第8話 自分探し・ミッション
文字数 1,505文字
『アヴェ・マリア』のチャイムがその日の学校生活の始まりを告げる。
担任は女性の先生で関 ガラシャという名前のシスターだ。日本人離れした名前だけどこれは洗礼名らしい。
黒い服にベールを被り、髪の毛を隠している。
朝礼の後に礼拝の時間があり、関先生が聖書の話をした。
毎朝、この礼拝の時間があるのか? よく話す内容が尽きないな。
一時限目の授業が終わり、トイレに行こうかと考えていたら「お手洗いに行きましょ」とヨシアさんから誘いがあった。やっぱり女子は連れ立ってトイレに行くみたいだ。
イブキさんの身体にも慣れてきて、オシッコの所作も流れるようにできるようになった。
個室から出て手を洗っているとヨシアさんが慌てて叫んだ。
「イブキさん、スカート! スカート」
ん? スカートがどうしたんだろう?
ヨシアさんが指差すお尻の方を見ると、スカートがパンツに巻き込まれていた。後ろから見たらパンツ丸見えの状態だ。
「わっ、わっ」
急いでスカートを整えた。
「もう、本当にイブキさんは私がいないとダメなんだから」
一人だったら間違いなく、パンツ丸見えの状態で廊下を歩いていたことだろう。
恥ずかしさで顔が赤くなった。
午前中の授業が終わり昼休み。
みんなで食堂へ行き昼食を食べる。
この身体の持ち主である後藤伊吹さんを演じるために、みんなから情報収集をしてみることにした。
「ねぇ、記憶を失う前のボクってどんな人だった?」
「そうねー」口火を切ったのはステマのヨハネこと佐藤夜羽さんだ。
「結構、ルールをきっちり守る人だよね。
全然車のいない道路でも絶対信号無視はしないで赤信号で止まっているような。
それに付き合う私も結構いい奴だと思わない?」
「勉強はできたほうね。私といい勝負」福井のヨハネこと鈴木依葉根さんが眼鏡をくいっと上げながら言った。
「優しい人だったよ」甚目寺のヨハネこと高橋余波音さん。
「私が宿題できなくて『この世の終わりよー』と言っていたら写させてくれたし」
おぼろげながらイブキさん像が見えてきた。
優等生っぽいキャラみたいだけど、ボクに演じきれるだろうか?
「無理して前のイブキさんに合わせなくてもいいのよ」とヨシアさん。
「以前のイブキさんは完璧すぎて恐れ多いところがあったけど、今のイブキさんは何というか……角が削れて取っつきやすくなったみたいな。
私は今のままのイブキさんも好きよ」
「あ、あ、ありがとう」
女の子から好きなんて言われたことがないボクはその一言でドギマギした。
「アンナさんはどう思う?」佐藤さんがそれまで黙っていた池田杏奈さんに振った。
お風呂で見かけた時は大きな胸が注意を引いたが、セーラー服越しでも大きなことがよく分かる。
「わ、私……。あの……。
……土曜日の約束覚えてますか?」
「土曜日? ごめんなさい。昨日以前のことは全然覚えていないんだ」
「……そうですか」
ボクと入れ替わる前のイブキさんはアンナさんと何か約束をしていたのだろうか?
アンナさんが消沈してうつむき加減になってしまった。小さな身体が更に小さく見える。
「あー、あれね。大丈夫。私が覚えているから。イブキさんを連れて行くわ」
ヨシアさんが代わりに答えた。
アンナさんは顔を上げ、嬉しそうに左手の甲を右手でチョップした。
「……ありがとう」
「えっと、土曜日にいったい何が?」
「ふふ、お楽しみ。他に予定を入れないでね」
ヨシアさんはボクが困った顔をするのが好きなようだ。
午後の授業もこなし、入れ替わり二日目の学校が終わった。
担任は女性の先生で
黒い服にベールを被り、髪の毛を隠している。
朝礼の後に礼拝の時間があり、関先生が聖書の話をした。
毎朝、この礼拝の時間があるのか? よく話す内容が尽きないな。
一時限目の授業が終わり、トイレに行こうかと考えていたら「お手洗いに行きましょ」とヨシアさんから誘いがあった。やっぱり女子は連れ立ってトイレに行くみたいだ。
イブキさんの身体にも慣れてきて、オシッコの所作も流れるようにできるようになった。
個室から出て手を洗っているとヨシアさんが慌てて叫んだ。
「イブキさん、スカート! スカート」
ん? スカートがどうしたんだろう?
ヨシアさんが指差すお尻の方を見ると、スカートがパンツに巻き込まれていた。後ろから見たらパンツ丸見えの状態だ。
「わっ、わっ」
急いでスカートを整えた。
「もう、本当にイブキさんは私がいないとダメなんだから」
一人だったら間違いなく、パンツ丸見えの状態で廊下を歩いていたことだろう。
恥ずかしさで顔が赤くなった。
午前中の授業が終わり昼休み。
みんなで食堂へ行き昼食を食べる。
この身体の持ち主である後藤伊吹さんを演じるために、みんなから情報収集をしてみることにした。
「ねぇ、記憶を失う前のボクってどんな人だった?」
「そうねー」口火を切ったのはステマのヨハネこと佐藤夜羽さんだ。
「結構、ルールをきっちり守る人だよね。
全然車のいない道路でも絶対信号無視はしないで赤信号で止まっているような。
それに付き合う私も結構いい奴だと思わない?」
「勉強はできたほうね。私といい勝負」福井のヨハネこと鈴木依葉根さんが眼鏡をくいっと上げながら言った。
「優しい人だったよ」甚目寺のヨハネこと高橋余波音さん。
「私が宿題できなくて『この世の終わりよー』と言っていたら写させてくれたし」
おぼろげながらイブキさん像が見えてきた。
優等生っぽいキャラみたいだけど、ボクに演じきれるだろうか?
「無理して前のイブキさんに合わせなくてもいいのよ」とヨシアさん。
「以前のイブキさんは完璧すぎて恐れ多いところがあったけど、今のイブキさんは何というか……角が削れて取っつきやすくなったみたいな。
私は今のままのイブキさんも好きよ」
「あ、あ、ありがとう」
女の子から好きなんて言われたことがないボクはその一言でドギマギした。
「アンナさんはどう思う?」佐藤さんがそれまで黙っていた池田杏奈さんに振った。
お風呂で見かけた時は大きな胸が注意を引いたが、セーラー服越しでも大きなことがよく分かる。
「わ、私……。あの……。
……土曜日の約束覚えてますか?」
「土曜日? ごめんなさい。昨日以前のことは全然覚えていないんだ」
「……そうですか」
ボクと入れ替わる前のイブキさんはアンナさんと何か約束をしていたのだろうか?
アンナさんが消沈してうつむき加減になってしまった。小さな身体が更に小さく見える。
「あー、あれね。大丈夫。私が覚えているから。イブキさんを連れて行くわ」
ヨシアさんが代わりに答えた。
アンナさんは顔を上げ、嬉しそうに左手の甲を右手でチョップした。
「……ありがとう」
「えっと、土曜日にいったい何が?」
「ふふ、お楽しみ。他に予定を入れないでね」
ヨシアさんはボクが困った顔をするのが好きなようだ。
午後の授業もこなし、入れ替わり二日目の学校が終わった。