「少し不思議な夏の夜」海月海星

文字数 822文字




少し不思議な夏の夜




  今日は1年で1番夜が短い日。夜が好きな私にとっては迷惑でしかない。そんな大げさに違うわけじゃないんだけどなんか気分的に。とりあえず日課である夜の散歩に出かけることにした。普段行ったことのないコースを散歩しようと思う。せっかくだから短い夜を楽しまなくちゃ。




 しばらく歩いていると小高い丘があった。長い間この町に住んでいるが、こんな所に丘があったのは知らなかった。




 登ってみると、このあたりの夜景が綺麗に目に映る。そして、空に近づいたので夏の星座がよく見えた。こんな素敵な場所があったなんて……。夏至ということで、いつもとコースを変えたのがよかったのかもしれない。夏至に感謝しなくては。




 ふと周りを見渡すと、丘の端のほうに人影が見えたので近づいてみた。どうやら男性のようだ。近よってみると、月明かりに移されたその顔はこの世のものとは思えないほど整っていた。




 私に気付いたその人はこちらを見ると、やわらかく微笑んだ。




「こんばんは」




そのあまりに美しい微笑みに、私は緊張してしまいうまく言葉が返せなかった。




「あっ、ここんばんは」




「夜が短いということは、肉眼で星をみれる時間も短いんですよね。少し寂しいですが、今日より短くなることはないと考えると明日以降が楽しみです」




その人はそれだけ言って、去ってしまった。




 なんだったんだろうか。疑問が多すぎるが、明日もこの場所に来れば会えるかもしれないと思い、家に帰ることにした。その不思議な魅力に私は惹かれていたのだ




 次の日の夜、私はあの人にもう一度会いたいと思い、あの丘に向かうことにした。




 しかし、昨日丘があった場所には普通の街並みが広がっているだけだった。




当然、あの青年もいない。




 あれは一体なんだったのだろうか。夢だったのかもしれない。




 1年で1番夜が短い日に起きた、少し不思議なできごとだった。




PN:海月海星

 

 

2018/06/20 09:23

smallboy

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