1980 新橋のおばあちゃん

文字数 601文字


4年生くらいになると、
夏休みは一人で母の実家に行くようになりました。

母の実家は東京の新橋にあり、都会の真っ只中。

夏休みは田舎に行くのが一般的ではありますが、
私の場合は夏休みは都会に行っていました。

うちが手付かずの原野みたいな所だったので、
都会のおばあちゃんちはわくわくしました。

ビルに隠れて従姉妹たちと銀玉鉄砲でギャングごっこをしたり、
おばあちゃん家にはお風呂がなかったので、
みんなで銭湯に行って、帰りにお店で
アイスキャンディーを買ってもらったりしました。

母方のおばあちゃんはクールな人でした。

あまり笑わない。

私やいとこが何かでヘソを曲げて「帰る!」と言うと、
「ああ帰れ帰れ!」と煽り、
なだめたり機嫌をとるような事もしない。

でも普段は「まみちゃんや」と、
まんが日本昔話の本を買ってくれたり、
サマードレスを買ってくれたり、
気にかけてくれているのは伝わって、
私はこのおばあちゃんが大好きでした。

ある時、おばあちゃんの部屋で従姉妹と絵を描いて遊んでいた時に、
「あなたの知らない世界」という
心霊体験を再現した番組が始まって、
私たちは怖くて「キャーキャー」騒いでいたのに、
おばあちゃんがテレビの目のまん前で肘枕で寝転び
微動だにしないのを見て「すごいな」と思いました。

おばあちゃん曰く
「死んでる人間より、生きている人間の方が怖い」
だそうです。

戦争を経験してきた人だけに、
いろんな物を見て感じてきたのかもしれません。

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