【第2話】風渡歩(かぜわたり あゆ)。
文字数 1,678文字
(この作品は『仮面ライダーW』の二次創作作品です。実在の人物、事件等との関係はありません)
俺たちを見下し嬢ちゃんが言う。日は夕闇へと姿を誤魔化そうとする。そんな時間が迫っていた。
横に歪む光の中で嬢ちゃんは謳った。
俺たちは上半身が緑色、下半身が黒色の1人の仮面ライダーに成っている。よく分からんが表彰ものだ。名も知らぬ御嬢さん。
フィリップがこの腕をぶんぶん、軽量級ボクサー宜しく、と振り回す。スウェーで上半身をのけ反らせ、って、お前、いつの間にこんな高等技術を!
まぁいい。俺がキックで良かった。まぁ、パンチはフィリップ(あいつ)キックは俺、みたいな区分は前から在ったわけだし。
嬢ちゃんが駅舎の脇を指差す。そこには『財団X』も持っていた、あのチタンのトランクが転がっていた。
亜樹子が駆け寄りそれを受け取る。その目が怯えた子猫ちゃん色をしてやがる。
あの亜樹子が恐れる代物だ。それはマジなものなのだろう。殴られちゃいないが唇を拭ってあの子へ回答を申し込む。
嬢ちゃんは、小粋に『サムズダウン』を決めて見せた。
シグマドライバのスロットを叩く。力を込めて空高く飛翔した。
【J(ジョーカー)マキシマムキック!】
急降下、叩きつけた爪先がドーパントに爪痕を残す。爆発後、その炎が弱弱しく揺らぐ、が奴の腰のメモリは未だ無事なままだった。
指を構えて問いただす。
少女は語った。つかつか、とトランクの方へ歩み、その中を足蹴で示してみせた。
トランクの中は空。だがメモリを仕舞う棚だけがご丁寧に揃っている。その3つ目を足先で叩いてみせた。
俺の中でフィリップが問う。
そんな中、H(ヒート)ドーパントが必死の形相で起き上がってきた。まぁ、ドーパントに顔があればそういう。って話だ。実際はチープな面持ちで体を震わせ起き上がってくるところだが。
声を詰まらす俺を押しのけ、声の主導権を相棒が奪う。右目が『チカチカ』と、まぁ、察してくれ。
慌てて応える。指を弾いて音を飛ばした。相棒と声を重ねる。俺たちが、心を一つにする瞬間(タイミング)だ。
2人で1つの身体を以って俺たちは腕をしならせHドーパント(敵)へ指差した。