一年目 十月上旬 某県警機動隊員・山崎修司

文字数 813文字

 一体、何の為の訓練なのか?
 突如として、機動隊から選抜メンバーが選ばれ、二〇人一チームとなり()()()一週間の「特別訓練」が行なわれる事になった。
 「一応は」とは、どんどん期間が延ばされ……最早、いつ、この訓練が終るか見当も付かなくなった、と云う意味だ。
 どうやら……このチームのメンバー以外にも「特別訓練」の対象となった者は居るらしいが……他に何チームが選抜され、どこで訓練が行なわれているか、俺達には知らされていない。
 訓練期間中は、スマホは取り上げられ、外部との連絡は禁止。
 宿舎には新聞・雑誌・TV一切なし。ついでにネットも使えない。
 やっている事は……どう考えても「新人いびり」だ。そして、高校や大学の体育会系の部活や、自衛隊なんかでも同じだろうが、「新人いびり」の正体は……「洗脳の第一段階」。
 山の中を歩かされ続ける。倒れて動けなくなるまで。
 体を鍛える為じゃなく、心を折るのが目的。
 だが……何で、ウチの県警の機動隊の中でも「鬼」と呼ばれてる所に三年も在籍してる俺が、生意気で世間知らずなのに、自分が生意気で世間知らずである事に気付いてない馬鹿新人のように「心を折る」為の訓練をしなきゃいけないんだ?
 最初の何日かは、久し振りに疲れで飯が喉を通らなかった。
 だが、今は……足りない。
 わざと足りなくなる量の食事しか支給されていない。
 なら……どうするか?
 弱肉強食だ。
 そして、弱者とは少数派で、強者とは多数派だ。
 いつしか俺達のチームは、2つの派閥に分かれていた。
 ……教官に、そう仕向けられた気がする……でも……。
 何故だろう? 弱肉強食しか腹を満たす方法は無く、弱者とは少数派なのが判ってるのに、圧倒的少数派の筈の教官に逆らう気が起きない。
 そして、2つの派閥は……1つは俺達、教官に従う多数派と、教官に訓練の目的やら何やらの説明を求める少数派だ。
 今の所……多数派7に対し……少数派が3と言った所か……。
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