(二)-22

文字数 308文字

 しかしながら職場ではそういうことは一切なかった。職場の仲間たちがいる影で、こっそりそう言われるならまだしも。だから私は、それはそれで割り切った。
 でもみなみは違った。その言葉を信じてしまったのだろう。理性では信じていなかったかもしれない。信じていたら付き合っているハズだ。でもそれには至っていない。しかし、彼の言葉を待ち続けてしまった。
 半年前、私と真紀で誓いの乾杯をした。そのときにも心の奥底では、彼のことを待っていたのだ。「一生独身」「男なんかいらない」というのは、みなみにとっては「彼以外の」という条件付きだったのかもしれない。そうでなければ、今こうして彼の死を前にして涙を流すことはなかっただろう。

(続く)
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