第2話『夏嵐』朝香祥
文字数 2,108文字
(おっとりしているように見えて案外ドライなんだよね、小手鞠)
『夏嵐』の大海人王子は、ひとことでいうと「冴えないヤツ」。身体が弱くてすぐに寝込むし、性格はふんわりおっとりしていて掴みどころがなく、兄である葛城王子(のちの中大兄皇子)をはじめ、周囲から軽んじられている。
そんな、普段はまるで冴えない飄々とした大海人王子のある意外な一面を、主人公である額田王は何度も目にしてしまうわけで。
そりゃ、気になってくるよね。
このひと、いったいどういうひとなん? って。
そうなんよ!(大声)
それなのにあの朴念仁、あろうことか、
「その玉葛は実がならないので、実(じつ)のない恋に歌われるのですよ」
と説明した額田王に向かって、その玉葛を手折って差し出すんだよ!
なにやってんだゴルァ!(巻き舌)
ぐっ……、(否定できない)
いや、だって、なんだかんだいって大海人王子、要所要所でちゃんと決めるんだよ。
額田王にお願いされたら断りきれなくて、文字通り捨て身で刃の前に身を晒すし。
(当然、額田王はそんな意味でお願いしたわけではないけれど、結果としてそうせざるを得ない状況)
葛城王子といえば、この作品のなかでも、彼が妹である間人王女(はしひとのひめみこ)に恋情を抱いていて、母親であり大王(おおきみ)である宝姫大王が蘇我入鹿へ妹を嫁がせる気だ、と聞いた途端、激怒して、それも蘇我一族を滅ぼす原因のひとつになっているわよね。
うん。この場合は嫉妬もあるだろうけど、実際問題、蘇我入鹿と姻戚関係になってしまうという。これ以上、蘇我一族に権力を持たせるわけにはいかない、という強い意志が葛城王子にはあった。
桐乃は近年「中大兄皇子が妹である間人王女に懸想していた、という事実はないのでは」という説を元にした作品を読んで目から鱗が落ちたよ。
いろいろな視点から描かれた作品が読めて楽しい。
うん。大化……じゃない、乙巳の変を扱った作品はあっても、額田王はメインじゃない。
桐乃は、この飛鳥時代と源平時代になぜかすごく心惹かれるものがある。歴史は全然得意じゃないし知識もないのに、なんでじゃろ?