第十二話 天上の魔王、居直り勇者
文字数 2,296文字
当たり前だ。溢れんばかりの資金力がある俺から見れば、王など、所詮は手のひらの上の駒の一つにすぎん。我が魔境銀行は、たった一行で、王国政府が発行する国債の45%もの巨額を引き受けている。もはや王国の財政は、我が行の支援がなければ成り立たないであろう。ある意味、この王国自体を本当のところは私が経営しているようなものだ。
見よ、そこに飾ってあるのはシーレイス――世界で最も有名な絵画の一つと言われている。もちろん真作だ。時価にして4億5000万G。庶民の平均的な月給がせいぜい1万Gであるこの世界で、あのたった一枚の紙切れにそれだけの値札が付いていることの意味を、よくよく噛みしめてみるがいい。
フッ、貴様が敵ならこの私も塩を送ってやるのは躊躇するところだ。だが今の貴様は私の敵ですらない。地獄の釜の底で這いつくばる勇者と、万里の天上で青天白日に暮らす私とでは、比べるのもおこがましい。たとえ一時でもこの私を追い詰めた記憶は、ほんの奇跡だったとして消し去ったほうがいいぞ。
契約は契約だ。返せないのなら、破産を選択するというのだな? 契約上、武器屋『ドリームアームズ』代表者の肝臓を売却することになっている。その上で10年間にわたって、ボロ雑巾のように酷使してやろう。クククククク……勇者さえ破産させてしまえば……いよいよこの私こそが世界の真のリーダーになるということだ。
だからこそ、返して欲しいなら私にお金を貸してください。武器屋の買収で98万Gも使ってしまった私には、もうお金はありません。でも仕入代金とかがあれば、パーティーのみんなで頑張って、『ドリームアームズ』を盛り返してみせるんです。
だから私に、1000万Gを貸してください!
もともと武器屋『ドリームアームズ』が魔境銀行から借りているお金は2650万Gだったはずです。だから今回、新しく1000万Gを借り入れたとすれば、合計3650万Gの借入金ということになります。その代わり、1年後に借入金3650万Gを、5000万Gにしてお返しします!
わずか1年待てば3650万Gが、5000万Gにだと!?
むうう、まさかの年間利回り73%……! 銀行家として実に実に魅力的な……!
ぐぬおおおおお……断れる……はずがないッ……!
勇者よ、それは誠の取引なのか!?