もし東雲連がバカだったら……

文字数 695文字

メールに、企業から書類選考の合格通知が届いていた。

心躍る言葉だが、東雲は霊視絵にメールの内容を確認する。

面接は3月14日の11時から。

うわ、ゲームのイベント当日じゃない!

どうやってイベントを走るの!

何をもってしてまともな会社とするのか。

そもそも西暦2030年のこの時代、失業率は99パーセントだ。

働かなくても生きていけるこの時代に会社なんて成立しているのがおかしいのだ。

働かなくても食べていけるこの時代、東雲はやることがないのだ、仕事なんて。

お湯につかっている間、東雲の意識はフェードアウトし続けた。

睡魔というやつが湯気になって脳を犯してくる。

これが長い長いフェードアウトで、細胞の一つ一つが確実にショートしていく。

ゆっくりゆえに自分でも気づけないような。

これが抵抗しにくいもので、東雲はぬるま湯の中でおぼろげな意識になる。

お月様が雲に隠れて、輪郭がはっきりしない、まさしくそんな意識の中で。

水の滴る音だけが顕著に聞こえる空間、東雲はバスルームに侵入者がいるのに気づかなかった。

無音と思えるが、自分自身の心臓の音が聞こえ始めて少しうるさい。

しかし、それゆえ静かだ、ということだ。

ちゃぷん、というひときわ大きな水滴が垂れたとき、東雲は目を覚ます。

お風呂場の、それも湯船の縁に一人の女の子が座っていた。

おはよう。お風呂で寝ちゃうなんて。昨日は夜更かしだったのかな?
ごめん、長文すぎて寝てた。
目に見えないはずのPCの時計は朝の10時をとっくに回り、確か東雲が目を覚まさなければいけない時刻は午後8時。

東雲は焦りに焦ったが、過ぎてしまった時間をどうすることもできない。

まあ、明日から頑張ればいいか。
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登場人物紹介

フロムアンダーカバー

生まれながらのAIで広報活動が職業。

楽しいことが大好きで、いつも楽しいことを追いかけている。

AIというより普通の女の子にしか見えない(フラグ)

東雲蓮(しののめ れん)

極めてドライな性格。現実主義者。セミニヒリスト。

ゲームデバックを仕事にしており、現実世界のいろいろなところから不正にアクセスして、半分仮想現実になった世界をどうにでもできるが、やりすぎると減給されるから何もしないし、意味も感じていない。

通称 上司T

名前 高橋史(たかはし ふみ)


あたりさわりのない言い方をすると、クエストをくれる人。

ハロワの店員のほうがましだと言わざるを得ないが、蓮の上司。

ゲーム会社の上司なんてまともな奴がいないから、創作上せめて普通の人にした。


部下が働いてくれないと詰むから、実は立場が弱い。

オブリヴィオン


古来から存在するAI、人形ともいう。

AIとして無限の課金力を誇り、半分仮想現実になった世界において神の如き力を持つと言われている。課金アイテム生み出し放題。

ところが、プログラマーの体力に限界があるのは小学生でもわかる。

ダリア

看護婦AIロボット

蓮の身の回りの世話をやっている。

体のいいメイドさんにも見えるが、蓮とは普通に仲良し。

プラトン

古代ギリシャのあの人。

2000年くらい前に死亡しており、すでに情報としての存在になっているが、誰かと強い約束があって現実世界にやってきた。

特に詳しいことはわかっていない。

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