第一幕(5)

文字数 654文字

(弱々しく)僕は、今、どこにいるのですか。どうやって、ここへ来たのですか。
今言ったとおりですよ、ミスター・アイ。プレファン強制収容所から5キロ。私が運んできたのです。
この、そりに乗せて?
そうです。
どうやって、これを? このテントと、小さなストーブも?
あるかぎりの所持金と交換しました。
わからない。――ここに、そりがあって、僕がいて、あなたがいる、エストラヴェン。僕はあなたを信じるしかない。だけど、わからない。なんのために?
なんのために、と言うと?
なんのために、僕を助けてくれたのですか? こんなことをして、あなたに何の利益があるのですか?
(沈黙の後に)私は、つぐないたいと思ったのです。
何を?
さまざまなことを。
(涙ながらに叫ぶ)もっとはっきり話してください! 僕はそういう、あなたがたの文化特有のまわりくどい言いまわしには、慣れてないんです!
(怒りを抑えて)ご指摘のとおり、私の最大のあやまちは、自分の目ざすところをあなたに明確に伝えなかったことです。私も慣れていないのですよ、言わなくてもわかりそうなことをいちいち説明するのにはね。
あなたの目ざすところって?
あなたと同じですよ、ミスター・アイ。同盟です。おわかりでなかったとでも?
わかってましたよ。
だが、信じてはいなかった。
ええ。
おかしな話ですね。このゲセンの星の上で、あなたを信じているのは私一人だというのに、その私を、あなたは決して信じようとしない。
沈黙。
すみません……

沈黙。

(おそるおそる)僕たちは今から、どこへ向かうのですか?
(短く)西へ。

音楽。

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

ゲンリー・アイ

地球出身。惑星同盟《エキュメン》の特使。惑星《冬》ことゲセンに単身降り立ち、カーハイド帝国の皇帝に開国をうながす。長身。性格は誠実で直情的。推定される容貌はアフリカ系。男性。

セレム・ハース・レム・イル・エストラヴェン


ゲセン出身。帝国カーハイドにおける《王の耳》(宰相に相当する最高実力者)。ゲンリーの使命の重要性をただ一人理解する。やや小柄(ゲセン人の平均的体躯)。性格は慎重かつ大胆。推定される容貌はアジアあるいはエスキモー系。中性(両性具有)。

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色