第7章 2013年 – 始まりから50年後 2 すべては、書庫と日記から(7)

文字数 693文字

             2 すべては、書庫と日記から……(7)


 ところが二時間くらいが経った頃、玄関チャイムがしつこいくらいに鳴り響き、いつまで経っても鳴り止まない。キンコンキンコン、キンコンと鳴って、鳴り終わったかと思えば、また同じリズムで鐘の音が鳴り響いた。
 そのうち節子が目を覚まし、不機嫌そうに呻き声を発し始める。
「くそっ!」
 こうなってしまえば、寝ているわけにはもういかない。彼女一人では何一つできないから、やるべきことは山ほどあった。ただその前に、ひと言くらい文句を言わねば気がすまない。
 ――いくらなんでも、朝の八時ってのは早すぎるだろう!?
 セールスなんかだったら怒鳴りつけてやる! そんな気持ちを抱えつつ、彼は足早に玄関へ向かった。ところが備え付けの画面に目をやって、チャイムを押すのがセールスなんかじゃないとすぐに悟った。さらに……、
 ――俺はどこかで、こいつと会ったことがある。
 不思議なくらい強烈に、そんな気持ちが湧き上がる。
 しかし単にそれだけで、具体的な記憶などは浮かび上がってこないのだ。
 ただとにかく、画面に映るその姿には、セールスマン特有の何かがない。自信満々……、とでもいうのだろうか? 己の判断で生き抜く強さが、画像からでも過ぎるくらいに感じ取れた。
 もしかして医者か? そんなことを思いながら、剛志は通話ボタンを押したのだ。
「あんた、誰?」
 不機嫌そうにそう言って、すぐに終了ボタンへ手をかける。そうして返ってきた相手からの答えは、想像以上に明るい声そのものだった。
「どうも、大変ご無沙汰しております。わたしのこと、覚えていらっしゃいますか?」
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