第5話

文字数 15,300文字



夢喰いバク
生者のハゲタカ 


    人生が死より恐ろしいところでは、あえて生きることが最後たる真の勇気である。   

トーマス・ブラウン







































































      第五品 【 生者のハゲタカ 】









































  「暇だなー」

  広い病院の一角、個室で独り事を言っている少年、奥寺真人。

  まだ十代の幼い顔立ちをしているが、その表情からは活気が感じられず、ぼーっと窓の外から雲ひとつない空を見ていた。

  母親は仕事に行ったため、一人で何をすることもなく一日を過ごす毎日。

  雑誌でも買ってこようかとベッドを下りてスリッパを履いた。病室を出て辺りを見渡すが、見舞いに来ている人達もまばらだ。

  病院の一階にある小さな売店に行き、小銭を握りながら何かないかとウロウロしていた。

  自分と同じくらいの歳の子が読むような雑誌には興味がなく、メジャーではない作家の書いた本を手に取ってレジに向かう。

  病室に戻って本を開くと、時間も忘れて読み耽る。

  正直、自分がなんで入院をしているのか分からない。何の病気なのかも分からない。いつまで入院していればいいのかも分からない。

  以前、先生や看護師に聞いたことがあるが、真人が求めている解答は得られなかった。

  自分はきっとこのベッドで誰に看取られることもなく死ぬ。

  そんなことを思って次のページを捲ると、病室をコンコンと叩く音がし、返事をしなくてもその人物は入ってきた。

  「真人くん。今日も検査をするから」

  「はい」

  カルテらしきものを持って入ってきた先生に返事をし、読み途中の本の間にしおりを挟んでベッド横の棚の上に置く。

  何の検査をしているのか知らないが、ほぼ毎日のように同じ検査を繰り返している。

  「じゃあ、また明日」

  「はい」

  明日も同じ検査をするのかと思いながら検査室を出た。

  自分がどちらから来たかを確かめていると、検査室の中から先生たちの話声がボソボソと聞こえてきた。

  「やっぱり、原因不明か・・・」

  「専門家に聞いても同じ答えで・・・」

  やはり自分は死ぬのか。

  悔しくも悲しくもない真人は、とりあえず歩き出すことにした。

  今日も別のルートで自分の部屋に戻ろうと、わざと遠回りをすべく、病院内の地図を見ながら道を探す。

  霊安室や子供の多い場所は避けて歩いていると、ある個室からおかしな男が現れた。

  「おや、君・・・」

  「?何ですか?」

  真人を見ているというよりは、真人の周りの何かを見ているその男に、真人は不審者を見る様な視線を送る。

  ふと、男の手には真っ赤なリンゴが一つ鷲掴みわれていた。

  さらに不思議なことに、男が出てきた部屋にはプレートがなかった。つまり、この部屋には誰もいないということだ。

  何をしに来たのか、まさか本当に不審者かと思っていると、男は口角をあげた。

  「いや、失敬。人違いだったようだ」

  そう言うと、男は持っていたリンゴを丸かじりしながら真人の前を去った。

  何だったのだろうと思いつつ自分の病室に着いた真人は、途中だった本を開いて再び読みだした。

  本には何度も「死神」という言葉が出てきた。

  マンガなどでは格好いいキャラクターで出てくることもある死神だが、実際にはそんなもの存在しないと真人は思っていた。

  だが、ストーリーとしてはとても面白かったようで、午後三時ごろには一冊読みきってしまった。

  昼寝でもしようと、まだ明るい空に背を向けて頭まで毛布を被った。







  真人は、ビルの屋上に立っていた。

  何処にある何のビルかまでは分からないが、何処かに建っている何かしらに使うビルなのだろう。

  ビュウゥゥ、と強い風が吹く中、真人はフェンスの前に立って地面を眺めていた。

  「自殺は嫌だな」

  そう思って今いる場所から離れようと思い振り返ると、知らない人達が真人に向かって走ってきていた。

  逃げ場所はない。逃げている理由も分からない。でもなぜか逃げたい。

  思い切ってフェンスを乗り越え、地面に叩きつけられるのを覚悟していたが、その衝撃は来なかった。

  その代わり、また別の場所に立っていた。

  サラリーマンやOL、老若男女が行き交う交差点の真ん中に真人はいた。

  「なに?」

  急にどこからか叫び声が聞こえてきたため、真人は声のする方を見てみた。

  ナイフを持った黒い影があり、そのまま真人に向かって突っ込んできた。

  まさか殺されるなんて思っていなかった真人は、特に抵抗もせずにいると、ナイフを持った黒い影は真人の前で消えた。

  何が起こったのかと考えていると、いきなり真っ暗闇に吸い込まれた。

  宙にフヨフヨと浮いている真人は、ゆっくりと目を閉じた。

  脳はきっと夢から覚めているのだろうが、なぜか真人の身体はピクリとも動かず、目も開く事が出来なかった。

  耳元では誰かの声が聞こえてくる。

  ―母さん?

  「先生!真人は!?真人は大丈夫なんですか!!?」

  「お母さん、落ち着いてください。心拍・脈拍ともに正常です」

  「でも起きないじゃないですか!?」

  自分の母親の切羽詰まった話声と、先生の冷静な声の二つが聞こえてくるが、それに対して返事も出来なかった。

  「あ、先生。真人くんの指が」

  意識して動かしたわけではなく、筋肉が反射的に反応したのだろうが、それを看護師は見逃さなかった。

  自分では起きている感覚だが、身体が言う事を聞いてくれない。

  ―母さん。まだ生きてるよ







  「やれやれ。まさかお前みたいな奴とこんなところで会う羽目になるとはな。この少年はもうじき死ぬということか・・・。まあ、人間の一人が死のうがどうしようが別にかまわないが、折角見つけた極上の御馳走を持っていかれるのは迷惑だ」

  「・・・・・・」

  「何とか言えっての。それとも、喋れねえのか?」

  相手を子馬鹿にしたように話す灰色の髪の毛を揺らしている男、バクの前には、大きな弓形の鎌を持ったもう一人の男が立っていた。

  この男も真っ黒な格好をしており、フードを深深と顔を隠しているために顔を確認することは出来ないが、おそらく男。

  真人の夢の中を傍観していたバクの視界に、黒い影が映り込んだ。

  それがどうやらこの男。真人の目が開かないようにしているのも、意識だけは今尚残しているのも、声が出ないのも耳は聞こえるのも、この男の仕業だ。

  「・・・しっかし、不気味なもんだな。お前等“死神”ってやつはよ。あるとき突然現れて、人間どもを死界に連れていく」

  大鎌を持った男は、何も言わずに真人の方をじっと見ている。

  返答もしない相手に、バクは何も考えていないのか、それとも何も言われないのが悔しいのか、一人でベラベラと話し続ける。

  「死神にあったのはこれで四回目だ。一番最初に見たときは、単なる不審者かと思ったがな。全身真っ黒いなんておかしいだろう。いや、俺も黒いがな。それはいいとして、二度目は確か、九〇の老人の夢を見ていたときだ。それにしてもおかしな夢だった。覚えてはいないが、おかしかったのは覚えている。三度目は・・・ああ、違う。今回で三度目だ。それにしても、死神というのはどうして鎌を持っているんだ?それにフードを被っているのはなぜだ?昔聞いた話では、いつかの死神が死にかけた少女を好きになってしまい、少女が死んだときに悲しくて泣いているのを隠す為にフードをしたとか・・・。しかし、隠す必要は無いだろう。死神は泣かないわけじゃない。命が終わるのを告げるのが役目というだけであって、人間に恋してはいけないというルールでもあるなら別だが、無いだろう?なら問題はないはずだ。死神同士になると、フードを被っていても誰が誰か区別出来るのか?それはすごいな。死神の集会とかあったら是非呼んでほしい。どんな光景か一度は見てみたいものだ」

  「・・・・・・」

  「本当に喋らん奴だ」

  夢の中にいるときはほとんど誰とも会わないため、久々に会って嬉しくなったバクだが、死神の男はやはり何も言わない。

  ボウッ、と男の掌に何かが光りはじめた。

  ハートのような、桃を逆向きにしたような形のものを握りしめた男は、それをいきなりギュッと強く掴んだ。

  すると、真人の心拍数が急上昇したあと、今度は逆に下がって行った。

  ピッ、ピッ、と音の間隔が広くなっていくと、真人の母親は勿論、周りにいる先生や看護師までもが真人に声をかけ始めた。

  「それ、まさかとは思うが心臓か?」

  「・・・・・・」

  「気色悪いな。そんなもの持って命を動かしているのか」

  心臓と思われるそのハートの光が消えると、真人の心拍数はまた元通りになった。

  それと同時に真人の目が開き始め、バクの前のスクリーンも一気に真っ暗になる。

  未だ鎌を持ってそこに立っている死神の男を見ていると、ゆっくりとバクの方を振り向き、男が初めて口を開く。

  「こいつは俺が喰う」

  「あ?」

  それだけ言ってどこかに行ってしまった男を睨み、バクは辺りの暗闇に響くように大きく舌打ちをした。

  「馬鹿言うな。俺が喰うんだ」





  目を開くとすでにあたりは暗くなっており、そのためかカーテンは閉められていた。

  隣には先程まで泣き崩れていた母親が安心した面持ちで座っており、真人の好きな食べ物やマンガを持ってきていた。

  ―まるでもうすぐ死ぬみたいじゃないか

  心の中ではそう思っていても、なかなか口に出して言う事は出来なかったが、母親は「また明日も来る」と言って帰って行った。

  母親が病室を出て行ったあと、身体をベッドに預けて電気の消された天井を眺める。

  「変な夢だったな」

  あの黒い影は何だったのか、やはり自分はもう長くはないのだろうか。

  そんなことを考えながら、母親が部屋に置いていった小さなテレビを点けると、好きな俳優の出ているドラマがやっていた。

  楽しい時間を過ごしていると、病室の扉を叩く音が聞こえてきた。

  「こんな時間に?誰だろう」

  すでに時計は夜九時を指していて、先生や看護師が入ってくるときとは異なる空気を感じた。

  なんとなく開けない方がいいとは思いつつ、音を立てないようにスリッパを履いて扉に近づいてみる。

  そっと耳を扉にあててみるが、外からは何も聞こえてこない。

  気のせいだったのかと思いベッドに戻ろうとすると、再びコンコン、と扉が叩かれた。

  「はい・・・・・・」

  弱く小さく返事をしてみると、ゆっくりと扉が開かれ、真人の前には昼間見かけた不審者が立っていた。

  ニコニコと笑いながら真人を見ているためか、真人はなぜかここで殺されるのではないかと思ってしまった。

  一歩一歩後ずさるといつの間にか後ろにはベッドで、真人は力無く腰かけた。

  「貴方は・・・・・・」

  「昼間ぶり、ですかね?僕のこと、覚えていますか?」

  「まあ。僕はこれから殺されるんですか?」

  「・・・はい?」

  男は怪訝そうな表情で真人をじろじろ見ていた。

  一方の真人はもうこの世では無い方向を眺めており、諦めたようにため息を吐き、吸って、またため息を吐いた。

  この子はきっと馬鹿なのか、と憐れむような目になった男に気付かず、真人は男を見る。

  立ち上がったかと思うと点けっぱなしにしてあったテレビを消し、先程まで寝ていたベッドに横になり、天井を見た。

  「なぜ僕が君を殺すのかな?理由もなく人を殺すように見えるのかい?」

  「はい」

  「・・・・・・。違う質問をしようか。君は誰かに殺されるようなことをしたのかい?」

  「いいえ。でも、最近じゃあ理由なんてなくても殺されることもあるでしょう。その類なのかな、と。貴方そういう人に見えたので」

  「失礼なことをサラッと言うんだね」

  つい口が滑って行ってしまった失言に対して怒ることもせず、男は手を口に持っていって小さく笑った。

  その姿に少し安心したのか、真人は男に対して質問をする。

  「貴方は、誰です?なんで僕のところに?昼間は人違いだったって言ってたじゃないですか?」

  寝かせていた上半身を起こして男の方をみると、男はベッドに近づいてきて、真人が寝ているベッドに無遠慮に腰かけた。

  足を組んで片方の腕を乗せ、身体を軽く曲げて真人の方を向く。

  間近でみると、男は違和感のある空気を纏っていて、怖い様な怖くない様な、しかし怖いという感覚に近いものを感じた。

  流暢に日本語を話してはいるが日本人ではないのか、瞳は茶色ではない。

  はっきりと色が分からないのは、多分カラーコンタクトをつけて茶色の瞳になっているためだ。

  だからといって、どこかほかの国の出身というわけでも無さそうな気はするが、じーっと見られているのが気になったのか、男は真人に声をかける。

  「そんなにじっと見ないでもらえるかな」

  「あ、すいません。で、何をしに・・・・・・」

  少し下から男を見るようにすれば、男は顔をグイッと真人に近づけた。

  「実は僕は特殊な力を持っていてね。君の背後に嫌なものが見えたものだから、それを教えに来たというわけさ」

  男の言う特殊な力というのは、もしかして、もしかしなくても世間一般的に言う“超能力”の部類だろうと判断した真人。

  しかし、何分初めて会った時から胡散臭い男に、真人は苦笑いをする。

  そんな真人の表情を正確に読み取ることもなく、男はニコニコと笑う。

  「君の後ろに、死神が見えるんだ」

  「はい?」

  霊とかそういったものではなく“死神”だと言う男。

  もうすでに特殊な能力でさえも超えてしまっているのではないかと思いつつ、嘘をついているようにも見えない男の顔を凝視する。

  新手の詐欺か何かかと思った真人は、とりあえず適当に話を合わせることにした。

  「そうなんですか。じゃあ、あなたが除霊してくれるんですかね」

  「・・・君はもしかして馬鹿なのかな?」

  「え?」

  「僕が見えているのは霊じゃなくて死神だよ?除霊なんて出来るわけないじゃない。死神から逃げたいのなら、君自身の生きたいと思う気持ちが上回ればいいだけだよ」

  お金目的の詐欺で無さそうだ。

  自分の身に起きていることはさておき、詐欺に引っ掛かったわけではないのだと分かると、真人は男に問う。

  「じゃあ、わざわざそれを伝えに来たんですか?」

  「そうだよ?死を身近にした人間はどういう夢を見るんだろうね。君は死を恐れているわけでは無さそうだけど、人間は本能的に死を嫌う。それは眠りにも影響してくる。したがって、君が今日から見る夢は果たしてどんなものか・・・・・・。僕はそれに興味があるだけだよ」

  「はぁ・・・・・・」

  何を言っているんだろう。この男は頭がヤバいのではないか。

  決して口には出さないが、心の中で充分に毒づくと、男はベッドから腰をあげてドアの方向に歩き出した。

  本当にわざわざそのために来たのかと、男の背中を何も言わずに見ていると、病室から出てドアを閉める際、男は少しだけ首を動かした。

  真人の角度からではその表情は分からないが、男はきっと嗤っている。

  スゥッ、と歪曲した口元の線が見えたため、真人はそう感じた。

  「人間の一生は実に短い。しかしそれを嘆くことはない。それは人間にとって一つの美なのだからね。せいぜい短い人生を楽しむと良い」

  静かに閉められたドアを見つめていたが、一息ついてベッドにゆっくり寝そべる。

  「やっぱり死ぬのか」

  ぽつりと自分にしか聞こえないように呟いた言葉は、真人の病室の中に小さく木霊した。

  生きていること自体が不思議で、でも動物も人間もいつかはみんな死んでいく運命にある。

  地球は何億年も生きているというのに、その何億年も生きている中の数秒にしかならないような自分の命は、本当に重要なのか?

  家族が嫌いなわけでもない。育ってきた環境が悪いとも思っていない。それなりに良い人生を送ってきたとは思う。

  でも、満足はしていない。

  それが真人の現在の心境だった。

  男に言われたことを真に受ける、というよりは自分でも薄々そういう立場に立たされているのだろうと分かっていた。

  「もっとやりたいことがあったんだけどな」、と思ってはいても、もうどうにもならないんだろう。

  本当なら、もうじき死ぬのであれば、病室で治療なんかしているよりも、やり残したことを目一杯やりたいものだ。

  一人旅もしたい。貯金を全部つかって買い物もしたい。身体のことなど気にせず、思い切り身体を動かしたい。それから・・・・・・。

  考えながら、真人は寝入ってしまった。







  「・・・・・・。今日は夢見ねぇの?」

  真人の夢の前でじっと待っていたバクだが、真人が寝付いたというのに係わらず、夢の映像はなかなか映らなかった。

  椅子に座り、膝の上にはかごがあった。

  そのかごの中にはいっぱいのリンゴ飴が入っており、すでにリンゴ飴の残骸が数本足下に落ちている。

  ペロッと舐めたリンゴ飴を睨みつけると、目の前のスクリーンにザザザ・・・と砂嵐が表れた。

  その瞬間、バクの表情は一気に曇り、リンゴ飴の飴の部分をガリッ、と噛み砕いた。

  「チッ。あの野郎・・・・・・」

  リンゴ飴の沢山入ったかごを膝から落として立ち上がると、バクは砂嵐の映るスクリーンに背を向けて歩き出した。

  十歩ほど歩いたところでくるりとまた身体を反転させる。

  今尚続いている砂嵐をじっと見つめていると、ほんの一瞬、一瞬に映像が流れているのが見えた。

  大鎌を持ったその姿は、まるで生きている者の首を刈るための道具そのもの。

  気配さえ感じさせないのは、当人もすでにこの世の者では無いからだろうか。

  「邪魔をするな。俺は今食事中だ」

  画面から身体を乗りだしてきた死神は、大鎌を持ったままバクの前に姿を現し、バクが落としたリンゴ飴を踏みつける。

  「俺に喧嘩を売っているのか?」

  相変わらず何も言わない死神に対し、バクは睨みつけたり両腕をあげて喧嘩の体勢になったりしたが、相手にはその気がないらしい。

  なにをするわけでもなく、バクの方をじいっと見ていた。

  頭の中に???を浮かべていると、次第に自分の中の何かの変化に気付き始めた。

  死神がバクに掌を向けてギュウっと握ると、バクは自分の心臓の辺りを掴んで崩れ、立ち膝になった。

  ドッドッ、と早く脈打つ、というか握りつぶされている感覚に陥ったバクは、足下にあったリンゴ飴を死神に向かって投げつけた。

  握りしめていた手を広げると、バクも自分の心臓から手を離した。

  はぁはぁ、と少しだけ息遣いを荒くしているバクだが、強気な口調で言う。

  「全く恐ろしいな、死神というのは。他人の心臓を操れるのか。他人に自分の心臓を掴まれるというのは実に不愉快なもんだ」

  バクの言葉に耳も傾けず、死神は真人の夢の砂嵐の中へと入って行ってしまう。

  砂嵐を見て眉間にシワを寄せながら再び舌打ちをするバク。

  しばらくすると、真人の夢から砂嵐が消え、徐々に真人の夢が見え始めた。

  モノクロだった映像も色付き出し、その中には夢を見ている当人である真人の姿もあった。

  若干だけチクチク痛みの残る心臓を摩りながら、バクは椅子を用意し、床に散らばったリンゴ飴の代わりの新しいリンゴ飴を手に持った。

  楽しんで見ていた真人の夢だが、たまにザッザッ、と画面が乱れる。

  それの原因が死神であることを知っているバクは、大層不愉快そうな表情でずっと夢を見ており、リンゴ飴も全て舐めること無く齧っていた。

  ―なんだろう。浮遊感だ。

  夢の中で、真人は自分の身体に感じる浮遊感と、居心地の悪さに目を開けた。

  自分の身体が多分空から落ちていて、真っ逆さまに地面に向かっていると理解出来るまでに、そう時間はかからなかった。

  このまま死ぬのか、と思っていると、聞き覚えのある声が聞こえてきた。

  「夢の中で死ぬ夢というのはなかなか嫌なものだ」

  「あ。えっと・・・」

  バクの顔を見て名前を思いだそうとしたが、そもそも教えてもらったかさえも思い出せない状態になっていた。

  「死ぬならそれでいいのに。なんで僕を助けようとするんだろう」

  「あ?」

  ボソッと独り事を言ったつもりだった真人だが、隣にいるバクはしっかりとその言葉を聞いていた。

  「僕には未来がない。どうせもうすぐ死ぬんだ。僕は死んでもいいと思ってる。なのに、親は僕を生かそうとする。病院の先生もだ。病院の先生は親に頼まれてるわけだし、お金を貰ってるから仕方ないのかもしれないけど」

  「僻んでるな」

  「死ぬのは怖くないよ。痛いのは嫌だけど」

  「馬鹿を言うな。死んだら夢を見ないだろう。それだと俺が困る」

  「??」

  会話をしている間にも落下し続け、真人とバクが地面に叩きつけられるまで、あと五分あるかないか。

  夢の中だとはしても、地面に叩きつけられた衝撃で真人の弱った心臓が止まらないとも限らない。

  バクは真人を自分の腕の中に入れ、真人の頭と腰に手を置いた。

  「死神というのはつくづく厭らしいことをする」

  「?」

  何についてのことを言っているのか理解は出来なかった真人だが、バクにとって都合の悪いことなのだろうことは分かったようだ。

  地面が見えてくると、バクはあたりをキョロキョロと見渡した。

  そして、ある一点に目を向けたとき、バクは表情を曇らせた。

  何があるのだろうと、真人もバクと同じ方向を見てみると、そこには何やら真黒い大きな影が出来ていた。

  「なにあれ」

  小さな声で言った真人の言葉に、黒い影が徐々に形を成してきた。

  それは自分と同じような形になっていくが、一方で本で見たことのある不気味な雰囲気にも感じ始めた。

  自分の顔を隠すように被ったフードに、手には首どころではなく身体ごと真っ二つに出来そうな大きな鎌。

  そんなもの存在しないと思ってきたもの。

  夢から覚めた時にその言葉を口にしたら、きっと誰もが嗤うであろう単語を言ったのは、未だ真人の腰に手を置いているバクだ。

  「死神だ」

  「・・・へー」

  「もっと面白い反応しろよ」

  真人の頭を支えていた手を死神の方に向けると、バクはパチン、と指を鳴らした。

  すると、先程までは空と雲しかなかった空間が、チョコレートや飴などのお菓子に溢れ、真っ青な空はカラフルな虹色の天井になっていた。

  目をパチクリさせた真人は、次第に浮遊感が無くなることに気付く。

  宙に浮いていた真人の両足はしっかりと地に着き、目の前にいるバクの身長が思ったより高かったことにも気付いた。

  真人の腰を支えていた手をどけると、バクは死神に向かってニコリと笑う。

  「お前はお前の仕事を全うしていると思っているのだろうが、俺にとっては迷惑極まりない行為だ。人間の一人や二人が死のうがどうなろうがそれは興味ないが、こいつの夢は美味の可能性が高い。こいつを殺すということは、俺に喧嘩を売っているのと一緒だ」

  余程根に持っているのか、バクは一瞬のうちに死神の前に行き、拳を振るった。

  突然のことに対応できないでいた死神は、虹色の壁に激突した。

  体勢を立て直そうとしたが、壁にぶつかった反動で少しはねかえった身体は、再び悲痛を纏う事になった。

  怒りを抑えきれないバクが、何度も何度も死神を蹴飛ばしたのだ。

  夢の中での出来事とは思えない事態に、真人はただただその光景を見ていることしか出来なかった。

  しかし、その光景がゆらゆらと揺らぎ始めた。





  その後、あの二人がどうなったのかは知らない。

  真人は目を覚まし、いつものような病院の天井が見えていたからだ。

  「おはよう、真人君」

  「おはようございます」

  「良く寝られた?」

  「はい」

  良く寝られたはずがない。何せ、死にかけた夢を見たのだから。

  自分のもとに現れた死神と、自分の夢を欲しがっていた謎の男。

  怖い話しとかで、死神に狙われた人間は次々に死んでいく。主人公だけは助かることもあるが、自分は物語の主人公ではない。

  きっとこのまま時間が過ぎて行けば、いつの間にか死んでいる・・・・・・。

  「今日は午前中に検査があるけど、あとは自由にしてていいからね」

  「はい。ありがとうございます」

  もうすぐ死ぬ自分の検査をするなんて、滑稽だ。

  朝運ばれてきた食事は調子よく喉を通り、検査の時間までは本を読んだり敷地内を散歩したりしていた。

  特に変わったこともなく、その日が終わろうとしていた。

  気になっていることといえば、あの夢の中の二人に決着はついたのか。いや、例えあの謎の男が勝ったとしても負けたとしても、死神は自分の命を狙っている。

  「はぁ」

  「ため息を吐くと幸せが逃げるとか逃げないとか」

  「!?」

  敷地内の隅にあるベンチに座っていると、ふと後ろから声が聞こえてきた。

  勢いよく振り返ると、そこには実際に会ったこともあり、夢の中にも出てきた男が立っていた。

  「検査結果は毎回良好。なのに退院は出来ない。それはきっと死神に憑かれているからだ。とでも思っているんですか?」

  男は真人が座っているベンチの肘かけに腰を下ろし、見下ろす様にして嗤う。

  「はい」

  「・・・なんですかこれ」

  「知らないの?リンゴだよ」

  いきなりリンゴを一個そのまま渡されたため戸惑っていた真人に、男は淡々と会話を続ける。

  そして持っていたもう一個のリンゴに齧り付くと、大きな病院を見上げる。

  よく見ると、男はカーキ色のTシャツを一枚羽織っているだけのようだ。

  天気の良い昼間ならまだしも、夕暮れが染まってきた時間にそんな恰好では、きっと寒いであろう。

  それでも男は平然として、リンゴをもう一口齧った。

  「これから僕は独り事を言います」

  「え?」

  勝手に言っていればいいのに、と思いつつ、真人はその言葉が遠まわしに“聞け”ということだと理解した。

  「今まで沢山の人に会いました。君のような病人も、まだ幼い子供も、明日にでも死んでしまいそうな老人にも、勿論若者にも。それぞれ生き方も育ちからも何もかも違い、自分への価値観も違いました。卑下する人もいれば、過大する人もいました。誰かを恨んで生きる人もいれば、恨まず憎まずで生きる人もいます。国によっても違いますね。それはとても面白く、僕にとってはどれもこれも非効率的な生き方で、無意味なものばかり。しかし、遠回りして無意味なことをしていくことこそが、人間の生き方の本来の姿なのかもしれません」

  「・・・で?」

  「はい?」

  「結局、何なんですか?」

  「とくには。だから言ったでしょう?独り事だと。結論も何も無いです。ただ、いつの世もいつの時代も君達は面白いということです」

  クスクス笑いながら腰を上げ、リンゴを齧りながら去っていく男の後ろ姿を、真人はぼんやりと眺めていた。

  病室に戻ると、看護師に注意された。

  母親はまたお見舞いに来ていたようで、真人が病室に戻ってきたのを見た途端、真人の頬を強く引っ叩いた。

  最初は眉間にシワを寄せて母親を見ていた真人だが、母親の目が赤くなっているのがわかると、小さく謝った。

  「まったく。どこで何をしてたの?」

  「近くのベンチで知り合いと喋ってた」

  「知り合い?お友達が来てたの?」

  「ううん。なんていうか、知りあいになった人」

  母親は納得していないように首を傾げたが、「そう」とだけ言って、ベッドに寝た真人の肩まで布団をかけた。

  病室に一人になると、真人はカーテンのしまった窓を見る。

  激しい運動をしたわけでもないのに、ゆっくり目を閉じれば眠気が襲ってきた。

  ―奥寺真人。君の命は今日をもって切らせてもらう。

  ふと聞こえてきた聞き覚えの無い声に、真人はただ目を閉じて身を任せる。

  ―若いのに、可哀そうなことだ。だが、運命の糸の長さは決定されていること。もはや誰にも止められはしないのだよ。

  「僕は抵抗しないよ。早く連れて逝ってよ」

  ―そう言ってくれると、助かる。

  すうッ、と全身の力が抜けて行く感覚に襲われたかと思うと、フワフワと以前夢の中で感じた浮遊感に似たものを感じた。

  そっと目を開けると、自分の身体の下に自分が寝ているのが見えた。

  幽体離脱の類のものかと思っていると、ベッドの横にある機械がピーーーッ、と鳴り始めた。

  それを聞きつけた看護師が勢いよく病室に入ってくると、真人に声をかける。

  そのあとすぐにナースコールを押し、先生が来ると、心臓マッサージなどの蘇生を開始していた。

  数十分後には自分の母親と父親も病室に到着した。

  母親は泣き崩れており、父親はそんな母親を支えるようにして立っていた。

  「・・・ごめんね」

  きっと、いや、絶対に聞こえてはいない声で、真人はメッセージをおくった。

  先生が心臓マッサージと機械を交互に使って懸命に動かそうとした真人の心臓は、一向に動こうとはしなかった。

  腕時計を見ると、「二十二時五分。御臨終です」と先生が両親に向かって伝えた。

  背後に何かの気配を感じた真人が振り返ると、そこには夢に出てきた真っ黒い服装に、大きな鎌をもった“死神”が現れた。

  「じゃあ、逝こうか。どんなところか知らないけど」

  真人の言葉に、軽く首を縦に動かした死神。

  だが、そこでまたあの男が突如姿を見せた。

  「奥寺真人のあの世逝き。少し待ってもらおうか」

  「・・・暇なんですね」

  「まあな」

  フンッ、と鼻を鳴らして真人の横を通り過ぎると、死神にズンズン向かって行く。

  「何度も俺に同じことを言わせるな。何度も俺に同じ手間を取らせるな。何度も俺の食事の邪魔をするな」

  ゴゴゴゴ、という効果音がつきそうな空気を纏い、男は死神にさらに近づく。

  死神が大きな鎌を構えて、男に向かって振り乱すと、鎌の中に男がすっぽりはまってしまう形になった。

  怒り心頭の男にとって、そんな状況はどうでもよかった。

  鎌を掴むと力任せに折り、死神の胸倉を掴みあげた。

  「いいか。人間の一人や二人どうなったっていい。だがな、一人や二人死ぬと言う事は、俺にとっては食事の選択肢が狭まると言う事だ。これからどんどん人間が少なくなれば、当然、美味に出会う確実も少なくなる。贅沢はいわんが、毎日クソ不味い飯というのも嫌なもんだ」

  ギリギリと音がしそうなくらい首元を締めると、死神は若干顔を歪めた。

  「あの・・・」

  「なんだ」

  二人の間に割って入った真人だが、いつもとは違う男の雰囲気と、ギロッと睨まれたことですごんでしまった。

  胸倉を掴んでいた手をパッと離すと、男は死神をただ見下す。

  「あの・・・僕はもういいんですけど・・・」

  「お前の考えは聞いていない。お前の生存云々ではなく、夢の話をしているんだ」

  「はぁ・・・」

  先程から、この男は食事だの夢だのと、何を言っているんだろうと思っていた真人の腕を、いつの間にか傍に来ていた死神に掴まれた。

  そのまま本来の身体から抜けた身体が、空高くへと飛ぼうとした時、反対側の腕も掴まれた。

  わかってはいたことだが、その腕の先には頬を引き攣らせた男がいた。

  「俺から逃げられると思うな」

  男に掴まれた腕は痛いというよりも熱く、真人はどうしてよいかわからずにオロオロとしていた。

  鎌を折られた死神は、以前のように手を出して握りつぶす様な仕草をしようとした。

  だが、それよりも先に、男が折れた鎌の先を死神に向かってなげたため、片方の手が真人の腕を掴んでいる死神は、残った手で自分をかばった。

  面倒になりそうな死神の手を、男は乱暴に掴むと、力任せに折ろうとする。

  ありえない。折るはずない。そう思っていた真人は、男が口元を歪めて力を入れて行く度に、自分の腕を掴んでいる死神の手が弱まっていることに気付く。

  「ほう。死神に痛覚があったか?」

  そう言いながらもさらにもっと強く力を入れる男に、真人は大声を出す。

  「止めてください!」

  止まるはずがないと思っていた男の暴走が、ピタリ、と止まった。

  「僕の心臓はもう止まってしまったんです。どうしようもありません。よくわかりませんが、もっといい食事に出会えると思います」

  「・・・まだ間に合うんだろう?な、死神?」

  「間にあう?」

  強めの口調で死神を睨みつけると、男はイライラした感情を何とか隠そうと、舌打ちをした。

  「いいか、真人。俺には人間のことはよく分からんが、それぞれ産まれ持ったものがある。それは運であったり性格であったりだ。変えられないものもあるが、変えられるものもある。人生は一度。その人生をどう生きようが、それはお前の勝手だ。だがな、世の中には自然に流れゆくものを受け入れなければいけないこともある。こいつが運命だ何だのいったところで、それは“これから死ぬ”という警告・警鐘でしかない。産まれた順に死んでいく。それは自然の流れであって、つまりはお前は親よりも長生きしなければ、その自然の摂理に反する、ということだ。そして、生きたいと願えば、それは時に運命をも覆すことがある。今のお前に足りないのは生きると言う執念だ」

  「僕は、もう生きなくてもいいんです」

  「とんだ親不孝者がいたもんだな。なら、お前が死んだことによって、お前の親が心中するかもしれないということを考えた事があるのか」

  「そんなことしません」

  「断言できるのか?百%そうだと言い切れるのか?不確実な自分の考えだけを優先していては、たしかに、今死んだ方が良いのかもしれないな」

  この男、何も知らない癖に勝手に自分の前に現れ、勝手に何かの話をし、勝手にあの世に逝くのを止めたにも係わらず・・・。

  しかし、確かにさっき、この男は“間にあう”と言った。

  なんとなく予想でいくと、きっと自分の命のことをいっているんだろうことも分かっている。

  だが、こうなってしまってはどうしようもない。現実問題として、病室にいる自分の身体から自分の本体が抜けていて、心臓も止まっている。

  意識も今ここにいる自分が持っているのだから、手遅れだと思う。

  万が一―・・・

  もし仮にまだ自分が生きていて、死神が自分の心臓を持っているとか、まだ心臓が動くチャンスがあるのだとしたら・・・?

  ちらっと死神の表情を窺おうとするが、死神の表情は見えない。というより、無い。

  「真人・・・真人!!!」

  両親の声が聞こえ、空から病室の窓を見る。

  冷たくなった自分の身体を一杯抱きしめて泣いている母親。泣かないようにはしているのだろうが、目頭を押さえて下を向いてしまっている父親。

  走馬灯のように巡る思い出に、真人は思わず目に涙を溜めた。

  死ぬこと自体は怖くなかった。生きているうちに何かを失ったり、傷を負ったりすることが怖かった。

  「・・・僕、もう少しだけ生きたいよ」

  鳥の鳴くような小さな声は、男にも死神にも聞こえた。

  「だ、そうだ。こいつの心臓を返せ。時間が経ち過ぎると本当に死んでしまう」

  「・・・・・・」

  間に合わなくなってしまったらどうしよう。

  死神がそれでも連れて逝くといったらどうしよう。

  色んな不安があったが、真人はしっかりと死神の方を見て、言い放つ。

  「僕は、まだ生きます。まだ死ねません」

  何か一波乱あるかと思いきや、死神は懐から真人のものと思われる心臓を取り出し、真人の本体へと戻していった。

  ―ドクン

  ―ドクン、ドクン

  ―ドクン、ドクン、ドクン、ドクン

  「・・・あら?」

  「どうかしたか?」

  「先生!脈が・・・」

  急いで真人の脈を確認すると、それは確かに動いていた。

  「なんてことだ・・・!」

  検査機器や医療機器、残っていた先生たちも全員集まって、真人が目を覚ますのを待っていた。







  急に瞼に光を感じた真人は、ゆっくりと目を開けようとするが、あまりにも眩しくてなかなか目を開けられなかった。

  身体は自由に動かず、とりあえず眩しさから眉間にシワを寄せた。

  「真人!真人!?」

  激しく身体を揺すぶられ、仕方なく目を細めて開ける。

  「先生!目を開きました!」

  「真人くん、大丈夫かい!?」

  「・・・眩しいです」

  掠れた声でそう告げると、先生や看護師たちは安堵の表情を浮かべ、笑みを浮かべた。

  一方、母親と父親はポカンと口を開けていたかと思うと、まだベッドで横になっている真人の身体を強引に引き寄せて抱きしめた。

  一週間後、真人は退院した。

  病名は分からず仕舞いだったが、検査の結果、健康そのものになっていたそうだ。

  久しぶりの、本当に久しぶりの家に帰ると、変わっていない家具や匂い、景色に安心した。

  「・・・ありがとう」

  どこのだれかもわからない、あの人。





  「ん~!!!おしい・・・が、なかなか美味い!!!」

  そのころ、どこのだれかもわからないあの人“であるバクは、大きく膨らんだわたあめを口に含んで綻んでいた。

  「死神の出る夢はいつ喰っても美味いな。しかしまぁ、死神に俺の夢を喰われては堪らんからな」

  みるみるうちにピンクに染まっていく髪の毛は、バクには似合わなかった。

  中途半端に齧ってあるリンゴを踏みつぶすと、バクは暗闇の中に消えて行った。





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登場人物紹介

バク:夢の中の住人。人間たちの夢を食べて生きている。

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