第90話  黒澤蓮は一人にあらず

エピソード文字数 2,636文字

でも王二朗くん。いいの? 竜王さんと……

別にいいっすよ。マジで愛想尽きちまったんで。

今回ばかりは我慢の限界だった

 軽い口調で返されてしまった。それどころか笑顔で「ひっひっひ」と笑われると、合わせて笑いそうになってしまうが、内容がなぁ……


 目の前で友達との決裂を見てしまい……

 何だか、俺達が偶然ここに居合わせたのが悪い感じに思えてしまう。

でも、播磨くん。竜王さんとは凄く仲が良さそうでしたけど……
まぁ腐れ縁って言うのもありますが、昔はあんな奴じゃなかったんですけどね。もう俺も付き合いきれないっす

 しょうがない。そんな顔をする王二朗くんだった。


 ああいう啖呵を切ったものの、なんとなく彼は竜王さんを捨てきれないというか、そんな顔にも見えるんだ。

しかし黒澤くん。白竹さんを隠してて正解でしたね。あいつは学校だろうが、何処だろうが、何するか分からないんで
しゅ、しゅたんガン。バチっと?
行けると思ったらマジで攫いますよ。思い立ったらすぐ行動しますからね
うへぇ~~!

 ちょっと! 脅かさないであげて下さい!

 美優ちゃんが俺の背中に張り付いちゃったじゃないか。


王二朗くん。これからどうするの?

まぁ……あいつのやってる事を阻止する。マジで犯罪だからな。

縁を切った方が俺だって動き易いし、そういう意味ではこっちの方が楽かもしれん。見つけ次第ブン殴ってやるつもりだ

 美優ちゃん。大丈夫ですって。そんなしがみ付かなくても。

 王二朗くんは顔は怖いかもだけど、良い奴だって。

この高校に来た時は、俺が付いて回ってれば、そんなストーカーもしねぇだろうとは思ってたが、甘かったわ

 壁に向かって溜息を吐く王二朗くん。


 なんというか……


 やっぱり王二朗くんは竜王さんの事を……俺にはそんな風に聞こえる。

ねぇ王二朗くん。もし良かったら、俺達と友達にならない?
いあ。俺は……
 言葉を濁す王二朗くんだったが、美優ちゃんにも同意を求めるとうんうんと頷いてくれる。
もし良かったら仲良し。しませんか?

 ほら。超可愛い女の子からも言われてるんだぞ?

 だけど王二朗くんは、顔を赤らめるものの「はい」とは言わない。

でも俺は、あいつを阻止しないと、そう言う意味では君らを守ろうとは思うけど……

こんなヤクザ顔ですよ? 一緒に歩くとたまに職務質問されますよ?

 職質で笑いそうになったが堪える。
そんなの全然平気だよ。君の話を聞いてると、俺は王二朗くんのことを良い奴だと思ったから。ね? 美優ちゃん
うにゅうにゅ!

 ほら。美優ちゃんも俺の後ろから同意してくれてるんだし。

それに……超偽善者ですよ
ふはっ! そうは思わないけどね

ですけど、バナナは本当に好きっす。

まぁ、一日三本じゃ絶対足りねーとは思いますけど。

ちょ! ふ、ふははっ!
付き合いきれなくなったら、動物園に捨ててきてくれて構いません
 これには美優ちゃんと一緒に噴出してしまった。

 この畳み掛けるような自虐ギャグって……


 なんとなく、早朝マラソンで会った萌ゴリさんに似ている。

 というか、顔もソックリだし、めちゃくちゃ被って見えてしまうのであった。



 ※




 王二朗くんの自虐話で和やかなムードなってる最中だった。

 外から授業終了のチャイムが鳴ると、俺と美優ちゃんは一瞬で顔が引きつってしまう。

やべぇ……
授業が終わってしまいましたぁ
 こりゃ早く帰らないと、美優ちゃんにあらぬ疑惑が掛かってしまう。
え? 思いっきりサボリじゃなかったんですか?

 王二朗くんの目が点になってるだと?


 その顔にも驚いたが、次に「あっ」と漏らすと急に「ごめん!」と謝りだしたのだ。

空気読めなくてごめん! 二人のラブい密会を思いっきり邪魔しちまったんじゃない?

 は?


 今度は俺達が目が点になると、すぐに否定していた。

ち、違う。違うから! 俺達、そんな……そういう関係じゃないんで
そですっ! あにょ。私達は……お、お友達なのでし! 大事なお話をしてて……その……
これだけは誤解されてはいけない、そう思ったのに王二朗くんの顔がみるみる真っ青になると……

まさか! 大事な話って……今から告白しようとか。そんな大事なタイミングだったんじゃない?


ぬぅあ。ご、ごめん~~~!

違うって! 勝手に暴走しないでくれ!
違う違う違う! 全然そんなんじゃないから!
播磨くぅん! 違うのでし!
 俺達が誤解を解こうと必死になっていると、ようやく落ち着いてきた王二朗くんはぶつぶつと小さい声を出し始める。
俺さ。昔っからバットタイミング体質なんです。それはもう無意識に、悪いタイミングでエンカウントするんすよ。そりゃもう呪われてんのかってくらい……

 なんだよそのバッドタイミング体質って。


 だが、クソ真面目に語り出す王二朗くんは、巨漢ながら今だけはとても小さく見える。

とにかく。お取り込み中に邪魔しちゃって……タイミング悪すぎだわ。
いや、それは違う。王二朗くんが来なければ……きっと美優ちゃんも見つかってたし、バトルになってかもしれない
 間違いない。君が来てくれたのはグッドタイミングだった。
うんうん……播磨くんが来ていなければ……

 美優ちゃんも俺に同意してくれる。


 こういう時って、賛同してくれる味方っていうのは本当に心強いもんだ。


 ってかそんな悠長に喋っている時間が無い。

王二朗くん。実は君に聞きたいことが沢山あるんだ。今度また連絡するよ
こちらこそ。バナナは自主的に持ってますんで、買わなくていいですからね
うはっ。本当に持ってるのでし!
マジかよ

あっ! 待って。そんな二人ともマジな顔しないでくれ!

さっきたまたまコンビニで買って、たまたま持ってただけだから!

いつも持ち歩いてる訳じゃないよ?

いや、だからそれ。バナナが好きなんじゃないの?

コンビニで買うくらいだもんな。

 えっと……真面目な話に戻ろう。


 君に聞きたい事は、竜王さん関連は勿論の事だが……、

 

 なんとなく、王二朗くんはきっと何処かで、彼女をどうにかしたい。そう思っていそうなんだ。

 とはいえ蓮では思いっきり宣戦布告されちまったので、友好的に話す場面は恐らく無いだろう。



 だが黒澤蓮は一人にあらず。


 俺には白峰楓蓮という、もう一人の人間がいるんだよ。

 表向きにはまだ友好的に話せそうな楓蓮がいるんだ。


 まずはじっくりと彼女を知るほうが先決だ。

 何であんなにやさぐれてしまったのか、理由を聞きたいもんだ。


 話をちゃーんと聞いてそれでも単なるクソ野郎だったら、俺が引導を渡してやる。

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登場人物紹介

キャラのプロフィールは、章の始まりにも記載しています。


ここに記載されているのは主要人物です。

その他の登場人物は章の始まりなどに記載しています。


読者視点は神視点。

物語の中の人達が知らないことを全部見る事ができます


また、二章からはキャラの心の声まで聞こえます(フキダシが灰色)

 ★ 黒澤 蓮 くろさわ れん


 本編の主人公。高校一年


 男女入れ替わり体質。
 
 弟の凛と共に、新天地で新たに生まれ変わろうと、楽しい学校生活を送ろうとする。友人作りに重きを置き、人との付き合いにはとても慎重である。


 とても弟思いの良いお兄さん(お姉さん)

 ★ 白峰楓蓮 しらみねかれん


  蓮の女性の姿。白峰というのは偽名。

  黒澤家とは繋がりを見せないように演じる。


  心の中は男の子なので、女の子のファッションやらに興味が無い。

  とても美人なのにあまり自覚がなく、女性の姿はオマケだと思っている。

 ★ 黒澤 凛 くろさわりん


 小学校六年生


 男女入れ替わり体質。

 

 兄である蓮を慕い、とっても素直で女の子のような性格。
 ことある毎に兄に甘えてしまい、いつまで経っても、子供のままなので、蓮は凛の将来をとても心配している。



 ★ 白峰 華凛 しらみねかりん


 凛の女性の姿。

 外部との接触が無いので、彼女の存在を知るのは家族だけ。

 楓蓮と違い、おしゃまさん。


 ★ 美神聖奈 みかみせいな


 高校で蓮と同じクラスとなる。実は小学四年生までの幼馴染。


 容姿端麗。成績優秀。運動神経抜群。リーダーシップ抜群。お金持ち。

 など、全てを兼ね備えている人。


 二人目の主人公。

 ★ 白竹 美優 しらたけ みゆう


 蓮と同じクラスとなる。ピンクの髪が目立つ美人。

 自分の家の喫茶店で働いており、メイド服で接客をこなす。


 学校と喫茶店では、雰囲気がまるで違うのには理由があり……

 

 三人目の主人公。 

 

 ★ 白竹魔樹 しらたけまき


 蓮の隣のクラス。美優は双子の姉弟。


 学校ではとてもクール。喫茶店では男の娘?

 双方を知る蓮にとっては、非常に疑問な人物。


 四人目の主人公

 ★ 染谷龍一 そめやりゅういち


 蓮と同じクラスとなり、前の席という事で付き合い始める。

 わりと積極的。学校ではいつも笑顔で誰にでも優しいが……

 

 五人目の主人公

 ★ 平八 へいはち 


 聖奈専属の運転手。

 黒澤家の秘密を知っており、蓮の親である麗斗(れいと)とは旧知の仲



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