第5話

文字数 1,085文字

 「…ふーん、意外ね」

 教室で机を挟んで向き合う楓花と秋穂。昨晩の様子を聞き、秋穂は頬杖をつきながら表情には出してないが驚いていた

 「え?何が?」

 きょとんとしている楓花の顔をじーっと見

 「だって第一印象が…妙にテンション高くてチャラかったじゃん。何か変なことされてないか心配してたんだけど…逆に拍子抜け」

 「何それーっ永嗣はそういう人じゃないよ!」

 「永嗣ねー…熱い熱い」

 必死で永嗣をかばう楓花を見て手うちわしながらからかう秋穂。それに対し顔を赤くし膨れ顔をする

 「まぁ、でもね、ここんとこ暗くなってたから、明るい顔が見れて良かったよ。恋の力は素晴らしいねー」

 と更に煽ると

 「もう!馬鹿にしないでよ!」

 と机にもたれ顔を隠した

 秋穂は楓花にとっていい方向に向かっていると安心し、笑いながら楓花の肩をポンポンと叩いた


 夕刻、学校を終え秋穂と別れた後、永嗣からLINEが届いた

 『映画見てから食事しないか?』

 それを見てすぐに返事を送った。もちろん返事はOKだ

 すると永嗣には似つかわしくないスタンプが返ってきた

 それを見てくすりと笑い、待ち合わせの場所へ向かった

 到着するとやはり永嗣は先に来ていた

 「ごめんなさい、待った?」

 「おれも今来たとこ」

 と昨日と変わらない優しい笑顔を見せた

 「楓花が気に入るか分からないんだけど、和…いや、友達がおもしろいからって勧められて…」

 「映画好き!映画館で見たことないから楽しみ!」

 それを聞いて永嗣はハッとし

 「大丈夫か?暗い狭い空間はだめか?それとも心臓に負担がかかるか?」

 と心配そうな顔をしていた

 「大丈夫、今日は調子がいいし、永嗣と一緒だから心強いし」

 それを聞いた永嗣は照れ笑いをしたあと、下を向いた

 「何かあったらすぐに担いで病院に連れて行く」

 と、ごもごもと言った

 また永嗣の顔を覗き込むと顔を真っ赤にしていた

 楓花との距離が近いことに気づいた永嗣は驚き、後ろに下がった

 「お、おいっそんなに近づくなよ」

 「え、何で?」

 「…照れるし…」

 「…し?」

 「キ、キスするとこだった…」

 それを聞き、楓花も赤ら顔になった

 「…さ、行くぞ」

 永嗣が映画館の方を向き歩みを進めた時に、楓花は寂しさを感じていた

 キスしてもよかったのに…

 そう思ったが、まだ付き合ったばかりだからと気持ちを切り替え、正気を取り戻し笑顔で振り返った永嗣の後をついていった
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