第3話(11)

エピソード文字数 1,446文字

「必ずや、なんとかします。だから独りで逃げてください」

 俺が命を懸けたら、少しくらいは足止めできる。その間にリョウから逃げて、レミアとフュルを待ってくれ。

「今起きてる出来事は、こっちが撒いた種なんです。気にせず行ってください」
「……貴方って、優しいのね。初対面なのに惚れちゃったわ」

 彼女は俺の左頬に触れてから降り、一歩前に出る。
 こ、この人っ。戦ってくれようとしている!

「や、やめてくださいっ!! 2人死ぬより1人死ぬ方が得ですから!!
「…………男の子くん、ここでの選択肢は二つだけじゃないの。三つ目として、二人とも生き残る、があるのよ」

 大和撫子さんは柔らかく目を細め、角族がいる方向に右手を伸ばす。
 それは、その通りだけど……。さっき負けた人が、本気になった相手に勝てる道理がないぞ……っ。

「かかかっ。ボスにボロ負けしたのに、全員を倒すだって? 気が強い女だなっ」
「リョウさん、ますます気に入ってますね。何が何でも欲しくなってますでしょ?」
「おうともさ。ボスがマジになったら消し炭になるから、ジブンらでやるぞっ!」

 リョウが仲間の4体を従え、こちらに向かってくる。
 マズイっ。このままでは少女さんは捕えられ、酷い目に遭ってしまう!

「たっ、戦っちゃいけませんっ! 俺が時間を稼ぐから逃げてっっ!!
「…………貴方って、本当に他人想いなのね。こんな人は珍しいわ」
「なに呑気に喋ってるんですか! アナタが捕まったら大変なことになるんで、早く逃げてっ!!
「ふふ、心配してくれて有難う。だけどね、男の子くん。本気を出したら強いのは、あちらだけじゃないのよ?」

 彼女は上品に片目を瞑り、右手首を下から上へと振る。

「この攻撃を、味わえるかしら? 『ブレイク・チェーン』」
「お前、魔術か魔法も使えるのか! この上なくジブン好みで」

 リョウはこれ以上、能天気な台詞を紡げなかった。
 なぜならば――。大和撫子さんの手から黒い鎖が5本飛び出し、角族5人の腹を貫いたからだ。

「ぁ……? なにが、おき、て…………」

 5人が顔を下に向けようとしていると、ヤツらの身体が霧散。ちゃんと肉体があったのに、霧のように消えてしまった。

「やっぱり誰一人、攻撃を理解できなかったようね。この人達の長さんは、私の攻撃を味わえるのかしら?」
「ふん、リョウ達を屠ったくらいでいい気になるなよ。オレ様は、あの者の十倍強い」

 ボスの左手には真紅の斧が現れ、深紅のオーラが周囲を漂う。
 こ、これがコイツのフルパワー……。少しでも気を抜いたら、迫力だけで吹き飛ばされそうだ……っ。
「さっきは、実力の十分の一も出していない。あのオレ様とこのオレ様を同一視していると、更に痛い目に遭うぞ?」
「ご忠告痛み入るわ、リーダーさん。ではそのお礼として、こちらは二つ情報を差し上げるわね」

 こんな状況下なのに、大和撫子さんは平然として返答。細めで美しい左の指を、2本立てた。

「ぁぁ? なんだ?」
「情報、その1。私は、実力の1000000000000分の1も出していなかったのよ?」

 言下、彼女の姿が消える。

「次は、その2。私は貴方の部下の、10兆倍は強いわよ? と言っても、もう聞こえないでしょうけど」

 再び少女の姿を目視できた時、彼女はヤツの背後で全てが黒い剣を握っていた。そしてボスの方はというと、胴体から首が離れて宙を舞っていた。
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登場人物紹介

色紙優星 16歳の少年


高知県生まれの主人公。

リリウという神様の聞き間違えで魔王使いになってしまい、おまけに『究極奥義』と呼ばれる力を何個も持ってしまった高校生。優しく他人想いなのだが、彼はとあるセンスが全くないのであった……。

黒真レミア 16歳の少女


魔王、でありながら伝説の勇者の能力を持つ。冷徹でクールな容姿と声音を持つ美少女だが、性格はほわほわでお子ちゃま。『にゅむ』という独特な言葉を多用し、時にはにゅむのみで会話を行おうとする。例「にゅむーむ。にゅむ。にゅむりん」。

なお愛用の武器である聖剣は魔王の天敵であるため、使うと痺れる。

金堂フュル 16歳の少女


伝説の勇者、でありながら伝説の魔法使いの能力を持つ。元気一杯の猫っぽい女の子で、高知県の英雄・坂本竜馬の大ファン。そのせいで『ぜよ』と中途半端に覚えた土佐弁を使い、主人公のことは『師匠』、仲間のことは名前のあとに『先生』とつけて呼ぶ(例えばレミアの場合はレミア先生)。

なかなかにおバカな女の子。

虹橋シズナ 17歳の少女


伝説の魔法使い、でありながら魔王の能力を持つ。大和撫子然とした容姿を持つ美少女であり、主人公の義理の従妹。

重度の怒られ好き。

とにかく変で厄介で面倒くさい人。

茶操ユニ 18歳の少女


伝説のドールマスター、でありながら伝説のプリーストの能力を持つ。キグルミ族という一族の人間で、閉園したテーマパークのキャラクター・二足歩行ウサギの着ぐるみを着ている。口癖は、ミョン。

実はお笑いにうるさく、親戚は某有名人。

プリースト神 年齢不明


茶操ユニが持つプリーストの杖に宿る、プリーストの神様。

実は……。

橙式エイリ 14歳の少女


伝説のモンスターテイマー、でありながら伝説の召喚士の能力を持つ。所謂スケバン然とした容姿と声を持つが、グループ最年少の中学生でみんなの妹的存在。でもレミアやフュルよりずっとまともで、ヤツらの方が妹的存在な気がする。

野菜が大好きで、とても詳しい。

タンザ・クー 年齢不明


橙式エイリの召喚獣で、俳句世界(はいくわーるど)の王女。

タンザが姓で、クーが名。

二万年後に、地球の傍に誕生する世界からやって来た。


色紙育月 16歳の少女


高知県大豊町在住の、優星の従妹。中学卒業と同時に本格的にピーマンの生産を始め、今ではテレビの取材を受けるほどになっている。


薄幸の美少女然とした容姿と、従兄想いの優しい性格が自慢の従妹です! by色紙優星

謎の声 年齢不明


優星にだけ聞こえる、不思議な声。

なぜか正体を明かそうとしない。

リリウ 神様


願いを聞き間違えて、優星を魔王使いにしてしまった神様。

神様の世界で流行しているゲームに夢中で、神様のお仕事はほとんどしない。

とってもダメな、神様(?)な神様。

麗平活美 16歳の少女


ストロベリーブロンドのドリルヘアーが特徴の、優星のクラスメイト。

お嬢様然とした容姿で気品があるように見えるが、非常に活発。実は……。

空霧雲海 16歳の少年


頼れる兄貴系の容姿と性格を持つ優星の同級生であり、悪友であり、重度のオタク。

作中に登場する名曲(迷曲)を作った人。

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