第3話 3/4

文字数 794文字

 博士は自室に戻り、デスクの前に座ると、最初に妻に電話を入れた。
「私だが、突然で申し訳ないが明後日までにさつきを連れて青森の実家にもどってくれないか、明日中に荷物の郵送と学校の手続きを済ませてくれ」
「・・・・・」
「悪いが細かいことは、今は家族にも話せない、とにかく急いでくれ」
「・・・・・・」
「そんなことは分かっている、とにかく夏休みが終わるまでは帰れないと思ってくれ。」
「・・・・・・・」
「悪いがたのんだ、こちらも今は手が離せない、いったん切るぞ、後でまた電話する」

 博士はPCを使い海外から防疫による日本国内へのコロナウィルス阻止率を調べた、国内の研究論文にはないが、アメリカのホプキンス大が、パンデミック初期から各国の防疫率をまとめたデータを公表しているのを思い出した。

 【日本へ海外から持ち込まれる、ウィルス阻止率通常92パーセント(但しオリンピック期間中は70パーセント)以下に低下すると推測される】

 野口博士は確信した。
 ”ラムダの変異型は確実に国内に入ってくる、そして決してロックダウン等の措置を政府が取ることは出来ない。仮に超法規的措置でロックダウンを実行するときには、ウイルスは日本中に広まっている”
 ネット・ニュースでは今日はチリから800人の選手団、協議関係者および報道陣が羽田に到着後隔離を受けることなく、PCR検査だけで宿泊施設に向かう様記事が選手団の写真とともにアップされている。

 cobid19の株は、国や地域により遺伝子配列にわずかな違いがある、世界中の株の大半が東京に集まることになる。

有史以来初めての社会実験が都民一千万人を巻き添えにして始まる合図の鐘が今打ち鳴らされた。
上手くいけば人類最大の功績として世界中から賛辞を受けることになる。しかし最悪の場合東京大空襲を超える、日本史上最大の悲劇が起きることになる。無事閉会式を迎えることを神に祈るしかない




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登場人物紹介

浜田

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