第7話①
文字数 588文字
祖母とシキが相次いで家から去った後、丈郎は五百倉菜月の継母、詩乃 から封書を受け取った。
丁寧な挨拶と、菜月が生前迷惑を掛けたという謝罪。丈郎を責める言葉は皆無だった。
脚本のような文章、ドラマで登場人物が読む手紙のような印象を受けた。菜月の自死に丈郎が責任を感じる必要はないというのが本心なら、ひどい親だとしか言い様がない。丈郎の罪悪感を和 らげようとしてくれているのだろうが、「娘を返して」となじるのも親の仕事じゃないのか、丈郎はそう思ってしまう。親が不在だった分、親という存在に期待を掛け過ぎているのかもしれない。
菜月が実の娘ではないからか。丈郎は邪推し、違うだろうと思い直す。自分が産んだ娘だったとしても、菜月には困惑し手を焼いただろう。丈郎より詩乃の方が、菜月と共にいた歳月は格段に長い。より責任を重く感じているのは詩乃かもしれず、だから丈郎を責めないのかもしれない。
やはり親に幻想を持っているのかな、丈郎は改めて思う。文面にされている訳でもない親の苦悩を、あったと想像してしまう。菜月が、親は私が家からいなくなって清々してるはずだと目の前で主張していたのを覚えているのに、未 だに彼女の言葉は何ひとつ信じられない。
淡々と続いた文面の終わりに、今月二十一日にそちらに行きます、もし都合がよろしければ会ってお話ししたい、と書かれていた。
二十一日は彼女の月命日だ。
丁寧な挨拶と、菜月が生前迷惑を掛けたという謝罪。丈郎を責める言葉は皆無だった。
脚本のような文章、ドラマで登場人物が読む手紙のような印象を受けた。菜月の自死に丈郎が責任を感じる必要はないというのが本心なら、ひどい親だとしか言い様がない。丈郎の罪悪感を
菜月が実の娘ではないからか。丈郎は邪推し、違うだろうと思い直す。自分が産んだ娘だったとしても、菜月には困惑し手を焼いただろう。丈郎より詩乃の方が、菜月と共にいた歳月は格段に長い。より責任を重く感じているのは詩乃かもしれず、だから丈郎を責めないのかもしれない。
やはり親に幻想を持っているのかな、丈郎は改めて思う。文面にされている訳でもない親の苦悩を、あったと想像してしまう。菜月が、親は私が家からいなくなって清々してるはずだと目の前で主張していたのを覚えているのに、
淡々と続いた文面の終わりに、今月二十一日にそちらに行きます、もし都合がよろしければ会ってお話ししたい、と書かれていた。
二十一日は彼女の月命日だ。
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