文字数 1,742文字

〈P.30〉

黒木「うっ...」

目を覚ます。

暗闇。何も見えない。

(頭が痛い...)


体を動かそうとするが、後ろ手に縛られており、うまく動けない。

さらにもがくが強く縛られており、腕は抜けない。


(寒い...)

頬に当たる床が冷たい。


〈P.31〉

「うぐぅ...」

助けを呼ぼうとするが、猿轡を噛まされうまく声が出ない。

(ここはどこだ?)

(殴られたんだよな?)

急に殴られた部分の痛みが強くなる。


コツコツと足音が近づいてくる。

(おれは殺されるのか?)

心臓の鼓動が早くなる。


〈P.32〉


足音が近づき、止まる。

ガチャガチャと金属音。

鍵をあけている様子。


ぎぃぃと重い金属の扉が開く。

開くとともに光が差し込む。誰かが入ってくるが、逆光で何者が入ってきたのかわからない。


黒木の身体は動かない。

強い恐怖を感じている。


〈P.33〉

「あら、目が覚めたのね?」

若い女の声が黒木に問いかける。


黒木の顔をのぞき込む少女。

白い肌の美少女。少女らしい服装をしている。

見覚えがある。先日、マンションですれ違った娘。


〈P.34〉

少女は目を細め、黒木を値踏みするように眺める。


「黒木圭介...さんで間違いない?」

少女の表情に変化はない。


「うぐぅ!」

睨みつけ、何かを訴える黒木。


どこから出してきたのか、すっとバットのヘッドを黒木に向ける。


黒木の瞳に怯えの色が見える。


〈P.35〉

バットのヘッドを黒木の右頬にぐりぐりと押し付ける。寝転がったまま動けない黒木の左頬は床に、押し付けられる。


金属と血の混ざったような嫌な匂いがする。


黒木(おれは...ここで死ぬのか...?)


少女は黒木にバットを押し付けるのをやめ、野球選手のように構える。豪快な構え。


黒木は逃げようと体を動かすが、思うように動かない。


〈P.36〉

ぶんっとバットを振る少女。素振り。

黒木には当たっていない。どうやら当てる気はなさそうだ。


少女「黒木圭介。32歳。妻と子の3人暮らし。」

少女「さくらちゃんはもう少しで1歳だったかしら?」


バットを振り下ろす少女。

ガキンっと大きな音がする。


〈P.37〉

黒木の顔に当たるか当たらないかの位置、床を強打した。


少女「私、知ってるわ。あなたのこと。」

少女「言う通りにするなら、殺さないでいてあげる。」

黒木に初めて見せた少女の笑顔は、とても冷たく美しかった。


黒木(こいつは何を言っている...?)

一瞬思考が停止する。

少女の顔を見つめる黒木。


〈P.38〉

少女はバットの先端で床をなぞる。

カラカラと音が鳴る。


少女はバットを杖のようにしながら、しゃがみ込む。スカートから覗く陶器のように白い太もも。


少女は黒木の顔を覗き込み、首を傾げる。

少女「私に服従しなさいって言ってるの」


〈P.39〉

少女「聞こえてる?」

少女「それともこの子で頭をトマトみたいに潰してあげようかしら」

細い指でバットを官能的に撫でる。


恐怖から何度も頷く黒木。


少女は満足そうに笑みを浮かべた。

少女「いい子ね。今喋れるようにしてあげるわ。」


黒木の猿轡を外す少女。

少女「今から、あなたの名前はポチよ」


〈P.40〉

黒木「こ、殺さないでくれ...」

苦しそうに声を出す黒木。


満足そうな表情から一転、無表情になる少女。

少女「返事はワンでしょ?」


少女はバットを振りかぶり、黒木の太ももに振りおろした。


黒木「ぐぁあっっ!」

絶叫する黒木。


〈P.41〉

少女「返事はワンでしょ?返事はワンでしょ?返事はワンでしょ?」

無表情で何度もバットを振り下ろす。


黒木「ぐぁ!...ワン!ワン!ワン!」

痛みでもんどりうつ黒木。


少女「よしよし、よくできました」

黒木の頭を撫でながら満足そうな顔をする少女。


〈P.42〉

黒木(こいつ正気じゃない。本気で殺される)


何か思いついたといった表情をする少女。


立ち上がり、右足のミュールをゆっくりと脱ぐ。


少女「舐めなさいポチ。汚れてしまったわ。」


〈P.43〉

少女「しつけが足りなかったかしら?」

黒木を愛でるように見ながら、首を傾げる。


黒木は恐怖と屈辱で涙を流す。

芋虫のように少女の足もとにずっていく。


足を差し出す少女。

白く細い美しい足。


〈P.44〉

黒木は一瞬躊躇した後、舌を伸ばし少女の足の指を舐める。

恐る恐る、1本1本丁寧に舐めていく。


少女は艶かしく蒸気した顔で黒木の姿を眺め、目を閉じる。


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