プロローグ ✿ 空を落ちて 君のそばへ

文字数 794文字

ある日の夢で、ラルフ・ローゼンクランツは空を落ちていた。


水平線が逆さまに映り、蒼穹に桜吹雪が舞う。

これは……夢か

俺は、空を美しいと思えない……

彼は「綺麗ではない空」を見た人間なのだ。

この夢は、散りゆく命を花びらに変えている…

空で散ったのは、自分を乗せていたものや、友の一部だ。


ラルフの手足も先の方から花びらになって散っていく。

戻りたい。

君が待つ、あの家へ……

空で散った「彼」に「天使」が教えてくれた。

風にのって空を渡り、雨になって地上へ降りれば、あの人の元へ行けるわ

彼は「天使」に教えられた通り、故郷へ飛んだ。


帰りたくてたまらなかった我が家に着くと、庭の薔薇は満開だった。

ラルフは、自分が飛行服を着ていることに気付いた。


窓辺から家の中をのぞくと、長い紅髪の女性が窓に背を向け、卓で本を読んでいた。

ただいま、エレナ

エレナと呼ばれた女性が驚いて、窓辺を振り返る。

今、あの人の声が……

エレナは、彼の姿を探した。


彼は、窓の向こうにいるのに。

どこ…?

見えないわ……

泣き崩れる彼女を見て、幽霊の彼も涙をこぼした。


たった1度だけ届いた「ただいま」だった。

彼の魂が故郷に帰ってから、1年後のこと。
見えたら良いのになぁ
修道女になった彼女は、晴れた空を見上げる。

今日も空を飛んでいるの?

そんな気がするけど、当たっているかしら

…ううん、はずれ

彼女に、彼の声は聞こえない。

俺は、君のそばにいるよ

彼は形のない体で彼女のそばによりそう。


彼女は聖書を開き、空へ祈りの言葉を唱えた。

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登場人物紹介

帯刀 咲良  (たてわき・さら)


 高校2年生、剣術道場の娘。

ジョン・リンデン


イギリス人

インターポールの捜査官。

天羽 理々(あもう・りり)


高校2年生、咲良の親友

合気道部

ラルフ・ローゼンクランツ


ドイツ人

インターポールの捜査官。

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