第1話

文字数 2,028文字

 世界で一番許せないのは私。
 だってそうじゃない? 私が生きていると誰の特になるの?
 私は狂っている。私自身の行動に……もう嫌気がささしてきた。
 例えるなら……そうね、私が動けば皆も動く。なんかそんな感じ。
 私がふざけ半分で始めた遊びがクラス全体に広まって……ホームルームの議題になったこともある。
 そして……誰もがやっていないなんて言い出して、私だけがやったことにされる。
 二人一組でやるような遊びだってそうだった。
 二人いないと成立しない遊びなのに、名前が挙がったのは「私」だけ。
 だからと言って私は告げ口なんかはしようとは思わなかった。
 でも……心の奥底からは気が付いてほしいと望んでいたのかも知れない。
 気付かれないのであれば、それでもいいと私は思っていた。
 そう、許せないのは私なのだから。私のまいた種なのだから。
 結局、私はそういう「種まき」が得意だったのかも知れない。
 誰かからの嫉妬……そういうものかも知れない。
 そういう私が本当に嫌だ。
 なぜ生まれてきてしまったのかも恨んでしまう。
 そんな私を許せなくて、幼いころに鎌で首を切ったこともある。
 この時からだろう……私の自傷行為が始まったのは。
 血を見るとなんだか落ち着く。全部血が抜けてしまえばいいのにと。
 自傷行為は「生きてる証」としてやるケースが多いと聞く。
 でも、私の場合はその血が汚らわしく見える。
 私の中にも赤い血が流れているのだと。
 いっそのこと緑色だったらどれだけ救われたか……そんな気もする。
 何をやってもうまく行かない。いやうまく行きすぎて周りを巻き込んでしまう私が嫌だという方が正しいのかも知れない。
 せっかくできた友達も、親しくなるにつれて私が許せなくなった。
 なぜかは分からない。けど私に近づきすぎたらろくなことが無いことの警鐘なのかも知れない。
 突然私は絶交した。
 何の前触れもなく……ただただその友人に近づきたくなかった。
 だから……だから、関係を断ち切って友人を守ろうとしたのかもしれない。
 いや、私自身の心に触れてほしくなったから……。いや、私のエゴなのかも知れない。
 そんな私の交友関係。
 どうしてばっつりと関係を切ってしまったのかは、今でもわからない。
 多分、怖かったから。だと思う。

 私は私自身が世界で一番許せない。
 なのになんで皆はそんな私を慕うのだろう?
 こんな……嘘で塗り固められた私を……。
 嘘……なんだろう?
 結局のところ、分け隔てなく接することが出来る私なのかも知れない。
 でも、そんなの嘘。元の性格を知ったらみんな逃げていくでしょう。
 本当の私の性格は醜いと思う。
 なぜ「思う」としか言えないのか。
 それは本当の私を封じ込めているから。
 私でも触れることが出来ない本当の私の心……。
 他人になんか触れさせたくない。
 触れられたら……きっと私は壊れてしまう。
 きっと……その人を依存してしまう。
 依存してしまったら……私はその人なしでは生きていけなくなるだろう。
 もし……その人に裏切られたら、私はどうなるだろう?
 自死を選ぶ? それともその人を殺してしまう?
 きっと、私の選ぶ方法は後者だろう。
 だから……私は人とはあまり関わりたくないと思ってしまうのだろうか?
 だから……ある日人を付け放してしまうのだろうか?

 こんな私だから孤独が十分なのかも知れない。
 人からひっそりと生きるような……。
 でも、周りは許さなかった。
 私は……目立ち過ぎてしまうようだった。
 友達を作らないと決めて、都会に出た私は友達を作ることはしようとしなかった。
 けど……ある日声をかけられ、輪が広がり……なぜか私中心のグループが出来てしまった。
 孤独になりたかった私。
 でも、なぜこんなに人を寄せ付けてしまうのかが全然わからない。
 本当は孤独は嫌だった。
 一人になるのは嫌だった。
 一人は寂しい。
 人間は一人でなんか生きていけない。わかってる。
 寂しかった……本当の私を受け入れてくれる人……そんなのを望んだのかも知れない。
 結局、一人ではどうすることもできなかったのかも知れない。
 私はまた仮面をかぶったんだと思う。
 だから……きっと仮面をかぶった私に皆は魅了されているだけな気がしている。
 だから……私は仮面を外せないでいると思う。

 私のかぶった仮面……。
 いい子で居ること。
 でも、その仮面にどんどんエネルギーが吸い取られているのはよくわかる。
 そんな生き方してるから苦しくなるんだと思う。
 本当はこんな世界からサヨナラしてもう私の事を皆の記憶からかき消してしまいたい。

 早くこの世からサヨナラしたいのに……。
 死ぬのが怖い。
 そんな臆病でウソツキな私は、世界の誰よりも絶対に許せない存在だ。
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