第119話 坂田さんへ  2

文字数 2,882文字

坂田さん。実はあなたに聞いて欲しい話があるんです。
…………

 大事な話。それはきっと坂田さんも分かってくれただろう。

 魔優も美樹ちゃんも神妙な面持で、俺が喋るのを待っている。

何の話。ですか?

あの、私が何か気に障ることでも?

それならすぐ……「

いえ。違うんです。そういうお話ではなくて……


坂田さん。あなたには、どうしても……

俺達のことを、知って欲しいんです。

俺達?
ひぃう!

 疑問府を投げてきた坂田さんに、何故か美樹ちゃんがビクっと反応してしまう。

 俺は慌てて美樹ちゃんの手を取ると、むちゃくちゃ震えてしまっていた。なのでそのまま美樹ちゃんを引き寄せると、肩にべったりとくっついてしまった。


 

え? 魔樹……くん……
やっぱり魔樹くんは……おねーさまを……
待って。今から全部説明しますから。

 そんなタイミングで俺の左手を握ってきたのは魔優だった。

 やっぱり……カミングアウトするのって怖いよな。


 分かる。俺だって今、むちゃくちゃ怖いんだ。

 まだ不審がっている坂田さんの顔がどんな風に変貌してしまうのか、考えただけで恐ろしい。

 

 下手すれば……この先どうなるのかなんて分からないし、坂田さんは喫茶店だけの付き合いじゃなくて学校でもお馴染みの友達なんだ。


 その関係に亀裂が入る可能性だって、無いわけじゃない。

 

悪い事ばかり考えるな。恐れちゃいけない。

 俺ですら坂田さんに目を合わせられなくなる。


 と、その時。俺にくっついてる二人からぐっと力が入ったのが分かった。

魔優。美樹ちゃん……二人が俺に力をくれる。


大丈夫。俺が……俺がやらねば。

坂田さん。俺や魔優。美樹ちゃんは……あなたともっと仲良くなりたい。

…………

ももやまろ。コテツを譲ってくれたのもあなただし、この喫茶店も手伝ってくれる。

弟の凛も世話になってるし、俺だってずっと……

高校ではお世話になってるんです。
高校? え?
……多分。見てもらった方が早いと思います。
楓蓮さん!

 俺は立ち上がり「着替えてくる」と言い残すとさっさと更衣室へ向かった。

 

 一応ロッカーに入れておいた「蓮用の服」を取り出すと、すぐに戻ってくる。

 みんなの前でカチューシャを外し、着替えようとすると…… 

 

まさか。
そーいうこと。そっちの方が分かりやすいだろ?

 つまり俺は、坂田さんの前で入れ替わるのを見てもらおうと思ったのだ。

 口で言って説明するよりも、まず俺達がこんな風に入れ替わるのを見てもらう。


 その方がきっと分かりやすいと思うんだ。


 というわけで、先に蓮用の服に着替えておくって訳だ。

ちょ! 楓蓮おねーさま!

あ、すみませんね。でも俺。恥ずかしくないんで。

背中見せてますね。

 ブラジャーを取ると、スカートを脱ぐ前にシャツを素早く着る。 

 そんでスカートを脱いでしまうと、さささっと綿パンを履いてしまえば完成だ。

坂田さん。俺達は男や女に変わってしまう、特殊な人間なんです。

見ててください。

男や女に変わる……?

 魔優や美樹ちゃんが手を繋いでくれる。

 俺は二人の手に力を込めながら、ゆっくりと目を閉じリラックスする。

え? えぇ~~?

 目を閉じていても分かる。

 坂田さんの驚愕する顔が透けて見えるようだ。


 

く、黒澤?

いや~。こういう場合。どんな顔して良いか分かんないですね。


 固まった坂田さんに申し訳なく思い、笑顔を見せたのが悪かったのだろうか。



 その数秒後。坂田さんはクラっと立ちくらみを起こしたようにフラフラとよろけると、椅子に座り込んだ。


待って。い、意味がわかんない。

か、楓蓮おねーさまは?

それは~。俺の女の姿なんです。
いやいやいや……

いやいや。ほ、ほんとなんです。

楓蓮は、俺なんです。

いやいやいや……

 いやいやいや。そんなやり取りが10回ほど続いた。

 目の前で入れ替わったのに、坂田さんには受け入れられないのか、中々納得してくれなかった。

 そこで魔優や美樹ちゃんも一緒になって言ってくれて、ようやく分かってくれたらしい。

 


 だけど俺は思った。

 やはり。普通の人にカミングアウトする場合、相手に信じてもらうのは非常に難しそうだ。

 それは目の前で入れ替わったとしても、中々受け入れてくれないのだと。



 ※



 坂田さんを説得すること10分ほど、ようやく蓮と楓蓮は同一人物なのだと理解してくれたらしい。


 理解してもらうのに有効的は方法は、この蓮の姿で、楓蓮の出来事を話す事であった。

 つまり、蓮じゃ知りえない情報を坂田さんに聞かせるのだ。


 例えば、ももまろと初めて逢ったのは、河川敷。サイクリングロードである。

 紫苑さんと一緒に散歩してたのが初めてなのだ。


 そんな話や、だんじり祭りでの出来事も話したり、楓蓮のメモリーを蓮で翻訳すると、徐々に分かってくれた。

本当に黒澤が……おねーさん。


 分かってくれたといっても、坂田さんは笑顔になる事は無かった。

 やはり、府に落ちない。そんな気持ちが表情に出ている。


 一通り俺の話が終わると、今度はミキマユの話である。

坂田さん。私達も……蓮くんと同じ特殊体質なの。


わたひたちは……こんな身体だけど、坂田さんとは仲良くなりたくて。
魔樹くん……魔樹くんも、変わるの?

そうです。二人は双子で容姿も同じでして、傍から見れば絶対分からないですが……

 その時美樹ちゃんがビシっと手を上げる。

 

坂田しゃん。み、見ててください。

私も、女の子に入れ替わっちゃうのでし。だから見ててほしい。

 美樹ちゃんはそう言いながら、ベストを脱ぎ、シャツのボタンを3つ外した。

 そしてズボンまで脱いでしまったので、俺は慌てて目を背けた。

魔樹くん!

思いっきり女性用のショーツ。

ふぉぉ! お、王子にそんな趣味が……


じゃなくって、魔樹くんが入れ替われば……

ちょ。美樹ちゃん!

蓮くんなら見られても平気ですよ。

このショーツ。めっちゃ伸びるんでし。だからおにゃのこになっても平気なんです。

 美樹ちゃんはシャツ一枚にショーツ一枚。その姿で入れ替わるつもりらしい。


 

蓮くん。魔優。あの、お願い。

おてて。繋いでてほしい。

 美樹ちゃんの要望に応え。俺と魔優は手を繋ぐ。

 こうでもしないと、実際怖いんだ。


 家族だけしか知らないタブーを人に見せるのは、今までの俺達には考えられなかったことなのだから。

美樹……

こ、怖い。だけど……蓮くんや魔優が傍にいてくれる。

それなら私も、頑張れるんです。

 美樹ちゃんは目を閉じ、入れ替わりを行う。

 この間だけは、俺や魔優も坂田さんの顔を見ることが出来なかった。


そんな……みゅ~ちゃんが二人?

坂田さん。いつも高校ではお世話になってます。

私が本当の美優です。

……本当の美優?


じゃあ、こっちの……

私は魔優です。

主に喫茶店で坂田さんにお世話になってます。


学校では魔樹として、男として生活してるんです。

んっと。頭の整理をしないと……こんがらがってきたでござる

 やっぱり目の前で入れ替わりを見たとしても、素直に信じられる話ではない。


 だけど、坂田さん。

 あなたには俺達の事。分かって貰わないといけない。


 あなたともっと仲良くやる為には、俺達の全てを理解して欲しい。

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登場人物紹介


 ★登場人物でも若干のネタバレを含みます。第一部からお読みいただきますようよろしくです。

 ★逆に第二部の登場人物を先に読んでから、第一部をお読み頂きますと、別の意味で楽しめます。

 

 ★読者視点は神視点。登場人物の心の声も聞こえます。(フキダシの色がこの色)

 ★ 黒澤 蓮 くろさわ れん


 本編の主人公。高校一年

 男女入れ替わり体質。
 
 弟の凛と共に、新天地で新たに生まれ変わろうと、楽しい学校生活を送ろうとする。友人作りに重きを置き、人との付き合いにはとても慎重である。


 自分自身の事よりも、仲間の為ならば凄まじく有能になる。

 ★ 白峰楓蓮 しらみね かれん


 蓮の女性の姿。類稀なる美少女だが本人にはあまり自覚がない。


 外部には黒澤家の親戚(蓮の姉)となっている。

 楓蓮では世間との関わりあいを最小限にしてきたが、徐々に一人の女性として目覚め始める。

 

 自分を理解してくれる人間が増えるたびに楓蓮は飛躍的に成長してゆく。  

 ★ 黒澤 凛 くろさわりん


 小学校六年生

 男女入れ替わり体質。

 

 兄である蓮を慕い、とっても素直で女の子のような性格。
 ことある毎に兄に甘えてしまい、いつまで経っても、子供のままなので、蓮は凛の将来をとても心配している。

 

 二部中盤で凛オンリーの章があります

★ 白峰 華凛 しらみねかりん


 凛の女性の姿。

 外部との接触が無いので、彼女の存在を知るのは黒澤家の秘密を知るものだけ。

 楓蓮と違い、おしゃまさん。

★ 黒澤 玲斗 くろさわ れいと

★ 白峰 麗華 しらみね れいか


蓮や凛のお父さん。ただいま遠方で仕事中。

麻莉奈や平八。ティナとは大親友。


後半から再び登場します

★ 美神聖奈 みかみせいな


 高校で蓮と同じクラスとなる。実は小学四年生までの幼馴染。

 容姿端麗。成績優秀。運動神経抜群。リーダーシップ抜群。お金持ち。


 高校当初から蓮と関わりを持ち、お互いに影響されてゆく。無二の親友?

 記憶喪失だったが、徐々に昔の事を思い出してゆく。


 二人目の主人公。

★ 平八 へいはち 


 聖奈専属の運転手。

 黒澤家の秘密を知っており、蓮の親である麗斗(れいと)とは旧知の仲

 おっぱい職人。ツイッタのフォロワーは10万以上の有名人。

 作中でも最強だと言われるが……

★ 白竹 美優 しらたけ みゆう

 

 男女入れ替わり体質

 蓮と同じクラスとなる。ピンクの髪が目立つ美人。とても内気で、語尾が変になる。

 自分の家の喫茶店で働いている事になっているが、実は魔優と入れ替わっている

 歌が上手く、全国でも有名な絵師でもある。(エロ同人が本業)

 

 三人目の主人公。 

★白竹 美樹 しらたけ みき


 白竹美優の男性の姿。

 外部では白竹魔樹と名乗っているので、彼を知るのは家族と秘密を共有する人のみ。

 主に喫茶店で厨房担当したり、サイクルの都合上、学校でも魔樹として振舞う。

 男の子の身体で遊ぶのが大好き

★白竹 魔優 しらたけ まゆう


 男女入れ替わり体質。

 外部では白竹美優と名乗っているので、彼女を知るのは家族と秘密を共有する人のみ。

 主に喫茶店で接客担当。サイクルの都合上、学校でも美優として振舞う。

 心の中は女の子なので、こちらが真の姿となる。

 四人目の主人公

★白竹 魔樹 しらたけ まき


 魔優の男の姿。外部に知られているのは魔樹である。

 蓮の隣のクラスで、常にクール。成績も良く、空手や合気道を習得。

 学校内では魔樹王子と呼ばれるほどモテる。


 自分の家の喫茶店で働いている事になっているが、実は美優と入れ替わっている

 乙女ゲー大好きのツンデレ。

★白竹 麻莉奈 しらたけ まりな


美優。魔優の母。入れ替わり体質。


とてもピアノが上手く、蓮はプロの犯行だと断定。

双子の母だけあり、とても美人だが色々とヤバい人。

男の姿は、でかい上にマッチョらしい。


★ じいじ


 白竹家のおじいさん。喫茶店のオーナー。

 小太りでツルっぱげ。チョビ髭が可愛い。

 厨房担当で楽しい事があると、その場でクルクル回りだす。

★ 染谷龍一 そめやりゅういち


 男女入れ替わり体質。

 蓮と同じクラスとなり、前の席という事で付き合い始める。

 わりと積極的で、クラスでも人気がある。

 楓蓮に一目惚れし、ずっと彼女を追い求める。

 オムライサーでありポニテマニア。

 

 五人目の主人公

★山田 龍子 やまだ りゅうこ


 龍一の女性の姿。

 楓蓮を追って同じ喫茶店で働く事になる。全国でも有名な山田組の人間。

 ケンカが強く、蓮も認めるほど。

 楓蓮に近づく男を排除しようとする俺っ子。

★山田 虎子 やまだ とらこ


男女入れ替わり体質。龍一の弟(妹)

全国統一を夢見る女の子。既にチームを結成しており、チームヴァルハラと名づける。

口調はキツいが、兄弟には頭が上がらない。

デコトラならぬデコチャリで街中を暴走する。

★染谷 翔一 そめや しょういち 


男女入れ替わり体質。龍一の兄(姉)

龍一が恐れる唯一の兄貴。百人でかかっても勝てないらしい。

ただいま、新婚生活真っ最中。

★染谷 桜 (そめや さくら)


 翔一の奥さん。普通の人間。

 とても清楚で大人しそうな美人だが染谷三兄弟は彼女に対し頭が上がらない。

 翔一を女らしくする為、日々調教中。

★百済 紫苑 くだら しおん


 高校二年。軽音部。実家はソッチ系統の百済組。

 楓蓮達と一緒に喫茶店でバイトを始める。関西弁ちっくな喋り方だが、とても優しく後輩想い。

 蓮の同じクラスである、米山まゆこと、坂田沙織は小学校からの付き合い。

 マイブームはマジョリーナちゃん(ミニチュアダックス)を可愛がる事。

★坂田 沙織  さかた さおり


 高校一年。蓮と同じクラス。

 いつもニコニコ。おっとりとした口調でマイペース。

 紫苑と同じ軽音部。ベース担当。

 親が犬のブリーダーで楓蓮に二匹のダックスを譲る。

★ 西部

 蓮と同じクラス。

 事あるごとに蓮に絡んでくるが、その目的は聖奈や美優と接点が持ちたいが為である。

 ツイッター名では「モントゴメリー」。おっぱい職人を神と崇める。

★真鍋

 蓮と同じクラス。西部の友達。

 頭は良く、テストでも上位だが、彼もおっぱい職人を神と崇める。

 ツイッター名は「穴バースト」

★米山 まゆこ (だんじりバージョン)


 蓮と同じクラス。坂田とは昔からの親友で、紫苑は先輩に当たる。

 魔樹王子にベタ惚れてしまい、蓮に紹介してもらえるよう頼んだ。

 バスケ部所属。一年なのに相当の実力を持っている。

★ 三輪 加奈子 みわ かなこ

 

 蓮と同じクラス。坂田沙織の友達で幼稚園からの付き合い。

 男の子同士がホニャララするのが好き。

★ 清原 愛美 きよはら まなみ


 魔樹と同じクラス。米山まゆこと中学時代からの付き合い。

 ちなみに魔樹王子と呼び出したのはこの子。

★ 梶谷


 蓮と同じクラス。西部の友達で小学生からの付き合い。

 バスケ部所属。一年でレギュラー筆頭。

★高坂


蓮と同じクラス。梶谷の友達。

ギャルゲーのアイドルプリンセスをこよなく愛する男の子。

★ 鼻


楓蓮が命名。

その昔、蓮にケンカ売ってきたり、美優をナンパしたり、ろくでなし男であったが楓蓮や龍子にボコられる。だが楓蓮に鼻を治してもらったと勘違いしている。

楓蓮に殴られてから、とんでもなく優秀な男へ変貌する(だがケンカは弱い)

★ヴァルハラメンバー 


 只今メンバーは八人。

 虎子率いるチームヴァルハラメンバー。俗に言う不良だが、楓蓮。龍子。虎子には従順。

 実は全員イケメンレベルだが、とにかく頭も弱く、ケンカも弱い。

 NO表示されており、変なヤツが混じってます。 

 竜王 冴子 りゅうおう さえこ


 高校一年。西部曰く、彼女と美神聖奈。白竹美優を三大美女認定している。

 いつも笑顔。とても愛想が良い彼女だが……

 王二朗曰く、超危険人物。鞄にスタンガンを隠し持ち、女の子を襲うらしい

★ 播磨 王二朗 (はりま おうじろう)


 高校一年。竜王冴子と共に登場。190センチの巨漢であり極道顔。

 とてもじゃないが高校生には見えない容姿に、シルエット姿となっている。

 警官とエンカウントすると、ほぼ職務質問されてしまう。

 ゴリラのモノマネが神がかっている。

★竜王 将哉 りゅうおう しょうや


 萌ゴリと共に現れた男性。とてもイケメンだが萌にナンパーマンであると暴露されてしまう。萌は恋人だと告げるが……楓蓮は最初から将哉を警戒する。 

★稲坂 萌 いなさか もえ


 楓蓮が早朝マラソンに出かけた際に知り合った女性。

 巨漢で筋肉質なので、楓蓮は男だと勘違いするほど。

 とても気さくでしゃべりやすい印象を受けた萌ゴリ。ちなみにラッキースケベ体質。

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