私は彼女を抱きしめお礼を伝えた

文字数 514文字

シンフォニーオブライツが始まった。

プロムナードには観光客が多かった。

私達はしばらく無言で見ていたが、そのうちお互いが近づき、手が触れた。
そして手を繋いだ。

ショーは10分ほどで終わったが、ポツポツと雨が降り始めかと思うと、一気にザァーっと降ってきた。

私達はインターコンチネンタルホテルのラウンジに逃げ込んだ。

大きなガラス張りのラウンジからは、ビル群の素晴らしい夜景が見えた。

私はビール、彼女はカクテルを頼んだ。

2時間ほど、酒を飲みながら話した。

明日は私の帰国日だった。

彼女は私の隣に座り、体を寄せた。

そののち私はフロントへ行き、空いている部屋はないかと尋ねた。

私達はそのまま一夜を共に過ごした。


香港国際空港までは市街からは若干遠い為、私は見送りはしなくていいと断ったのだが、彼女はかまわないからと、空港まで来てくれた。

カウンターでチェックインをした後、カフェでコーヒーを飲んだ。

「そろそろ搭乗時間だ。」

私達は手荷物検査場の前まで来た。

お互いにこの出会いは続くものではないことはわかっていた。

連絡先も交換することもなかった。

私は彼女を抱きしめお礼を伝えた。

そして悲しい顔を見せまいと、急いで後ろを向き、手荷物検査場へと入って行った。
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