第25話 第四章 『冬の陽ざし』② 調査
文字数 1,123文字
結局、故障したリフトが復旧するまでには、その後、数週間も掛かってしまう。
リフト会社から派遣された調査員が点検したところ、驚いたことに縄状の頑丈なワイヤーが所々で、まるで何か極めて強い電流にでも曝されたかのように焼き切れていた。
「・・何があったんだ・・物凄い威力の落雷でもあったのか・・」
もちろん猛吹雪の間、そんな報告はない。
が、それを聞いて、一部関係者の間では、巨大花火の打ち上げと同時に山頂付近の上空に何か稲光のようなものを見た・・などと言い出す者もいた。
そして年初めからそんな不測の事態に直面していたスキー場の関係者達は、その調査結果に真っ青になった。が、同時に胸をなで下ろした。
もしそんな状態でリフトが何事もないように動き、大勢のスキー客達を乗せたまま脆くなっていたワイヤーが切れたりしたら、大事故になるところだった。
その日、克也は父親の友人でもある警察官の平山に付いて、ゲレンデ側の森の入り口からコテッジに向かっていた。他には二人、コテッジの管理会社の所長の中村、その部下の今野が一緒だった。
コテッジへと続く林道は深い雪のため閉鎖され、車が入れない。そのためクロスカントリー用のスキー板を履いて森を抜けることにした。
「・・まあ・・肝心なのはこれからの人生だからな」
「・・はい」
克也の足の状態は競技スキーを続けるのは無理だと判断され、スポンサー契約も打ち切られていた。が、卒業後は長年世話になったその企業に就職することが決まっていた。
克也の両親同様、平山もこれまでの競技生活を応援しつつ見守っていた。
それから話題は自然、三年前の川久保氏の失踪のことになった。
「・・じゃあ、平山さん。全く俺らの話を信じていなかったって訳でもないんですか・・」
「いや、実は何となく気になっててな。そりゃかなり怪しい話だとは思ってたけど・・リフトのワイヤーが焼き切れてたって云うのを聞いてな・・」
やがて木立ちが途切れ、前方が開けた。
「誰かいますかね・・」
「さあ・・煙が目撃されてから、もう一月半くらい経ちますからね」
深い森の中に建つ真っ白い雪を被った大屋根のコテッジ・・その辺りを一面の深い新雪が取り巻いていた。その上には足跡一つない美しい純白の聖域だった。
一行はそんな気持ちのよい新雪の上をコテッジに近づいて行った。
問題の煙突からは煙が出ている様子はなく、外からは誰かが住んでいそうな息遣いのようなものもない。
一行はコテッジの前でスキー板を外すと、数段高くなった入口のテラスに上がった。その上にもまだ吹雪の影響らしい雪の吹き溜まりがあった。
晴天の日は続いていたが、二月に入っても依然、気温は低いままだった。
リフト会社から派遣された調査員が点検したところ、驚いたことに縄状の頑丈なワイヤーが所々で、まるで何か極めて強い電流にでも曝されたかのように焼き切れていた。
「・・何があったんだ・・物凄い威力の落雷でもあったのか・・」
もちろん猛吹雪の間、そんな報告はない。
が、それを聞いて、一部関係者の間では、巨大花火の打ち上げと同時に山頂付近の上空に何か稲光のようなものを見た・・などと言い出す者もいた。
そして年初めからそんな不測の事態に直面していたスキー場の関係者達は、その調査結果に真っ青になった。が、同時に胸をなで下ろした。
もしそんな状態でリフトが何事もないように動き、大勢のスキー客達を乗せたまま脆くなっていたワイヤーが切れたりしたら、大事故になるところだった。
その日、克也は父親の友人でもある警察官の平山に付いて、ゲレンデ側の森の入り口からコテッジに向かっていた。他には二人、コテッジの管理会社の所長の中村、その部下の今野が一緒だった。
コテッジへと続く林道は深い雪のため閉鎖され、車が入れない。そのためクロスカントリー用のスキー板を履いて森を抜けることにした。
「・・まあ・・肝心なのはこれからの人生だからな」
「・・はい」
克也の足の状態は競技スキーを続けるのは無理だと判断され、スポンサー契約も打ち切られていた。が、卒業後は長年世話になったその企業に就職することが決まっていた。
克也の両親同様、平山もこれまでの競技生活を応援しつつ見守っていた。
それから話題は自然、三年前の川久保氏の失踪のことになった。
「・・じゃあ、平山さん。全く俺らの話を信じていなかったって訳でもないんですか・・」
「いや、実は何となく気になっててな。そりゃかなり怪しい話だとは思ってたけど・・リフトのワイヤーが焼き切れてたって云うのを聞いてな・・」
やがて木立ちが途切れ、前方が開けた。
「誰かいますかね・・」
「さあ・・煙が目撃されてから、もう一月半くらい経ちますからね」
深い森の中に建つ真っ白い雪を被った大屋根のコテッジ・・その辺りを一面の深い新雪が取り巻いていた。その上には足跡一つない美しい純白の聖域だった。
一行はそんな気持ちのよい新雪の上をコテッジに近づいて行った。
問題の煙突からは煙が出ている様子はなく、外からは誰かが住んでいそうな息遣いのようなものもない。
一行はコテッジの前でスキー板を外すと、数段高くなった入口のテラスに上がった。その上にもまだ吹雪の影響らしい雪の吹き溜まりがあった。
晴天の日は続いていたが、二月に入っても依然、気温は低いままだった。