第2話

文字数 1,532文字

メアリーの姉を探すための手がかりを掴むため、クリスティーンはメアリーを家に迎え入れ、話を聞くことにした。
メイドのステラさんに案内されてメアリーは席に着く。
カップを用意されて暖かいアッサムティーがポットから注がれると、メアリーはそこに大量の角砂糖を入れ始めた。
『これが文化の違いか・・・』
とクリスティーンは内心そう思った。

気を取り戻し、クリスティーンはメアリーに彼女の姉との思い出を聞き出した。
「お姉さんの居場所の手がかりを掴みたいのだけど、お姉さんとよく行った場所とかお姉さんが好きだった場所とか何か思い当たるところない?」
「そうね。。。お姉ちゃんとの記憶としては、お姉ちゃんはハリーポッターが大好きで、ハリーポッターのロケ地によく旅行に行っていたわ。オックスフォードとかロンドンとか、あとアイルランドにも時々旅行していたかも。あと、私の記憶では家族でエディンバラ城やオールドタウンによく行ったわ。なぜなら、よくお姉ちゃんが『行こう』って提案していたから」
「なるほど・・・あとお姉さんがなりたかった職業とか女優さんとか何かわかることはない?」
「うーん、そうね・・・お姉ちゃんは、ハリーポッターに出てくる女優さんではチョウ・チャン役のケイティ・リューングが好きだったはず。あとは、なりたかった職業は、確かキャビンアテンダントだったはず。よく飛行機に乗りたいって言っていたわ」
「お姉さんは海外に強い人だったんですか?」
「うーん・・・そうね、ロサンゼルスによく『住みたい!』って言っていたわ」
「離婚前にお姉さんが住んでいたところは?」
「クラモンドよ。全然、賑やかではなく、のどかな場所だったわ」
「なるほど・・・では、お姉さんが住んでいた家は周りにたくさん家があった?」
「うーん、そんなになかったけど、お姉ちゃんの家に泊まりに行った時は、お姉ちゃん、道ゆく人によく挨拶していたから、割と親交はあったはず・・・」
「メアリーさんがお姉さんを探しに行った時は、そのクラモンドで親交があった人に話を聞いた?」
「いいえ、お姉ちゃんの別れた旦那さんとしか話してないから分からなくて・・・」
「その前の旦那さんとはどんな話を?」
「お姉ちゃんとどうして別れたのかとお姉ちゃんが今どこにいるか知っているかを聞いたわ」
「そしたら、なんて?」
「どちらも分からないって言っていたわ・・・ある日、突然置き手紙が残されていたって・・・」
「ええと・・・ということはまだ正式に離婚もしていないのかしら?」
その瞬間、ピタッとメアリーのあらゆる身体動作が止まった。
少しの沈黙を置いたのち、上を向いたり、下を向いたりしてみせた。
そして口を開いた。
「私もパニックだったのかしら。そこまで聞いてなかったわ。お母さんとお父さんの話では離婚したそうだということだったけど、よく考えてみたら、置き手紙を残して音信不通ってことは、まだ離婚も成立していないのかもね」
「なるほど・・・」
クリスティーンは手をアゴに置いた。
そして首を傾げてみて、少し沈黙するのだった。
沈黙を置いた後、クリスティーンは口を開いた。
「メアリーさん、少しバツも悪いかもしれないけど、もう一度その旦那さんと話せたりできるかしら?」
メアリーは首を縦に振った。
「ちょっと気が重いけど、お姉ちゃんを見つけるためですもの!」
「じゃあ、決まりね!」
と勢いよくクリスティーンが立ち上がると背後に気配を感じた。
それは、クリスティーンの母だった。
クリスティーンが話に夢中になる中、いつの間にか帰宅していたクリスティーンの母は車のキーを指で回している。
『この母親は、全くもう・・・』
いつも派手な演出をする母に呆れつつも、クリスティーンは静かに母親に向かってうなづいて見せた。
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