうだよ! 俺にはあれがあるじゃないか!

「にゅむ?」「師匠?」「従兄くん?」
「『虹の増速』を使えば、俺でもそれなりの破壊力を出せる! あれは『自分の行動を10倍にする英雄の力』だから、鎌に英雄の力は関与しないんだよ!」

 まさに灯台下暗し。今日の優星、冴えてるぜっ。

「高知はプロ野球のキャンプが多く来てて、その影響で少年野球をしてた時期があるんだ。先述致しましたように、この距離ならやれるんですよ」
「おおっ、天才ぜよ師匠っ。さささっ、やってつかぁさい!」
「おう。やってみるわっ!」

 フュルが持ってきてくれた鎌を受け取り、爆弾から10・1メートルほどの地点で屹立。俺は、厳かに究極奥義を発動させた。

「みんなの命は、守る。必ずや成功させるから、レミア、フュル、シズナ…………見ていてくれ」
「にゅむむっ。ここで見てますー」
「師匠、期待させて頂くぜよ! カッコえいとこ見せてやっ!」
「従兄くん、応援してるわ。私達を救ってね」
「おうよ! 任せとけ!!

 俺は大仰に頷き、深呼吸。充分に空気を入れ換えてから大きく振りかぶり、全力で得物を投げた!

「一投目っ。いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!

 銀色に輝く刃物は超高速で回転して宙を突き進み、ほんの一瞬で肉薄。俺達の希望を乗せた刃は、時速1000キロオーバーで巨大な爆発物に当たって――


 バチン
 鎌は軽快に跳ね返り、ポトリと地面に落ちた。


 悲報。何千回同じ場所に当てても、ダメージは蓄積してくれないもよう。
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登場人物紹介

色紙優星 16歳の少年


高知県生まれの主人公。

リリウという神様の聞き間違えで魔王使いになってしまい、おまけに『究極奥義』と呼ばれる力を何個も持ってしまった高校生。優しく他人想いなのだが、彼はとあるセンスが全くないのであった……。

黒真レミア 16歳の少女


魔王、でありながら伝説の勇者の能力を持つ。冷徹でクールな容姿と声音を持つ美少女だが、性格はほわほわでお子ちゃま。『にゅむ』という独特な言葉を多用し、時にはにゅむのみで会話を行おうとする。例「にゅむーむ。にゅむ。にゅむりん」。

なお愛用の武器である聖剣は魔王の天敵であるため、使うと痺れる。

金堂フュル 16歳の少女


伝説の勇者、でありながら伝説の魔法使いの能力を持つ。元気一杯の猫っぽい女の子で、高知県の英雄・坂本竜馬の大ファン。そのせいで『ぜよ』と中途半端に覚えた土佐弁を使い、主人公のことは『師匠』、仲間のことは名前のあとに『先生』とつけて呼ぶ(例えばレミアの場合はレミア先生)。

なかなかにおバカな女の子。

虹橋シズナ 17歳の少女


伝説の魔法使い、でありながら魔王の能力を持つ。大和撫子然とした容姿を持つ美少女であり、主人公の義理の従妹。

重度の怒られ好き。

とにかく変で厄介で面倒くさい人。

茶操ユニ 18歳の少女


伝説のドールマスター、でありながら伝説のプリーストの能力を持つ。キグルミ族という一族の人間で、閉園したテーマパークのキャラクター・二足歩行ウサギの着ぐるみを着ている。口癖は、ミョン。

実はお笑いにうるさく、親戚は某有名人。

プリースト神 年齢不明


茶操ユニが持つプリーストの杖に宿る、プリーストの神様。

実は……。

橙式エイリ 14歳の少女


伝説のモンスターテイマー、でありながら伝説の召喚士の能力を持つ。所謂スケバン然とした容姿と声を持つが、グループ最年少の中学生でみんなの妹的存在。でもレミアやフュルよりずっとまともで、ヤツらの方が妹的存在な気がする。

野菜が大好きで、とても詳しい。

タンザ・クー 年齢不明


橙式エイリの召喚獣で、俳句世界(はいくわーるど)の王女。

タンザが姓で、クーが名。

二万年後に、地球の傍に誕生する世界からやって来た。


色紙育月 16歳の少女


高知県大豊町在住の、優星の従妹。中学卒業と同時に本格的にピーマンの生産を始め、今ではテレビの取材を受けるほどになっている。


薄幸の美少女然とした容姿と、従兄想いの優しい性格が自慢の従妹です! by色紙優星

謎の声 年齢不明


優星にだけ聞こえる、不思議な声。

なぜか正体を明かそうとしない。

リリウ 神様


願いを聞き間違えて、優星を魔王使いにしてしまった神様。

神様の世界で流行しているゲームに夢中で、神様のお仕事はほとんどしない。

とってもダメな、神様(?)な神様。

麗平活美 16歳の少女


ストロベリーブロンドのドリルヘアーが特徴の、優星のクラスメイト。

お嬢様然とした容姿で気品があるように見えるが、非常に活発。実は……。

空霧雲海 16歳の少年


頼れる兄貴系の容姿と性格を持つ優星の同級生であり、悪友であり、重度のオタク。

作中に登場する名曲(迷曲)を作った人。

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