第2話

文字数 1,082文字

顔に気持ちが出ない病はわたしの人生の狂いだ、思ってることと違う顔になる。
先生は十年分のカルテを書き直す。それの変調を記す。


シンタが手を落として二週間後、躁鬱の躁になっていた彼は大丈夫ですよと先生に笑い飛ばした。先生はもうダメだとそのとき思ったらしい、閉鎖病棟に入れて様子をみた。先生からショッキングなことを口にされる。
「君、てんかん発作。治ってるよ。」
それは十年以上処方される薬が間違っていることを意味したが、いまの自分には芸大で専攻していた絵のことばかり考えていた。目の前の現実から逃げているのだと思ったらしく。絵を描かせられない状況を作られた。その意図は周りに目がいくように仕向ける訓練だったらしい。だがその性格はこの病院で作られたものであり、その理不尽に耐えるつもりでいた。だがその怨む気持ちにはなれず、一日中暇を持て余し、絵の事を考える。
昼を過ぎるとテレビを見てマジ泣きする、それは心が芽生え出したせいだった。そんなしょうもない日々を三カ月経てば終わると思っていた。医者はもうダメだと思ってたので、三カ月の予定入院日が経ってもなにも言わない。絵を描きたくて、意見箱の鉛筆を盗んで、描いていたら怒られる。

「なにが悪いんですか。」

「ここに入ってる時点で悪いわ!」
なにも言い返せない。
まるで過保護の囚人だった。
そうだ自分が悪いんだと思い、恐る恐る壁が頑丈なのを確認する、その想いの丈を殴りつけた。この際、悪に染まりたかったがこれが本当に最良の治療か疑問に思う、任意の入院ではないためもう自由はないのだ。クズであることを変えるためにここにいた。人間不信のその先は自分不信だった。もう自分がすがるものもなく、水槽の金魚のようになってるつもりでいた。そこで泣いてる女のことを慰めている。その子は自分がダメな子だと先生にいわれて壁を叩いてる。自分が己の事のように声をかける。

「おれらはなんで治療してるんだよ?」

その子は悔しくて泣き疲れ、仲良くしていたので同情した。

「いいねん。わたし障害だから。」

ダンマリが続いたその日から距離が近くなったのだがその子には好きな人がいるらしい。
「君とは気兼ねなく喋れるね。」

その言葉に胸が苦しくなった。

そうしてるうちに彼女は去っていった。

俺は親父に聞いた。
「お母さんってどんな人だったの?」

「お前知ってるだろ。あんなに優しくしてもらってたやんけ。」

「そっか----」

おれは母さんみたいに彼女のことを忘れるのかなと、ぼーっと病院の外を面会の父の前で眺めていた。



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