第72話

文字数 2,876文字


源三郎江戸日記(弟二部)72

去年は江戸では地震が多かったし、浅間山も噴火しておる、関八州の北側は、今年は不作になるだろう、益々この水路と街道が、江戸の胃袋を満たす重要な物資運搬路となるじあろう、
と言うと、徳衛門が水路が完成してよう御座いました、そうでなければ、下総も飢饉に見舞われるところでしたな、印西は5000石の新田開発も終わり今年は3万5000石の作付けが出来、
ます、

潅漑の為の水路も整備できましたので、稲穂も順調に育つ事でしょうと言うので、後は作付けの日がもっとも重要じあ、その日によって台風に遭遇したり、稲穂の実入りが遅れたりと、
色々あるからのう、徳衛門、過去10年間の作付けの日程を調べてくれ、特に5年前と7年前の飢饉の時の記録じあ、おそらく、その歳は台風が早めに来ているはずじあと言うと、熊吉が、
いつも同じではと言うので、

いや海の温度は一定ではないのだ台風は遠くルソンの沖で海の温度が上昇して蒸発して雲が出来て、それが発達すると台風になり海の水の蒸発を吸収して空気の圧力の低い方向へ移動、
して行く、夏になるとこの国の東側の空気の圧力は高くなるので海から内陸に風が吹くようになるのじあ、これが露が過ぎると台風が発生してこの国に向かうようになるが、東側の、
空気の圧力に跳ね返されて、

殆どが中国や薩摩、日向から朝鮮半島に抜けて関東には来ないが、東側の空気の圧力が弱い年には九州沖を通り四国へ上陸するかさらに北上して関東にやってくる訳なのじあ、よつて、
作付けの日が大事なのじあよ、稲穂に実が入り日光が降り注げば身が大きくなる、そこで水田の水を抜き暫く立って刈り取るわけじあが、この間に台風が上陸するか近づくと稲穂が、
倒れ、

飢饉となる、叉台風も近づかず雨もふらないと、水不足になり稲穂は枯れてしまう、潅漑施設が重要なのはこの水不足を解消する為でもあるのじあ、過去を調べれば一番良い作付けの、
日がわかるわけじあな、これは百姓が長年の経験から割り出しているのじあろうが、もう少し精度を上げる必要があると話すと、徳衛門がまことにそうですな、調べてみます、叉領民、
の中から、

経験豊かな者を集めて話し合いをさせましをうと言ったのです、最初の台風が起こってそれが何処に行くかがわかれば良いのじあが、遠いルソン、中国の事なので江戸にわかるのは、
九州に近づいてからしか分からんからのうと言ったのです、番頭がそれでは高鍋では近づけばわかるはずです、その模様を詳しく船で江戸か銚子に伝えてもらえばよいのではという
ので、

そうじあな、お前から七衛門に言うて、その連絡網を整備するようにしてくれ、その様子を経験ある者に伝えて、作付けの日を割り出してもらえばよいな、良いところに気がついたと、
いうと、船が早ければ迅速に様子が分かりますねと喜んだのです、熊吉がなる程あっし達はなんでも経験に頼りますが、それを記録に残す事はしておりやせん、残せばもっと良い方法、
があるわけですねと言ったのです、

わしが持っている一刀流の目録は、まさにそういう事じあよ、剣の修行をして流派を編み出すのじあが、何十年の経験と修行が必要じあ、それを総ての者がやるとなると、達人は総て、
死ぬ間際の老人と言う事になる、そこで虎の巻すなわち目録を作り、効率よい修行をして早く極意を覚えるようにするのじあ、過去の経験の記録からそれを真似て修練すれば早く上達、
するわけじあな、

百姓仕事も人足仕事も同じなのじあよ、熊吉は干拓の虎の巻を作り師匠となり弟子に教える干拓道場を開いてはどうだ、目録を貰ったものが全国に散らばり、干拓すればこの国の田畑、
は倍に増えるであろう、入門者からは指南料をとれば儲かるぞ、富蔵は弟子10人を連れて小頭としてあちこちの普請をやっているじあろうと言うと、干拓道場ですかこれは良いですね、
これで、

叉新しい事業が出来ますと喜んだのです、ともかくこの陣屋町が繁盛して、なによりじあなと再び杯を傾けたのです、居酒屋を出て辰五郎の家に行くと、お出でになると聞いていました、
迎えにでず申し訳御座いませんと言うので、役目が大事じあ気にするなと言って、奥にと言うので、ここで良い、火事は起きているのかと聞くと、時々おきやすが早いうちに消しとめて、
います、

用水桶の傍には必ず井戸が掘ってありやす、通常は町衆が使う生活の水になっていますが、これが消火用のみずになっています、沢山作りましたので気がついた者が直ぐに消せるように、
なっています、道幅も広くとってありますので、延焼はしにくくなっています、井戸堀の費用は代官様が全部出してくださいましたと言うので、そうか、中々の用心じあなと言うと、
便利屋も繁盛しています、

喧嘩の仲裁、ドブ掃除、草刈、病人の世話など沢山あるのですよ、町衆には感謝されており、配下にも十分の給金が払えます、良い事をすると気持いいですねと笑うので、かみさんも、
はやくみつけろよと言うと、ハイと言ったのです、それでは頑張ってくれと家を出て女郎屋に行くと、おいでなさりませと女将が言うので、景気はどうだと聞くと、ハイ、お陰様で、
繁盛しておりますと言うので、

博打場に飛猿が来ておるだろうと言うと、ハイ、昨日きました、ご家老の護衛だとかでと言うので、才蔵はと聞くと、一緒にきましたが才蔵さんは見回りにと言って何処かに行きました、
よと言ったのです、博打ばに案内してもらい見ると飛猿が頭を下げるので相槌を打ち、2分銀を木札に変えると、飛猿の隣に座り、儲かっているかと聞くと、ハイ、今の処4朱儲かって、
おりますと言うので、

才蔵はと聞くと、ハイ、今日は佐倉の城下です、昨日はわたしが佐倉を探索してましたと言うので、佐倉で幾ら儲かったのだと聞くと、ハイ5両です、イカサマはやっちゃおりません、
と笑ったのです、次の目はと言うと、飛猿が半に4朱かけたので、源三郎が丁に4朱かけたのです、壷を開けると丁です、残念だったなと言って、次はと聞くとご家老からと言うので、
半に8朱かけると、

飛猿も半8朱掛けたのです、壷を開けると半です、若衆が打ち止めですというので木札を変えると1両と6朱で、飛猿も1両と6朱です、それでは女郎でも買うかと言って博打場を出ると、
女将がまた儲かったんですかと聞くので、部屋に案内してくれと言うと、ハイ、と言って、別々の部屋に案内したのです、女将が入ってきて、私めがお相手しますが、若い娘が宜しい、
ですかと聞くので、

女将も出るのかと聞くと、それは女ですもの、この商売をしていた女子は体が火照るのですよと言うので、職業病と言うわけかと言うと、ハイと言うので、ならば女将と一合戦と行こ、
うと言うと、それではと酌をするので飲み干し杯を渡して酌をすると飲み干して、美味しいと言うので引き寄せて唇を重ねると、ふりほどこうとするので乳房を揉むと、あ~と声を、
出したので、

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