文字数 524文字

 きみはほんとうのところ、ぼくたちには悪魔なのか女神なのか判断がつかなかった。
 子供を何人も狩ったそのおぞましい夜、ぼくたちは闇夜にまぎれて川でからだを洗っていた。汚れた衣服を穴に埋めたたとで。(当の子供たちをどうしたか書くことはおそろしい冒涜だ)
 友だちの一人が叫び声をあげた。ぼくともう一人の友だちとでそいつの口や痙攣的に動く腕をおさえる。こんなことをやっていたら神経をやられる。それは当然のことだし、自死を選ばないのは前もいったように、悪夢は自分ではどうにもできないものだからだ。どんな方法でも抜け出せないのだ。
 ぼくたちは友だちの叫びや呻きをどうやら抑えることができたが――こんな人気のない森のようなところでも、だれかに見られないとはかぎらないのだ。ぼくたちともう一人の友だちは必死だった――しかしどうしても、とり憑かれたような執拗さの努力で彼は腕を上げようとする。そのうち彼がなにかを指差そうとしているのに気づいた。
 ぼくたちが解放した腕、友達がそのふるえる指でさした方向には、白くぼんやりとした、そう白鷺のような姿がみえた。ひどく大きな鳥だ。それでも鳥にすぎない。そう思って安堵したが、その白鷺とみえたものは立ち上がって人の姿になった。
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