ウォルテア大森林再び(頭脳戦)

文字数 3,009文字

 俺達は神獣フラミーに乗ってあっという間にウォルテア大森林の出口にまでたどり着くことができた。

「あっという間だったな」・・・アレス

「もっと乗っていたかったです」・・・レオノーレ

「距離が距離だ。俺達にとっては長い距離でも神獣フラミーに乗って飛べば、すぐだ。速さが異なる。次の機会がもしあればもっと乗っていられるだろう」・・・アレス

「その時は必ず呼んでください」・・・レオノーレ

「もちろん」・・・アレス

「ウォルテア大森林の出口に戻って来て思い出した。他のパーティが俺達のパーティの『アカシアハーブ』を狙っているかもしれないが、どのように対処するんだ?」・・・オズワルト

「レオノーレの案だが、恐らくそういう輩はウォルテア大森林を出ず、草原やアルスター山を行ってないと思われる。そこで俺達はワザと(・・・)草原やアルスター山の情報を隠して(・・・)相手と情報をやりとりするつもりでいる」・・・アレス

「確かに。だが、相手も馬鹿ではあるまい。嘘をついて、巧妙に不利な情報を隠そうとするだろう。どう対処する?」・・・オズワルト

「一番重要なのは俺達を襲うつもりがあるのか。ないなら放置すればいい」・・・アレス

「悪をむざむざと放置するのですか?」・・・レオノーレ

「全ての悪を俺達で解決するのは、無念だが不可能だ。」・・・アレス

「まぁ、きりがない」・・・オズワルト

「だけど、気分が悪い上に許せないです」・・・レオノーレ

「まぁ、そこは人による。だけど、俺達に降りかかる火の粉は払わねばならない」・・・アレス

「当然だ」・・・オズワルト

「相手とのやりとりで、俺達を襲う可能性があると判断したら、合図を出す。その時は戦う覚悟を決めてくれ」・・・アレス

「分かった」・・・オズワルト

「分かりました。なるべく穏便に済むといいですね」・・・レオノーレ

「相手によるだろう」・・・アレス

 ◇
 ◇

 俺達はウォルテア大森林の出口から再びウォルテア大森林の真ん中(ゴール)に向けて歩き出す。時刻は太陽が沈もうとした頃になっていた。

「やっぱり中は暗いな」・・・オズワルト

「もうじき陽が沈む。もっと暗くなるだろう。」・・・アレス

「私は森で生活していましたから暗い中でも視えます」・・・レオノーレ

「それは助かる。遠くから狙われていないか確認を頼む」・・・アレス

「分かりました」・・・レオノーレ

 ◆

 程なくして、他の帰りらしきパーティと遭遇する。

「アレスも無事に帰れたのか」

「なんとかな」・・・アレス

「大変だったろ」

「凄く大変だった」・・・アレス

「特に草原が大変だったよな。肉食動物がやばかった。」

「危うく、食べられる所だった」・・・アレス

「だよな」

「俺達は草食動物の群れに隠れてなんとか草原を逃れることができた。そっちはどうやって乗り越えたんだ?」・・・アレス

「俺達も同じようにして乗り越えたよ」

(怪しいが、まだ分からない。踏み込んだ質問するか)

「俺達はその後のアルスター山でも苦労した。モンスターだらけだった」・・・アレス

「そうそう」

(相手に適当に合わせる話術か。()だな。アルスター山にモンスターはいないはず。だがまだ俺達を襲うとは判断できない)

 俺はまだ(・・)後ろにいる仲間に合図を出さなかった。

(軽く威圧するか)

「おかげで凄くレベルアップして強くなった。今なら誰にも負けない」・・・アレス

「そうそう。俺達もお陰で強くなれたよ。では俺達は向こうの道へ行くから。じゃあな」

 俺達はこのパーティと別れる。

「今のパーティは知り合いか?」・・・オズワルト

「知人以下だな」・・・アレス

「何を話していた?」・・・オズワルト

「この課外授業についてだ。今のやつらは黒だった」・・・アレス

「マジか。なぜ合図しなかった」・・・オズワルト

「威圧したのが功を奏したのか、もしくは襲うつもりまでは行かなかったからだ」

「でも、黒のやつらがいてビックリする」・・・オズワルト

「他人を騙したり、襲うくらいなら失格になってウォルテア大森林のスタート地点で休んでいればいいのに」・・・レオノーレ

「成績が大きく掛かっているからな。皆が必死だ」・・・アレス

 ◆

 また程なくして俺達は、さっきとは違うパーティに遭遇する。

「アレスか。まだ失格になっていなかったのか」

「そちらの希望に反してまだなっていない」・・・アレス

「よく生き残れたものだな」

「辛うじてな」・・・アレス

「俺達の帰りを襲うつもりか?やめといた方がいいぞ」

「そんなつもりはない。帰って来たって言ってるだろ」・・・アレス

「アルスター山は大変だったよな?」

(本当はそう(・・)だけど、他の奴らに天翔ける道、風の回廊は視えていないらしいから、この質問は誘導質問で、俺達を試しているのだろう。俺達と同じことを考えていたか)

「全然大変じゃなかった。お前らは大変だったのか?」・・・アレス

「ちっ。引っかからなかったか。どうやら本当に帰って来たようだ」

「お前はこの学園にふさわしくない。さっさと失格になっていればいいものを」

「それはできない相談だ」・・・アレス

 俺達は別々の道に別れる。俺達は先を進む

「今のパーティとは何を話していた?どうなんだ?」・・・オズワルト

「軽く世間話をしていた。今の奴らはムカつくだけで白だ」・・・アレス

 ◆

 俺達は更に先を進む。そして本日3組目のパーティと遭遇する。

「アレスたちも帰って来たのか」

「ああ。今になってようやくだ」・・・アレス

「大変だったよな。この課外授業。」

「凄く大変だった」・・・アレス

「草原とか特にさ」

「ああ。肉食動物に食べられるかと思った」・・・アレス

「アルスター山のモンスターもわんさかいてさ」

()か。だがこれだけでは分からない。話を合わせておいて真意を探るか)

「そうそう」・・・アレス

「俺達はアルスター山に出てくるモンスターが特に大変で逃げてばかりだった」・・・アレス

「俺達も逃げてばかりだったよ」

 すると、不思議なことに俺達と並走(へいそう)していたはずがこのパーティは俺達のパーティの並びの方向(前衛アレス、中衛レオノーレ、後衛オズワルト)とは真逆の方向(・・・・・)に向かって歩き出す。

「どこに行くんだ?」・・・アレス

「悪い。ちょっと、落とし物探してくる」

(完全に()だな。俺達の後方から襲撃するつもりか。)

 俺は中衛のレオノーレと後衛のオズワルトに合図をすぐに出す。

(マジか)・・・オズワルト

(本当なの?)・・・レオノーレ

 俺を含め、3人は戦闘準備に入る。

「待て。『アカシアハーブ』はやらんぞ」・・・アレス

「………っ。何を言っている」

「お前らはこれから俺達を後方から襲撃するつもりだったんだろ?」・・・アレス

「………。言っている意味が分からない。俺達は落とし物探してくるだけだ。」

「なんの落とし物だ?」・・・アレス

「お前()には関係のないものだよ」

「お前()か。えらく敵対的だな。俺達に勝ったら、『アカシアハーブ』はやるよ」・・・アレス

「ふん。どうやら何かでバレたか。まさかお前たちがあの危険な草原を抜けて帰ってくるとはな。『アカシアハーブ』は頂こう。」


 ピィッピィーーーーー。


 このパーティはホイッスルか何かを吹く

「いったい何をした?」・・・アレス

「仲間を呼んだ」

「もうお前たちは逃げられない。『アカシアハーブ』を大人しく渡せ。これが最後の警告だ」

「やる訳にはいかないな」・・・アレス

「ならば力ずくで奪うまでだ」


 ■

 こうして俺達は思わぬ戦いを始めることになった。

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

アレス


男子学生で本編の主人公


前衛で剣を扱う戦士


は選抜の特別任務を遂行できるほどの才能限界値を有していた。


とある事件を契機に世間平均では7あると云われている才能限界値5にまで落ち込んでいる。

オズワルト


男子学生で見た目は長身で顔立ちが整っている


性格も気配りの出来る男で人望が厚い。優秀な後衛の魔法使い

レオノーレ


エルフ女子学生で人間との意思疎通得意でない。見た目はアレス曰く、可愛いらしい

森で育ったこともあり、夜眼利くを扱うのが得意。前衛も後衛もカバーできる中衛の狩人で弓使い。

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み