自悶自倒

文字数 2,078文字

さあ本日も始まりました自悶自倒(じもんじとう)のお時間です!

明日こそやめようと言いながらも、やはり始まってしまいましたねえ、やめるやめる詐欺ですね。はい、実況中継担当は私、ご一緒する解説員は私、そして被観察者も私です。どうぞよろしく。

解説員私)今日は私さんの職場、ランチタイムに起きているようですね。

実況私)ええ。さて今回の自悶は「私そんなに真面目じゃないんですけど勝手にイメージ作り上げないでくださいよ」問答ですか。ふむ、つい先日も同じテーマでやっていたような。

解説員私)今一歩、成長がほしいところですね。

実況私)おっしゃる通り。ところで事の発端は、職場の先輩の発言「え~私ちゃんもスーパーのお惣菜とか買うんだぁ。意外だわ~真面目におかず全部手作りしてそう~」でした。実況している間にも自悶ゲージがみるみる上昇していまして、その数値は早くも65悶!なになに、その詳細はというと「いや、誰でも買うよね惣菜くらい?」や「真面目にって何よ。勝手に私のイメージ作ってるのそっちだけど?本来の私とのギャップに感想いらないですけど?!」ですね。

心の中はモヤモヤする一方、その表情は見ごとな作り笑顔!これは抜かりない、隙がなーい!

解説員私)さすが作り笑顔の玄人、名人芸です。

実況私)先輩はそうと気づくはずもなく、気分をよくしている様子。おおっとここでまた先輩が「意外」を繰り出してきた、その名も「私ちゃん、意外と普通なとこあるね」!!! 華麗に急所を突かれました、クリティカルヒットォーー!!これは私、ぐうの音も出ません。だって「私、普通ですから。それ以上何を私に望む?」。あえなく自倒です。

解説員私)これは残念でなりません。

実況私)自悶ゲージも100をふり切り、112悶。今週の最高記録を更新しました。ではここで、現場の私さんに今のお気持ちをうかがいましょう。私さん?私さあーん?

私)はい、私です。

実況私)まずは本日も自悶自倒お疲れさまでした。途中、懸命に踏ん張ってらっしゃいましたがあえなく自倒してしまいましたね。一戦終えた今のお気持ちは?

私)とりあえず実況中継という名の感情と、解説員という名の理性がうるさいです。お黙りください。

実況私)おっと、これは虫の居所が悪いようです。

解説員私)自倒後ですからね、当然の反応です。

私)いや、いたって平常心です。いつものことですから。だから黙りなさいて。

実況私)強がっております、気丈に強がっております!いたわしい!

解説員私)解説しましょう。私さんは、私とは何者なのかを模索中で、その輪郭が曖昧なままなので、周囲の言葉や態度に影響を受けやすい傾向にあるようですね。それらの言葉に反応しては自己の内で自悶し、自分を責めて自倒する。そのスパイラルにはまりやすい状態ってことです。

私)大きなお世話です。

実況私)まあでも、確固たる自分を確率している人なんてほんの一握りですよね。それに相手があっての私さんであり、いま味わっている感情や経験が組み合わさって成り立つ私さんですから、流動的であるのが必然で、模索中というより進化中という表現が似合いそうですけどねえ。どうでしょう解説員私?

解説員私)なるほど。「進化中」を採用ですね。そして、我々2人もまた、流動的で進化中であるということですね。

実況私)というと?

解説員私)はい。世界を知れば知るほど、酸いも甘いも味わっていくほどに、我々も深みが増して自悶自倒せず楽しめるようになる。そう思いませんか?

私)ちょっと、勝手に進めないでよ……。

実況私)それは難しいお願いですなあ私さん。我々は私さんを形作るものですから、黙ることができません。ですよね解説員私?

解説員私)おっしゃる通りです。頑張ってください、私さん。

私)何に対してかよくわからないけどありがとうございます。

解説員私)では、混乱している私さんのために、わかりやすくまとめますよ。私さん、例えるなら、あなたは万華鏡です。外から見たら普通かもしれません。でも中には魅力というキラキラ輝く星々や、あなたらしさという美しい花々がぎゅっと詰まっているんです。でも自悶自倒すれば減るでしょう、隠したままなら枯れるでしょう。

その星も花もあなたが動けば見え方が変わります、一瞬一瞬変わるのです。だから、見て美しいと思う人もいればそう思わない人がいるのは当然です。そこに自悶自倒する必要はない、ということです。わかりましたか?

私)はあ、なんとなく。

実況私)頭ではわかっていても、噛み砕いて消化するのに時間がかかることは、私さんあるあるですね。

解説員私)そうですね。

実況私)それでは、私さんの消化まで待てないので、この辺で今回の自悶自倒タイムを終了といたしましょう!お付き合いいただきありがとうございました。実況中継担当は私、ご一緒した解説員は私、そして被観察者も私でした。ではまた!

私)「また」はいらない!!

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