第４８話　福田史子～ゴミ置き場でお宝発見！～

　私は天神町のゴミ置き場に行き、西園寺が出したゴミ袋を探した。

　小洒落(こじゃれ)たフィンランドロゴの紙袋があったので、すぐに見つけられた。
お弁当の残りや割り箸、ティッシュペーパーをかき分け、髪の毛を集めた。西園寺のものかどうかはわからないけど。
それと一緒に手紙らしきものを２つ見つけ、私はいったんサロン梯子に持ち込んだ。

　１つは西園寺のお店で買ったであろう洒落た便せん。アイボリーの紙にブルーのインク。手書きの手紙だった。


『初めて行ったライブ、最高でした！　

バイブの曲は全部私に刺さりまくりです。サイ君はどうして私のことがわかるんですか？　
私はいつも本当の自分を殺していて、毎日自分自身を処刑していて、サイ君がライブで語った『地磁気は乱れています』そのものなんです。
家も学校も私には戦場で『ドミネーション』をいつも脳内でリフレインして勇気をもらっているのです。
私はサイ君に救われました。今度友達連れてスローターハウスに行きますね。
“生まれ変わっても見つけるって約束”　ですよ！　
いつもありがとう　サイ君へ　』


　なんだこれ、つまんない手紙。読んで損した。ただのファンの手紙か。
生まれ変わっても見つける？　なに言ってんだか、処女が。
死んだら終わりに決まっているだろ。私は確実にそうだ。もう何度も呪いに手を染めてしまっているから。
　こっちはどうかな。無地の紙にパソコンで打ち込んでいる。素っ気ない。



『　西園寺　要　様

　あなたに手紙を出すのはこれで２通目になります。あなたを救うためこれから何度でも出すつもりです。

　私は小学５年生のとき、ショッピングモール『ハーモニー』１階多目的トイレであなたに猥褻行為をされたものです。

　私は今でも多目的トイレを見ると動悸がしてきます。私が原因で家族が不仲になるのを避けるため、一人暮らしをしています。
それでも私は憤(いきどお)りを手放し、あなたのことはすでに赦(ゆる)しています。

　だって報復は神の仕事ですから。

　私はあれからたくさんの本を読み周りの人の話に耳を傾け、理解したことがあります。
あなたは自分の体の一部がコントロールできないコンプレックスで、あのような卑屈な行為に及んだのではないでしょうか。

　あのときあなたはまだ中学生で、ひどく悩んだことでしょう。可哀相でしたね。
ですが、卑屈な行為をしても解決にはなりません。あなたも後味の悪い思いをしたのではないですか？

　こだわればこだわるほど、悩めば悩むほど、あなたの体は制御不能となるでしょう。
でも大丈夫です。今からでも遅くはありません。
恥ずかしがらずに勇気を持って病院で治療をすべきです。
あなたの人生はまだ長いのですから。

近くの泉水地域医療センターにED外来があります。泌尿器科へ行ってください。それを伝えたくてまた手紙を出しました。

（それとももう既に治療を受けているのでしょうか？　あなたがコンプレックスから救われているのなら、私は神に感謝します）

　あなたに神のご加護がありますように。
あなたが卑屈なコンプレックスから解放されますように。
あなたを見つけられてよかった。
あなたを見守り、あなたが罪を重ねないよう、これからも祈り続けていきます』



　雑巾のように捻(ひね)って捨てられていた手紙。
漢字が多くて読みにくいし、ＥＤってなに？　
近くにいた服部に聞くと、困った顔して頭を掻き服部はボソボソ話した。

　なんだ、西園寺はインポなの！？　
あんなに気取っているクセに。じゃあつまんない。術をかける前でよかった。
人形の無駄遣いをするところだった。インポのくせによくもまあ、あんなスカした顔ができるもんだわ。面白すぎる。お宝発見だわ。

　さっそく根津さんに教えてあげようっと。